〜トラバントの想い〜



――トラキア王国のとある山岳地帯――

そこに、二人のドラゴンナイトの姿があった。

「久しぶりだな、こうして遠乗りに出るのも」

飛竜に跨ったトラキアの王、トラバントが娘のアルテナに言った。

「はい。父上とご一緒できて、私は幸せです。」

鞍に上品な装飾の施された槍―――地槍ゲイボルグを携えた飛竜に乗ったアルテナが答えた。

「しかし、父上がわざわざこんな所までお出になる事もないでしょうに。」

「国王たるもの、どんな細事でも知っておかねばならぬ。それに、国民を苦しめる山賊を放っておくわけにはいかんからな。」

戦士としての、非情な表情を浮かばせ、トラバントは眼下を見下ろした。

トラバントが見下ろした場所では、トラキアの将軍マーロックが山賊狩りのための部隊を指揮していた。

「アリオーンも誘ったのだがな。奴め、国を留守には出来ぬなどと言いおった。まったく可愛げの無い奴だ。」

アリオーンとはトラキアの王子―――すなわち、トラバントの息子である。

「兄上は父上のお力になるために頑張っておられるのです。」

アルテナがアリオーンを弁護する。

「まぁ、わしがアリオーンの歳の頃には王として全てを取り仕切っていたからな。あやつにも頑張ってもらわねば。」

「私も、父上のお力になれるよう、精一杯がんばります。」

トラバントは表情を綻ばせ、満足げな顔をした。

「この国を、ダインとノヴァの望んだような理想の国にする事が出来るならば、わしは地獄に堕ちる事もいとわぬ。

「・・・父上?」

アルテナには、トラバントの言葉の真意がわからなかった。

「風が出てきたな。ここはマーロックに任せ、トラキアに戻るとしよう。」

「はい。」


















それから半年―――







「良いのですか、父上。」

とある一室で、茶色い長髪の青年―――アリオーンは、トラバントに言った。

「構わぬ。」

トラバントは彼の言葉の意味を察していた。

「しかし、レンスターの兵士にはゲイボルグの事を知っている者もいる筈です。もし、アルテナがあの槍の事を知ったら・・・」

ゲイボルグは、ノヴァの直系―――レンスター王家の者にしか扱えない代物だ。

トラバントは17年前、イードの虐殺と呼ばれる、イード砂漠を行軍中のレンスター軍に対するトラキア王国の奇襲において、レンスターの王子キュアンとその妻、エスリンの首を取ることに成功した。

「奴を育てたのはわしだ。血筋など関係は無い。」

彼はその時、何を思ったのか、キュアンとエスリンの子―――アルテナを、ゲイボルグと一緒にトラキアへ持ち帰っていたのだ。

情が移ったのか、ゲイボルグの力を欲したのか。

それは、トラバント本人にしかわからない事だった。

「しかし、実の両親を殺されたとなれば、話は別でしょう。」

それはトラバントにもわかっていた。おそらく、アルテナが戻ってくれば、ゲイボルグと彼女の両親の事について問い詰められるだろう。

「構わぬ。」

トラバントは再び、そう短く言い放った。





――――バタンッ!!



力強く扉を開ける音が室内に響いた。

―――アルテナが帰還したのだ。

「父上、お尋ねしたい事があります。」

硬い表情でアルテナがトラバントに言った。

「なんだ」

「私の槍の事についてです。・・・・この槍がゲイボルグだというのは本当なのですか?」

―――やはり知ったか。

「父上、お答え下さい!」

「その通りだ」

「では・・・私の本当の両親を・・・」

「そうだ、私が殺した」

「・・・っ!トラバントッ!!よくも!!」

アルテナがゲイボルグを構え、トラバントに向かう。

しかしその直後、アルテナはアリオーンに取り押さえられてしまった。

「兄上・・・!」

「父上に刃向かうのであれば、たとえお前といえど容赦はしない。」

冷たい瞳で彼女を睨み付ける。

わかっていた。父上―――トラバントに刃向かえば、彼とも敵対しなければならない事を。

「死ね」

アリオーンがアルテナを刺す。

アルテナがその場に倒れこんだ。

「殺したのか・・・惜しい事を。」

「・・・・・・」

「まぁ、よい。」

トラバントはさも、アルテナの事など気にしてないといった口ぶりで答えた。

「わしは出撃の準備をする。城の守りは任せたぞ。」

「父上自ら出陣なさるので?」

「そうだ。それと、この槍をお前に託す。」

「これは・・・グングニルの槍ではありませんか!?」何故これを・・・」

「わしはもう疲れたのだよ。後の事はお前に任せる。わしが死んだなら、トラキアは好きにするが良い。解放軍に休戦を申し込んでも構わん」

「父上・・・!」

アリオーンの返答を待たずに部屋を出る。

「フッ、アリオーンめ・・・急所を外しおったか。わしの目はごまかせん」

部屋を出たトラバントは一人、そうつぶやいた。

アリオーンはアルテナを殺すと見せかけ、急所を外して気絶させただけだという事を、彼は気づいていた。

「・・・お前達になら、作れるかもしれん。わしの望んだ理想の国を」











「準備は出来たか」

「はっ、トラバント王。竜騎士団、いつでも出撃できます」

「すまぬな。このような負け戦にお前達を付き合わせるなど」

「いえ、我々は皆、トラバント王を信じているのです。我々は何があろうとも、王に付き従います」

「そうか・・・だが、少年兵は戦わせるな。彼らもトラキアの次の時代を担う大切な国民なのだからな」

「はっ、承知しております」

「ならば、良い。では出撃するぞ!」

「はっ!!」

トラキアの空に竜騎士団が舞う。

祖国の未来を次の世代に託した者達の、最後の戦場へ向けて。





アリオーン・・・アルテナ・・・わしが愛したこの国を・・・トラキアの未来は、お前達に託したぞ・・・

ダインとノヴァが互いに手を取り合っていたようにお前達も・・・














〜あとがき〜


え〜、FESS第二段です。
今回はトラバントを主役に書いてみました。
ぶっちゃけ、かなり美化してます
いいんです、ウチの中ではトラ様こんくらいカッコイイんです(何

あ、別にレンスター嫌いって訳じゃないですよ。むしろ好きです。
聖戦は嫌いなメインキャラで嫌いなキャラってのは殆どいないんですよ。大沢美月先生のFE読んだらレプトールも好きになりましたし。あの人の作品は、どのキャラも私欲だけってのはない(と思う)んで。

では長くなりましたが、ここらであとがきは終わりにします。次のShaまだ決まってないのでアップはいつになるかわからないです(コラ
でもそんなにかかる事はないと思いますんで、気長に待ってやって下さい〜。
ではでは〜




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