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でりばりー
タタンタンタン。
窓を打つ音に、カカシは顔を上げる。
「あーあ」
この分じゃ、荒れるな。
読んでいたイチャパラ新刊を閉じ、ガラス越し外の様子を
伺うカカシはため息をつく。
外で済ますつもりだった晩飯はパスか。
「携行食あったハズだし」
賞味期限はこの際、不問に処すのが得策だろう。
そう考えながら、カカシは指先で目頭を押さえる。
雨の降り出し。
こんな時が一番堪える。
左目に居座る、痛みとは違う重みが肩から心臓の辺りまでも
侵食する。
「いーかげんに慣れもするけどね」
カカシは唇の端を歪める。
とんでもない置き土産だよな。
左目を覆う手が少しだけ震える。
それを振り切りたくて、イチャパラに視線を戻せば、
耳が愛しい人の足音を拾う。
規則正しく真面目な足音があの人らしいと、カカシは微笑む。
いつもとピッチが違うのは、たぶん雨のせい。
そして、
その足音が途切れたと同時に、扉が鳴らされた。
任務明けのカカシを気遣ってのことだろう、控えめな音量。
どう返事をしたものか?
カカシは迷い、一瞬反応が遅れる。
その寸かな間に、イルカの気配は遠のいてしまう。
「奥ゆかしさもソコまでイクと意地悪ですよ」
カカシは玄関へと猛ダッシュすると、イルカの名を呼んだ。
「イルカせんせー、オレ居ますよ!」
呼び止められたイルカの両手には、大きな袋がいくつもぶら
下がっていた。
「……す、すみません。約束もなしに勝手におじゃまして」
首だけカカシの方に回して、申し訳なさそうに謝るイルカ。
彼の服が黒く濡れている。
「ったく、もぉ」
傘も差さずに、どうするんです。
風邪、ひくでしょう。
そう続けるはずのカカシのセリフは、更なるイルカの詫びる言葉
で遮られてしまう。
「あっ…、申し訳ありません」
途端にスタンスが上忍と中忍のソレに変化し、カカシとイルカ
の距離が公式なものに移行してしまう。
律儀で誠実なイルカの様子に、カカシは目を細める。
「違いますよ、イルカせんせ」
そうされるのが苦手と知っていて、耳元で囁くカカシ。
当然、ブレスのオプション付きである。
両手が塞がっているのも好都合。まずは下ごしらえから。
「コレ、晩飯でしょ?
助かりますよ、ちょっと疲れすぎてて……」
照れて頬を染めながらも、イルカの眼差しは労りの色全開で
ある。
少しだけのホントに、ウソのスパイス山盛り。
項までピンク色のイルカの肌は、今どうなっているのだろう。
不埒な思考を展開させているカカシの曖昧な眼差し。
互いの思惑は海のようにも、山のようにも違うけれど、
そこはそれ。
良い雰囲気が雨音のように、ふたりの間に注がれている。
「さぁ、イルカ先生、中に入りましょう」
まずは、濡れてしまった服を着替えて…、ねっ?
『その先は言わぬのが互いのため』は、
秘密のダイアローグ。
「一緒に料理しましょうか」
あぁ、それがいい。
「はい」
やわらかに問うカカシに、イルカは頷く。
「では、遠慮なくゴチソウになります」
ソレ持ちますよ。
いえいえ、とんでもない。
イチャイチャ、パラパラ。
カカシとイルカ、雨宵の遊戯。
一部局地的な雷と停電は誰たちのためか?
こうして夜は更けていくのでありました。
−ひとまずヲワリ− 夜のさぁびすへと続く?
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