夕刻になって訪ねてきた友雅に、何か欲しいものはないかと尋ねられ、泰明は返答に詰まった。

 自分の誕生日だからだろうとは察しがついたが、改めて聞かれても、これほど返答に困る問いはない。

「今日は神子殿たちが誕生日を祝ってくれたのだろう?私は出遅れたかな」

「そんなことはない」

 即答すると、友雅が楽しそうに笑った。

「それは良かった。…それで、欲しい物は見つかったかい?」

「…欲しい物、というのとは少し違う」

 厳密に言えば、今日一日望んでいたことは叶ってしまった。

 皆が押しかけ、祝ってくれた中に、友雅の姿はなかったから。

 逢いにきて欲しいと望んでいた。

 いっそ自分から逢いに行ってしまおうかとも考えたが、押し付けがましいような気がして、それは出来なかった。

 自分の誕生日すら忘れる(というより無頓着な)泰明とは違い、友雅がうっかり忘れるなどということはない。

 だから、友雅がこうして訪ねてきてくれただけで嬉しいのだ。

「物じゃなくても構わないよ。言ってごらん?望むこと全て叶えてあげるから」

 余裕の笑みで、見つめられる。

 望みは叶えられたはずなのに、また新しい欲が沸いて来る。

「…髪を、撫でて欲しい。いつものように」

「いいよ。お安いご用だ」

 友雅の指が頭に触れ、髪留めを解く。

 さらさらと流れ落ちてゆく髪の間を、長い友雅の指に梳いてもらうのが泰明は好きだ。

 髪の先に神経が通っているはずがないのに、友雅の指が通った箇所からジンジンと疼くように痺れていく。

 そしてそのうち、髪だけでは物足りなくなるのだ。

「友雅、」

 呼びかけただけで、友雅の指は頬に触れる。

 輪郭をなぞられ、手の平で包まれる。

 その行為が好きだと口にしたことはないのに、友雅は自分のして欲しいことを簡単に見つけ出すから不思議だ。

 今も僅かに唇を開いただけで、指がそこに触れる。

 愛おしむように軽くなぞり、今度は唇が重ねられた。

「…っ」

 感嘆の吐息は友雅に飲み込まれる。

 舌先が触れ合えば、体の芯に火が点いた。



 指で触れられれば、唇を。

 唇で辿られれば、舌を。



 もっと、もっとと湧き上がる欲求に終わりはない。



「きちんと言葉でねだってごらん、とは言わないでおこうか。

 今日くらいは意地悪しないというのも悪くないだろう?」



   焦らされることなく、着物の袷から友雅の指が入り込んできた。