●アッシュ(PC98・姫屋ソフト・ADV)
世にマルチエンドのゲームというのは数ありますが、私がかつてプレイした中で、主人公の行く末の多彩さという面で実に印象深かったもの、それがこの「アッシュ」です。
本作は一旗挙げようと町に出てきた名も無い主人公が、数々の選択やそれに伴って起きる状況の中で様々な結末を迎えるという、端的に言えばそんなゲームであり、基本はただひたすらに選択肢を選び続けてその結果を読み進めていくといった、タイプ的にはゲームブックを彷彿とさせる様な作品でした。
一つ一つの結末に至る物語はそれ程長くないものも多く、それこそ唐突に終わりを迎えポカンとするものもありましたが、全体を通して程よいテンポにさりげない毒気が塗されていることもあり、個人的にはこれもまたよし、といった感がありました。
選択による一発死や、どの選択肢を選んでもどうにもならないはまり場(渡っている途中のつり橋が崩壊し始めた時など)があることなども含め、それもまた味、といえましょうか。
そしてやはり本作の特筆すべき点は、およそ40にも及ぶ、なんとも多彩な結末でありましょう。
印象深いものだけをあげても「国王(但し亡命政権で国民数十名)」「邪教の司祭」「世界を裏から牛耳る麻薬王」「ゴブリンの族長」「龍騎士」といった凄いものから、「過去を懐かしむアル中」「生贄」「逃亡兵」「莫大な借金を背負わされた酒場の親父」といった悲惨なものまで、まさに多種多様。
それらの中には、このゲームでしかお目にかかった事の無い様なEDも数ありました。
…なお、物語の途中での墜死・斬死・餓死といった、これまた多彩な「野垂れ死に」はこれらの員数には入っておりませんので、厳密にこれらを加えれば、EDの数は更に増える事も付記しておきます。
「あらたな道」に進むべく、違う選択肢を求め彷徨うといったやりこみも良し、たまに思い出してお手軽に遊ぶのも良し、何も知らぬ友人にやらせて後からそれを眺めるのも一興…
思えばなかなか良い作品でありました。
暫定評価 … B+(お手軽だが、なかなか作り込まれた一品)
●エメラルドドラゴン(PC88・グローディア・RPG) ※以下の文章はすべてPC88版にのみ準拠
私は昔より、主人公の側以上に敵役・悪役といった存在に妙に惹かれる傾向があるのですが、そんな私にとって本作は、最も印象深い作品の一つと言って過言ではありません。
今でもふっと思い起こせば、すぐに数多くの猛者たちが頭に浮んで来るのですが、試みに何人か挙げてみますと…
戦場では部下達を盾にして逃げ回り、追い詰められれば上司の情報を売って命乞い。そんな根性と勇気は欠片も無いながら、実は腕っ節は無双のザーマ指揮官。
将軍としては極めて有能。そして性格の悪さと執念深さにおいては、更に他の追随を許さない。魔王軍唯一の人間ながら、登場するどの魔族達より余程魔族らしかった美形の宿敵オストラコン。
激烈な民族主義者で、民族の栄光を汚すと判断したものは例え王であろうと抹殺する。主観的には私心無き愛国者という、ホルス族きっての大魔導師ティリダテス。
そして何より、魔王ガルシア。
敵対するエルバード王の寵臣を手駒として飼い、王国を内部から混乱させる知略。
一介の人間に魔軍の指揮権をポンと預ける大度。
道端で自ら奇襲をかけてくる身の軽さ。
アヴェスタを巡る会話で見せた誇り高さと自信。
魔王殿最深部での決戦における、問答無用の強さ。
思い返しても、何とも見事な魔王ぶりでありました。
本作はRPGとして全体的に出来が良く、シナリオの展開や主人公側の人物達も実に魅力的であり、色々と語りたくなる事が多い名作です。
ですが、それでも私にとっては、やはり敵の魅力をこそまず語りたい、そんな作品と言えます。
それこそ、物語中では実に正統的なヒロインぶりなのに、こと戦闘時においては仲間の苦境など一顧だにせず、ただひたすら攻撃魔法の乱打に明け暮れるバーサーカー・タムリンの事など、本当に幾らでも書き綴りたい作品なのですが…
暫定評価 … A+(シナリオ・キャラ・システム、何れも一級品の名作)
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