◆ HARAKIRI(PC88・ゲームアーツ・SLG)

 「これ以上の恥には耐えられぬ。 うぬ”!」 

 

 

<はじめに>

 「スタインバーグなる、日本かぶれの米人によってデザインされた」。確か本作は、そんな触れ込みで世に出たものだったかと思います。
 結局のところ、その真偽の程は存じません。 しかし内容に関してはそれに相応しい、独特のシステムと異空間的な世界観を誇っておりました。

 ゲームの内容自体は、端的に言えばプレイヤーが源頼朝・織田信長・三船徳川・足利尊氏・S小杉・大老井伊といった、時代も領地も滅茶苦茶な(尤も、それ以前の人物もいますが)16人の大名の内の一人となり、「恥の概念」「一騎打ち」「忍者戦」「HARAKIRI」等、「いかにも」な要素が全体に飛び交う舞台で天下統一を目指し戦う… という、極めてオーソドックスな本作。
 しかしプレイ時の感覚はオーソドックスとは程遠く、何とも「凄い」としか言いようの無い、そんな異色極まる国盗りSLGでした。

 

<バックストーリー>

 SHOUGUN統治の下、平和を謳歌していた日本。

 ある日の事、SHOUGUN配下の大名ASANOは、主の命を受けて大事な茶器を運ぶべく町を歩いていた。 がその時、突如物陰から忍者が現れ… 驚いたASANOは思わず茶器を取り落とし、割ってしまったのである!

「茶器一つまともに運べぬMINOR大名め!」
 そして、その報告を受けたSHOUGUNは激怒し、満座の中でASANOを面罵。 かくしてその面目を失ったASANOはあまりの恥に耐え切れず、HARAKIRIしてしまう…  
 これは確かに一つの事件ではあった。 が、その余波は更に思わぬ事態をもたらす事になる。 


 それは事件から暫くたったある春の日のこと。
 密かに無き主の復讐を誓い、機会を窺っていたASANOの旧臣47人が、突如SHOUGUNの乗る駕籠を襲撃。 あろう事かその首を挙げてしまったのである!

 かくして突如統治者を失った日本は大混乱に陥る。 SHOUGUNの一の臣たる大老井伊は懸命に事態の収拾を図ったものの、遂にうたかたの平和は破れ、時代は数多の群雄が覇を競う乱世へと移ってしまう。

 再びこの天下に平和をもたらす者、それは果たして……?

 

<内容>

 基本は「軍備増強・他国侵略」という極めてオーソドックスな国盗り物ですが、内政・外交・謀略なども国土開発・同盟・内応工作・忍者を使っての撹乱戦等、一通りのものが揃っていました。
 以外と言うと失礼かもしれませんが、世界観の割に、システム自体は非常にきちんと作られていた感じです。
 以下、特徴的・印象的な事を述べてみますと…

兵力への制限      〜国力・人徳・兵科… 〜

 「各大名の持てる最大兵力=総国力」という大枠に加え、各武将の指揮出来る最大兵力(=人徳値で最大99)や一勢力の総武将数にも上限があるなど、国家の総合的な戦闘力を整備する上では能力・兵力・兵科(武将毎に固定)等のバランスへの考慮が必須となっており、なかなかに頭を捻る要素となっていました。

 ちなみに兵科を具体的に挙げると、旗本(大名のみの兵科)・足軽・侍・相撲レスラー・鉄砲・騎兵・忍者・浪人・農民・南蛮兵・南蛮鉄砲兵・元兵・元騎馬兵の計十三種で、それぞれ徴兵費用・戦闘力・特性・部隊間の相性等があり、結構奥深かった様な覚えがあります。

 

一騎打ち        〜猛突っ張りは戦を征す!〜

 一騎打ち、それはまさに「HARAKIRI」の戦争における「華」の一つです。 ただ「三国志」物にある様なものとは異なり、「防御側のみに実行の有無の選択権がある」「合戦前に双方の代表同士がぶつかり合う形式」という、より儀式的な要素が強いのが大きな特徴でした。 
 ただ… 儀式的な故か、その影響は「敗北側の総兵力三割減」「断った場合は一割減」(しかも、一番兵の減少幅が大きいのは鉄砲隊等高価な部隊)という、他のゲームに見られる一騎打ちとは比較にならぬほど大きなものがありました。 

 無論、これらは理不尽といえば実に理不尽なシステムでと言えるでしょう。 ですが、このある種狂った世界には妙に似つかわしい、そんな印象を強く受けるシステムでした。


 なおシステム面とは別に、「一騎打ちの情景描写」それ自体にも独特すぎるものがあったので、以下箇条書きにて述べてみますと…

.夕日をバックに、野原にて鎧兜に身を包んだ武者が二人、向かい合う。

.双方正座し、頭を地に付けるように深々とお辞儀。

.双方立ち上がり、互いに刀を構える。

.…何故か突如双方が力士化、画面下で激しい突っ張りあいの開始(なお、相手を画面外に吹っ飛ばした方の勝ち)。 


 …一度見ると、なんとも忘れ難いものがありました。

 

「HARAKIRI」と「恥」     〜これぞ正しき日の本の文化!〜  

 HARAKIRI… それはタイトルにもある様に、このゲームを語る上で欠かせないものと言えます(確かOPも桜が舞い散る中でのHARAKIRI… というのがメインだった様な記憶が)。
 そして、ゲーム中でのHARAKIRIには、大きく分けて二つのタイプがあり、それは、

 ・プレイヤーの意思によるもの。  即ち滅ぼした敵国の降将に命じるもの、人員整理等の為に自国の将に命じるものなど。

 ・イベントとしてのもの。  即ち 「恥」という各将が持つ数値が一定値(80以上だと危険水域)を超えた際、ランダムで勝手に発生するもの。

 の2種でした。

 特に後者は、文字通り「勝手に」発生する為、有能で主力部隊を率いる将だった場合などは、一気にパワーバランスが崩れるほどの激震ともなり得る、実に危険なものであり(無論、そうではなくとも精神的な痛手は大きい)、自軍の将の「恥」を如何に低く保ち、また他国の将に如何にかかせるかという、このゲームならではの戦術が必要だったものです。
 なにせ忍者を使っての謀略に「敵将に恥をかかせる」というコマンドがあったくらいですので…


 なお、この「HARAKIRI」の描写にも忘れ得ぬものがあったので、以下箇条書きにて述べてみますと…

 .白無垢を着た武士が敷物(まあ、花見で場所取りに敷くぐらいの大きさがありますが)に正座、背後には介錯人が立つ。

 .「これ以上の恥には耐えられぬ!」という言葉を発し(自分が命じた場合は無し)、「うぬ”」という掛け声と共に開始(なおこの時、頭上に「BANZAI!」の文字が浮かぶ)。

 3.画面が一瞬真っ暗になり、中央に「介錯!」という文字が煌く。

 4.介錯人が刀を振り下ろし… 当該人の首が落ちる(この辺りはシルエット処理)。


 …最初に見た時のインパクトは、凄かったです。

 

帝という存在       〜「下界」を見守る「現人神」〜   

 この世界の日本には「帝」という現人神(としか思えない力を持つ)がおり、たまに起こるイベントで、その力を遺憾なく示してくれました。
 それは私が知る限り二つあり、

 ○花見
  
  帝がランダムで一人の大名に開催を命じるもので、命に応じると莫大な金を消費する羽目になるが、その年は絶対に他国の侵略を受けなくなる(こちらからの侵略は無論可)。
  なお、断る(又は費用が払えない場合)と家臣達が不甲斐なく思い、全員の「恥」がもれなく上昇する目に遭わせられるという… 大抵は不幸な思いをさせられるというイベントでもありました。


 ○献金

  帝が全国の大名に献金を呼びかけるもので、最も多額の金を献じたものの願いを一つ叶えてくれる。
  なお、願える事は三つあり、
  「官位」を望むと大名の魅力が上昇、というのは王道なものの、「神風」を望むと任意の国の兵力を減少してもらえ、「地震」を望むと同じく任意の国の城防御度をがたがたにしてもらえるというのが、何とも凄すぎました。    

 

新勢力乱入      〜時空を超えて湧き出す新たなる強敵達〜

 地震・疫病・津波といった災害は、自国に起こるとげんなりしますが、他国に起こると喜ばしいものです。
 しかしこのゲームにおける最大の災害、即ち「新勢力の勃興」は、下手をするとこちらにも火の粉が飛んでくる、迷惑極まりないものでした。

 私が体験したのは「一向宗徒の挙兵」のみですが、突如手薄な後方で数百もの敵が現れ、挙句の果てには四方を侵略しまくるとなると… それがどれほど腹立たしくもうっとおしいかは、容易に想像して頂けるのではないかと思います。
 聞く所によれば「一向宗」は勃興する三勢力の中では一番弱いそうで、更に真打として「元軍」と「ペリー軍」が控えているとか…

 

金の力      〜天下を制すは山吹色の菓子なり〜

 大方のSLGにおいて金の力は絶大ですが、このゲームは特にその傾向が強いものの一つと言えたでしょう。
 金さえあれば、1ターンで幾らでも徴兵可能。
 金さえあれば、どんな忠臣でも最終的に転ばせられる(「寝返り工作」は、仮に失敗しても積んだ金に応じた「忠義」が低下していく為)。
 金さえあれば、「奇跡」も買える。

 無論序盤〜中盤は常に金策に四苦八苦で、「贅沢行為」はそうそうは出来ませんが…  天下の半ばを制した辺りからはもうやり放題、その気になれば碌に闘わないで済む極悪なプレイすら可能でした。

 

 

<総評>

 「設定などはぶっ飛んでいるが、システムは意外にしっかりしていて遊べる」。総じてそんな印象のゲームだったかと思います。
 ここに挙げた以外でもコマンド実行時のグラフィック(例えば「貢物」のコマンドの絵は金の鯱を献じている図だとか)や設定変更(BGMも大河風・中華風等数種類あり)など、随所ににやりとする要素は満載でしたので、機会があれば(今となってはこれが一番難しそうですが)話のタネにやってみて損は無いかと思います。
 まあ、かくいう私もまたやってみたいものなのですが…

 

 総合評価 … B+(色々な意味で弾けてはいるが、なかなかの逸品) 

 

<参考資料>    

 「開始初頭の各勢力    ※参照 : 「戦国SLG大全」(辰巳出版) 

 

 …ま、「百聞一見」と言う事で。 文字と数字のみではありますが、HARAKIRIの壮絶な世界を多少なりとも感じて頂けるのではと…

 

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