ジョスリン戦記(5)

 

<最終章 〜 三ヶ月後 ロンディウム〜>

 戦いは終わり、アヴェール姫も塔から解放し、ロイヤルブラッドも再びその輝きを取り戻した。これからなすべき事は山積みだが、とりあえずは一段落である。
 そして、今日この王都ロンディウムでは、わしの即位式と統一祝賀会が催される事になっている。

「やれやれ、59歳の新王か…」
 わしはふぅ、とため息をつく。元々我ながら王という柄ではないし、正直この歳になって新王などと言っても、誇らしいというより気恥ずかしいという気持ちの方が強い。
 わしとしてはフュノーを即位させ、自分はその後見で良かろうと思っていたのだが… あやつは頑としてわしの即位を主張して譲らなかったのだ。
「まったく、あの頑固者めが…」
 しかしメルティナなどに言わせると、「フュノーはお父様そっくりだから」と言う事になるらしいのだが。
 何にせよ、荒れ果てた各地の再建、仕事を失う傭兵達やモンスターへの対策など、やらねばならぬ、それも一つ間違えれば再び戦乱を招きかねない難事ばかりが山積みである。 それに私的な事ではあるが、世話になったコーラル家の再興も果たさねばならない。

 ふと、わしはバルコニーから外を見回してみる。 見渡す限り、いや見渡せぬ所も含め、今やこのイシュメリア全てが我がトルディン家の威が及ぶ地であり、十字の旗が翻っている筈である。
 時々わしはふと、「イシュメリアを統一した英雄ジョスリン」とやらは同名の別人で、わし自身は何も変わっていないのではないか、とそんな思いにとらわれる事もある。
「やれやれ、まったく我ながらさっきから愚痴と逃避ばかりではないか。 これでは先がおもいやられるの…」
 わしは伸びを一つすると、広間へ向けて歩き出す。 まあわし一人では無理な事ばかりでも、皆の力を集めれば何とかなろう。 それに今日ぐらいは悩みを忘れ楽しんでも良かろうて…


 …かくして16年に渡り続いたこの戦乱は、最後に勃興した最弱の家・トルディン家当主ジョスリンによって、その終止符を打たれた。  彼が統一を果たすとは、開戦当時には他の誰も、いやおそらくは本人すら夢想だにしなかった事であったろう。
 統一後のジョスリン王、そしてフュノー王と続くトルディン王家の歩みは、また別の物語である…

 

<完>

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