ベッドに、クライスを降ろす。
そのまま、寝かせようとしたけれど、首の詰まったシャツが苦しそうな気がした。
・・・寝間着の方が良いよね・・・でも・・・。
此処には、女物の服しかない。
・・・あ・・・そうか・・・コイツは、今、女性の身体なんだから、女物の服を着れるんだ。
あたしは、新しい寝間着を、最近シアから貰った事を思い出して、探し出した。
その服を持って、ベッドに近付いた。
起こして自分で着替えてもらおうか・・・。
軽く、クライスの身体を揺すってみる。
起きそうになかった・・・。
(着替えさせてあげよう・・・)
あたしは、クライスの服を脱がせ始めた。
まずは、シャツを脱がす。
すると、ある物に気が付いた。
クライスは、コメートの指輪を紐に通して、首に掛けていた。
これって・・・アウラさんが言っていた指輪だよね。
『指輪は、3個在るの。
3人の子供達に1個ずつね。
2個は、息子達の妻の物なの』
そうか・・・これは・・・クライスの奥さんになる人の指輪なんだ。
お母さんの形見だから、今の所は、自分で身に付けているのか・・・。
あたしは、クライスの首から紐を外した。
寝る時は、邪魔だよね。
枕元の台の上に、指輪を置く。
キラッと光った気がした。
この指輪・・・何時かあたしにくれるのかな・・・。
まあ・・・まずは、元に戻らないといけないけど・・・。
下のズボンも脱がした。
・・・もしかしてコレって・・・犯罪行為かしら・・・。
う〜ん・・・まあ・・・非常事態って事で、許してもらおう・・・。
寝間着を着せて、布団をきちんと掛けてあげる。
これで・・・よしっと・・・。
そうそう・・・高熱の時は・・・。
あたしは、氷水を入れた洗面器と、タオルを持ってきた。
濡らしたタオルを、クライスの額に乗せてあげた。
「う〜ん・・・マルローネさん・・・」
「あっ・・・気が付いた?」
あたしは、クライスの顔を覗き込んだ。
「この服は?」
「・・・言いたい事・・・在るだろうけど・・・あの服じゃ・・・寝にくいでしょう?
此処には、女物しか無いのよ・・・」
「・・・仕方ないですね・・・」
意外と、物分かりが良いなぁ・・・良かった・・・。
「あの〜・・・。お医者さん・・・呼んで来た方が良いと思うんだけど・・・どう?」
クライスの身体の熱は、高いみたいだし・・・専門家に診てもらった方が良いと思ったから、
聞いてみた。
「・・・じゃあ・・・父を呼んで来てくれませんか?」
「ラディさんを?」
ラディさんとは、アウラさんの結婚式で初めて会った、キュール姉弟のお父さん。
本名は、ラディウス・キュールさん。
外見は、フェーザさんに良く似ているけど、雰囲気は、チョット違う。
カラッとした雰囲気を持つ長男に対し、ゆったりとした雰囲気を持つ父親。
まあ・・・年の所為も有るだろうけど・・・。
「・・・確かめたい事が有るのです」
「判った」
あたしは、立ち上がった。
「あの・・・その格好で、行くおつもりですか?」
「あっ・・・」
あたしは、自分の格好に気が付いた。
クライス曰く、踊り子の様な服・・・。
・・・これは・・・外に出れないな・・・。
今のあたしに、合う服なんて此処には無い。
あたしは、周囲を見渡して、ある物に気が付いて言った。
「じゃあ・・・アンタの服・・・貸してくれる?
「・・・私の服・・・ですか・・・貴方さえ良ければ・・・どうぞ・・・」
クライスは、少々投げやり気味に言った
「じゃあ・・・借りていくね・・・」
あたしは、さっき脱がしたクライスの服を持って、部屋を出て行った。
あたしは、下の工房に降りてから、服を着替えた。
クライスの服は、今のあたしにピッタリだった。
髪飾りとかも、そのままだったので、全部外して、結んでいた髪を解く。
首の後ろで、1つに括って、背中に垂らす。
これで、一見、男性に見えるかな?
あたしは、工房の外に出た。
すると・・・シアが立っていた。
シアは、暫らく、あたしを見て・・・
「・・・マリー・・・よね?」
と、聞いてきた。
・・・流石に長い付き合いの親友・・・。
あたしは、今の状況を説明して、留守番を頼んだ。
病人を1人、家に残すのは心配だから・・・。
シアは、快く引き受けてくれた。
あたしは、街外れのキュール家を目指して、歩き出した。
中書き
第4話です。
お着替えしてもらいました。