GESCHLECHT〜ゲシュレヒト〜

 

その4

 

   ベッドに、クライスを降ろす。
   そのまま、寝かせようとしたけれど、首の詰まったシャツが苦しそうな気がした。
   ・・・寝間着の方が良いよね・・・でも・・・。
   此処には、女物の服しかない。
   ・・・あ・・・そうか・・・コイツは、今、女性の身体なんだから、女物の服を着れるんだ。


   あたしは、新しい寝間着を、最近シアから貰った事を思い出して、探し出した。
   その服を持って、ベッドに近付いた。


   起こして自分で着替えてもらおうか・・・。
   軽く、クライスの身体を揺すってみる。
   起きそうになかった・・・。


   (着替えさせてあげよう・・・)
   あたしは、クライスの服を脱がせ始めた。
   まずは、シャツを脱がす。
   すると、ある物に気が付いた。
   クライスは、コメートの指輪を紐に通して、首に掛けていた。
   これって・・・アウラさんが言っていた指輪だよね。


   『指輪は、3個在るの。
    3人の子供達に1個ずつね。
    2個は、息子達の妻の物なの』


   そうか・・・これは・・・クライスの奥さんになる人の指輪なんだ。
   お母さんの形見だから、今の所は、自分で身に付けているのか・・・。


   あたしは、クライスの首から紐を外した。
   寝る時は、邪魔だよね。
   枕元の台の上に、指輪を置く。
   キラッと光った気がした。
   この指輪・・・何時かあたしにくれるのかな・・・。
   まあ・・・まずは、元に戻らないといけないけど・・・。


   下のズボンも脱がした。
   ・・・もしかしてコレって・・・犯罪行為かしら・・・。
   う〜ん・・・まあ・・・非常事態って事で、許してもらおう・・・。


   寝間着を着せて、布団をきちんと掛けてあげる。


   これで・・・よしっと・・・。
   そうそう・・・高熱の時は・・・。
   あたしは、氷水を入れた洗面器と、タオルを持ってきた。
   濡らしたタオルを、クライスの額に乗せてあげた。


   「う〜ん・・・マルローネさん・・・」
   「あっ・・・気が付いた?」
   あたしは、クライスの顔を覗き込んだ。
   「この服は?」
   「・・・言いたい事・・・在るだろうけど・・・あの服じゃ・・・寝にくいでしょう?
    此処には、女物しか無いのよ・・・」
   「・・・仕方ないですね・・・」
   意外と、物分かりが良いなぁ・・・良かった・・・。


   「あの〜・・・。お医者さん・・・呼んで来た方が良いと思うんだけど・・・どう?」
   クライスの身体の熱は、高いみたいだし・・・専門家に診てもらった方が良いと思ったから、
   聞いてみた。
   「・・・じゃあ・・・父を呼んで来てくれませんか?」
   「ラディさんを?」


   ラディさんとは、アウラさんの結婚式で初めて会った、キュール姉弟のお父さん。
   本名は、ラディウス・キュールさん。
   外見は、フェーザさんに良く似ているけど、雰囲気は、チョット違う。
   カラッとした雰囲気を持つ長男に対し、ゆったりとした雰囲気を持つ父親。
   まあ・・・年の所為も有るだろうけど・・・。


   「・・・確かめたい事が有るのです」
   「判った」
   あたしは、立ち上がった。
   「あの・・・その格好で、行くおつもりですか?」
   「あっ・・・」
   あたしは、自分の格好に気が付いた。
   クライス曰く、踊り子の様な服・・・。
   ・・・これは・・・外に出れないな・・・。
   今のあたしに、合う服なんて此処には無い。


   あたしは、周囲を見渡して、ある物に気が付いて言った。
   「じゃあ・・・アンタの服・・・貸してくれる?


   「・・・私の服・・・ですか・・・貴方さえ良ければ・・・どうぞ・・・」
   クライスは、少々投げやり気味に言った
   「じゃあ・・・借りていくね・・・」
   あたしは、さっき脱がしたクライスの服を持って、部屋を出て行った。


   あたしは、下の工房に降りてから、服を着替えた。
   クライスの服は、今のあたしにピッタリだった。


   髪飾りとかも、そのままだったので、全部外して、結んでいた髪を解く。
   首の後ろで、1つに括って、背中に垂らす。
   これで、一見、男性に見えるかな?


   あたしは、工房の外に出た。
   すると・・・シアが立っていた。


   シアは、暫らく、あたしを見て・・・
   「・・・マリー・・・よね?」
   と、聞いてきた。
   ・・・流石に長い付き合いの親友・・・。


   あたしは、今の状況を説明して、留守番を頼んだ。
   病人を1人、家に残すのは心配だから・・・。
   シアは、快く引き受けてくれた。
   あたしは、街外れのキュール家を目指して、歩き出した。

   

 

つづく


  中書き

 

       第4話です。
       お着替えしてもらいました。

 

 

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