キュール家に着いたあたしは、玄関の扉の前で深呼吸した。
まずは・・・今の状況を説明して・・・それ以前に・・・今の姿を見てあたしだって、判ってくれ
るのかな・・・。
思い切って、扉をノックする。
「・・・は〜い・・・どなたですか?」
中から出て来たのは、フェーザさんだった。
「ああ・・・診察でしょうか?」
・・・やっぱり判らない・・・よね・・・。
「・・・?あのう・・・」
「・・・マリーです・・・」
「へっ?・・・マリー?・・・えっ・・・え〜〜〜!」
フェーザさんは、あたしの顔をじっくりと見て、何とか判ってくれたみたいだけど、目を丸くし
て、素っ頓狂な声を出した。
「・・・どうして・・・何があったんだよ?」
「・・・そりゃあ・・・災難だったな・・・。
で・・・クライスも巻き込まれたって訳か・・・」
「はい・・・その上・・・アイツは、熱を出しちゃって・・・」
あたしが、今日の出来事を説明すると、フェーザさんは、素直に同情してくれた。
・・・これが、アイツとこの人の決定的な違いよね。
「それで、お医者さんに診てもらおうと思って、本人にお伺いを立てたら、ラディさんを呼ん
で来て欲しいって言ったので・・・」
「判った・・・父さんは、中に居るから呼んでくる」
そう言って、中からラディさんを呼んで来てくれた。
あたしの姿を見て、ラディさんは、ちょっと驚いた顔をしていたけど、何も言わずに、往診の
準備を始めてくれた。
「じゃあ・・・行くか・・・。
マリー・・・君は、馬に乗れるかね?」
「馬・・・ですか?
故郷で、乗り方を教えてもらいましたけど、ここ10年近く乗った事が・・・」
「1人で乗れるかな?」
えっ・・・あたしに、馬に乗れって言うのかな・・・
「あの・・・馬で行くんですか?」
「街の中心までは遠いからな・・・。
フェーザ・・・馬を2頭出してきて・・・」
「判った・・・」
フェーザさんは、外に出て行った。
「で・・・どうする・・・乗れるのかな?」
「・・・頑張ってみます・・・」
10年以上乗っていないけど・・・
やっぱり、馬に乗ったら、工房まで速かった。
10年振りに馬に乗ったけど、おとなしい馬だったみたいで乗り易かった。
表に、馬を繋いで、ラディさんと2人で工房に入った。
「あの・・・マリー・・・2階の様子は見ていないのだけど・・・」
出迎えてくれたシアが、申し訳なさそうに言った。
「いいよ・・・。
1階に居てくれただけで良かったのだから・・・」
あたしは、2階にラディさんを案内した。
つづく
中書き
第5話です。
キュール家の男性陣2人に、登場して頂きました。