エルテスタ ゾーン

 

その1

 

    「ねえ、マリー?
     今から、少し時間あるかしら?」
    シアがあたしの工房を訪ねてきたのは、11月の中頃のある日だった。
    「そうねぇ・・・今日は、チョット時間に余裕がある・・・かな?」
    そんなに急ぎの依頼は受けていなかったから、あたしはこう答えた。
    「じゃあ・・・今からキュール家に行くのだけど、一緒に行かない?」
    「・・・キュール家って・・・アウラさん達の家だよね?」
    「そう。アウラさん結婚するでしょう?
     私の家からのお祝いを届けに行くの。
     どうする?」
    あたしは、しばらく考えて答えた。
    「1度アイツの実家って見てみたかったんだ・・・一緒に行く」


    キュール家は、街の外れに在った。
    家には、アウラさんだけが居た。
    アウラさん達のお父さんは、仕事で出掛けていて留守だった。
    ・・・アイツのお父さんって見てみたかったんだけど・・・残念。


    「あれ・・・アウラさん。
     その指輪・・・コメート石ですよね?」
    あたしは、ティーカップを持っているアウラさんの右手の薬指に指輪を見つけて、
    聞いてみた。
    「そうよ」
    「もしかして・・・婚約指輪ですか?」
    「ふふ・・・。残念だけど違うわ」
    アウラさんは、ニッコリ笑って言った。
    「母から貰った物なのよ」
    「お母様から?」
    「そう・・・20年前に亡くなったけど・・・」


    アウラさんとクライスのお母さんは、既にこの世に居ない。
    姉弟のお父さんは、再婚せずに子供達を育てた。


    その指輪を、あたしは何処かで見たような気がした。
    かなり最近・・・


    「あっ!思い出した!」
    「どうしたの?マリー・・・」
    いきなり叫んで椅子から立ち上がったあたしに、シアとアウラさんは、びっくりしていた。
    「その指輪・・・ルシェッタさんがしている指輪にソックリ・・・」


    ルシェッタさんは、最近知り合った錬金術師の女性。
    彼女の左手の薬指には、何時もコメートの指輪がはめられていた。
    多分、婚約指輪だと思う・・・


    アウラさんは、自分の指輪を見ると、微笑んだ。
    「ソックリじゃなくて、全く同じデザインの指輪よ。
     だって・・・」


    玄関のドアが開く音がしたのは、その時だった。


    「ただいま〜!」
    聞こえてきたのは、若い男性の声。


    足音が近付いてきて、バタンと部屋のドアが開けられた。
    そこにに立っていたのは・・・


    「フェーザさん!」
    「あれ?・・・マリー?」
    ロブソン村で会ったフェーザさんだった。


    「どうして、マリーが俺の家に居るの?」
    「はあ?・・・ここ・・・キュール家だよね?」
    あたしの頭は混乱していた。
    「ああ・・・ここはキュール家で・・・俺、ここの家の息子なんだけど・・・」
    「え〜!」
    あたしは、大声で叫んでしまった。


    あたしは、アウラさんとフェーザさんを見比べてみた。
    2人とも、こげ茶色の髪で緑色の瞳。
    似ていると言えば似ている。
    姉弟と言われて、納得も出来る。
    じゃあ・・・
    あまりにも意外な事実に、あたしはめまいがしてきた。

つづく

           


中書き

      マリーとフェーザが再会する話です。

      まずは・・・スイマセン!
      (謝るしかない・・・)
      とんでもない設定です。
      2人を繋ぐ運命の糸って、こんな糸でした。

      続きでは、4人でお茶会?

 

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