「・・・兄貴・・・その人・・・誰?」
夜の10時前に、家に帰って来た兄貴は、若い男性を連れていた。
その男性は、兄貴に肩を借りた状態で、すっかり寝てしまっている。
あたしの名前は、マルローネ。
親しい間柄の人には、マリーって呼ばれている。
現在、高校3年生。
で、2歳年上の兄貴は、大学2回生。
名前は、ビンセント。
愛称は、ビリー。
「・・・今日、飲み会で、一緒だった奴・・・。
あまり酒に強くないのに、飲まされて寝ちまいやがったんだよ・・・。
コイツの家の場所、知らないから、送り届け様が無いんだよ・・・」
困った様子で、兄貴は呟く。
「・・・まさか・・・泊めるなんて・・・言わないわよね?」
(見ず知らずの男性を、家に泊めるなんて・・・真っ平よ・・・。
今晩は、両親が家に居ないんだから・・・)
あたしは、兄貴をジト〜と睨んだ。
「・・・大丈夫・・・コイツの住所は判るんだよ。
卒業者名簿が在るから。
コイツとは、高校も一緒だったんだよ」
「ああ・・・それで、家に帰って来たのね」
「そういう事・・・。
居間には、入れて良いだろ?」
「・・・仕方ないわね・・・」
あたしは、居間に通じるドアを開けて、兄貴達を入れてあげた。
「え〜と・・・あった、あった。
・・・そんなに遠くないな・・・」
兄貴は、名簿で彼の住所を調べて、その住所の位置を地図で確認していた。
あたしは、ぼんやりと、ソファで横になっている男性の様子を見ていた。
結構、整った顔の人みたい・・・。
眠っているから良く判らないけど・・・。
突然、テーブルの上の携帯電話が鳴った。
あたしは、咄嗟にその電話に出てしまった。
・・・だって・・・あたしの携帯電話の着メロと一緒だったんだもの・・・。
「もしもし・・・」
「・・・貴女・・・誰ですか?」
電話の相手は、若い男性みたいだった。
「・・・ゴメンナサイ・・・間違って、出ちゃったんです・・・」
電話の相手は、暫らく無言だった。
「・・・では・・・その電話の持ち主は、近くに居ますか?」
「え〜と・・・」
この電話って・・・このソファで寝ている男性の電話よねぇ・・・。
「・・・居るんですけど・・・電話には・・・出れそうにないですね・・・」
「どうしてですか?」
「眠っているんです・・・」
あたしが、そう言った途端、電話の相手が息を飲む気配を感じた。
「・・・貴女・・・彼と何をしたんですか?」
「えっ?・・・何って・・・」
・・・何って・・・何?
「・・・どうも・・・お邪魔しました・・・」
相手の男性は、そう言って、電話を切ってしまった。
「マリー・・・相手は・・・女性・・・とか?」
一部始終を見ていた兄貴が、あたしに聞いてきた。
「ううん・・・男の人・・・」
「そう・・・じゃあ・・・問題ないか・・・」
「問題ないって・・・どんな問題?」
話が読めないあたしは、兄貴に聞き返した。
「いや・・・男の携帯電話に、女が出たら・・・しかも、夜中じゃあ・・・誤解されるんじゃ
ないか?」
「えっ・・・ああ・・・アレ・・・ね・・・」
あたしは、やっと、どう言う事か判った。
「・・・多分・・・誤解された・・・かも・・・」
「まあ・・・相手がコイツの彼女じゃ無いのなら、大丈夫だよ」
兄貴が、明るく言った時、ソファに寝ていた男性が、起き上がってきた。
「あれ?・・・ココ・・・何処?」
彼は、辺りをキョロキョロと見渡していた。
「俺の家だよ、フェーザ」
「ああ・・・ビリーの家か・・・。
じゃあ・・・この娘(こ)は、お前の妹さん?」
彼〜フェーザさんは、あたしを見て、ニッコリ笑った。
・・・この人は、思った以上に美形だった。
優しそうな緑色の瞳と、焦げ茶色の髪をした美青年・・・。
「ああ・・・妹のマリーだよ。
で・・・もう大丈夫か?」
兄貴が、フェーザさんの顔を覗き込む。
「うん・・・多分・・・ね・・・」
フェーザさんは、そう言ったけど、顔が真っ赤で、まだ酔いが残っていそうだった。
「じゃあ・・・ココの近くの駅までは・・・一緒に行こうか?」
「そうだね・・・道・・・判らないし・・・」
「マリー・・・コイツを駅まで送って来るから・・・」
兄貴と、フェーザさんは、立ち上がり、玄関に歩いて行った。
あたしは、玄関で2人を見送った。
後日、この夜の出来事によって、あたしは散々な目に遭う事になる。
けれど、この時のあたしには、そんな事は想像も出来なかった。
中書き
パラレルで、学園モノです。
本当は、18禁を書きたかった筈が・・・多分健全になりそう・・・。