どの位・・・時間が経ったのだろう・・・。
多分・・・ホンの少しの時間だと思うけど・・・あたしにとっては、とても長く感じた。
すぐに伸ばされてくると思った手は、いつまで経ってもあたしに触れてこなかった。
「・・・どうして・・・他人の携帯電話に、出たのですか?」
物静かな声が、聞こえた。
ゆっくりと目を開けると、穏やかな顔をしたあの男の子が居た。
あたしの顔のすぐ側の壁に付かれていた、彼の両手も離れていた。
「・・・だから・・・あたしの携帯の着メロと同じだったのよ・・・」
「本当・・・ですか?」
優しい口調で聞き返した彼の問いに対して、あたしは、ゆっくりと頷いた。
「では・・・あの時・・・何故・・・兄は・・・貴女のすぐ近くに居たのですか?」
「えっ?・・・兄?・・・アンタ・・・フェーザさんの弟なの?」
あたしは、彼の顔をじ〜っと見た。
似てない・・・ううん・・・髪の色と瞳の色が違うから、そう感じるのかな・・・。
フェーザさんは、焦げ茶色の髪に、緑色の瞳の男性だった。
目の前に立っている男の子は、青銀色の髪に、青紫色の瞳の持ち主。
「・・・似てないと言いたいのでしょうが・・・血の繋がった兄弟ですよ・・・」
「あはは・・・そう・・・ね・・・声は・・・似てる・・・かな?・・・」
「・・・」
しどろもどろに、言葉を繋ぐあたしを、彼は、少々睨み気味に見ていた。
・・・せっかく、穏やかな雰囲気になっていたのに・・・。
「え〜と・・・ね。
あたしの兄貴と、アンタの兄さん〜フェーザさんが、顔見知りらしいのよ。
高校も一緒だって言ってたよ」
「では・・・貴女のお兄さんも、この学校の出身なのですか?」
「うん・・・。
2人が、どの程度親しいのかは・・・判らないんだけど・・・。
あの日は、飲み会で一緒だったらしいわよ。
で、酔いつぶれちゃったフェーザさんを、兄貴が、あたし達の家に連れて来て・・・」
あたしは、あの日の事を、全部話した。
・・・彼も、最初から、穏やかに聞いてくれたら良いのに・・・。
まあ・・・誤解しても仕方が無い発言をしたあたしも・・・悪いんだけどさ・・・。
「だから、あたしとフェーザさんとの間には、何も無かったの。
信じてくれる?」
あたしは、目の前の彼を見た。
彼は、あたしの全身を上から下までじ〜っと見ていた。
その、視線がちょっと恥ずかしくて、あたしは、下を向いた。
「・・・少なくとも・・・貴女が、男性の扱いに慣れていない事は、判りました・・・。
外見に似合わず・・・」
「・・・外見・・・ね・・・」
あたしは、溜め息混じりに呟いた。
あたしは、自分の外見が、少々遊び人風に見えるのは、良く判っていた。
でも、実際のあたしは、男の子と付き合った事も無い。
・・・友達以上に・・・為れなかった・・・。
あたしの、男っぽい性格に原因があるのかもしれない・・・それと・・・。
「何か・・・証明できるものは、無いですか?
貴女のお兄さんと、僕の兄が、同級生だという証明が・・・」
彼の穏やかな声で、我に返ったあたしは、暫らく考え込んだ。
・・・2人が一緒に映っている写真とか在れば、証明になるんだけど・・・。
写真?・・・アルバム・・・そうだ!
「・・・アルバム・・・卒業アルバムよ・・・。
あたしの兄貴とアンタのお兄さんが、同じ年の卒業アルバムに載っていたら、同級生っ
て証明になるじゃない」
「・・・そうですね。
では・・・行きましょうか?」
そう言って、彼は、あたしの手を掴んで、歩き出した。
「どこ・・・行くのよ?」
彼に、引き摺られながら、あたしは、尋ねた。
「職員室です。
2年前の卒業アルバムを見せてもらうのです・・・」
こうして、あたし達は、職員室に向かった。
つづく
中書き
誤解は、解けたようです。
でも、まだ、話は続きます。