私は、ずっと彼が好きだった。
チョット口が悪いけど、お人好しで、明るい性格の彼が・・・。
でも、彼の外見に熱を上げている女の子が少なくない事、彼の男らしい性格を見込んで、
娘の伴侶にと望む親も幾つか在る事を、私は知っていた。
名家と言って良い一族からの結婚話も在った筈・・・。
私は、普通の農家の娘に過ぎない。
彼は、名家の娘を、あるいは美女を妻に迎える事だって出来る。
彼は・・・どんな選択をするのかな・・・。
「なあ・・・アニー?」
「えっ・・・何?」
ぼんやりとしている間に、彼の荷造りは終わったみたい。
「・・・何か・・・欲しい物は・・・無い?」
「何かって・・・ザールブルグで、お土産でも買ってきてくれるの?」
「・・・コメートの指輪なんて・・・どう?」
彼は、悪戯っぽい笑顔で言った。
・・・冗談?・・・それとも・・・本気?・・・それとも・・・コメートの指輪が、どんな時に使われる
のか知らないの?
「ビリー・・・貴方・・・コメートの指輪を女性にあげるのって、どういう事か判っているの?」
「首都では、結婚を申し込む時に、贈るのが流行っているらしいな」
「・・・知ってるのね・・・。
冗談・・・キツイわよ・・・」
私は、くるっと振り向いて彼の前から立ち去ろうとした。
でも、背後から彼の言葉が聞こえた。
「俺・・・本気で言ったんだけど・・・」
・・・本気?・・・じゃあ・・・私を・・・。
頭の中で彼の言葉がグルグル回っていた。
私の想いに、気が付いていたの?
私は、その場に立ち尽くした。
「どうなんだ?
コメート・・・買ってきて良いのか?」
彼からの、コメートの指輪だったら欲しい。
でも・・・私で・・・良いのかな・・・本当に。
暫らくして、背後に気配を感じた。
そして、大きな腕が私の身体に回ってきて、背後から抱き締められた。
「買ってきて・・・良いよな?」
彼の声が、私の耳元で聞こえる。
私は、ゆっくりと頷く。
肩に手を掛けられ、身体をくるっと彼の方に向かわされた。
彼の顔を見上げる。
綺麗な水色の瞳が私を見ている。
私の・・・大好きな・・・瞳・・・。
「アンジェリカ・・・俺の・・・天使・・・」
彼の顔が私に近付いてきた。
そして、そっと口付けられた。
天使・・・私は・・・貴方の天使になれたの?
名前の通りに・・・。
私は、腕を彼の首に回した。
・・・手に入れた・・・。
ずっと・・・ずっと・・・想っていた・・・天使様を・・・。
「何もかも上手く行きすぎて・・・恐いな・・・」
口付けの後、彼は呟いた。
「私と・・・結婚するのが・・・そんなに良い事なの?」
彼の胸に頭を預けながら、私は言った。
「ああ・・・気が付いたのは・・・最近だけどな・・・」
そう言って、私を抱き上げた。
そして、部屋の隅にある寝台に向かう。
私を降ろすと、私の横に座る。
「お前・・・ルークの結婚式でブーケを貰っただろ?
その時、周りの奴等が『次は、あの娘だな』って言ってたんだ。
そう言えば、お前も26歳で、結婚してもおかしくない年齢なんだって気が付いた。
まだ・・・17・8歳の感覚だったから・・・。
で・・・どんな奴と結婚するのかと、思い始めた時・・・嫌だと思った。
他の男が、お前に触れるなんて・・・嫌だって・・・」
彼は、そう言って私の髪に触れる。
私は、長く伸ばした髪を後ろで、1つに結んでいるだけ。
本当は、結っても良いんだけど・・・癖の無い髪にあまり癖を付けたくないから・・・。
彼の手が髪を結んでいるリボンを解く。
私の外見で唯一自慢できる栗色の真っ直ぐな髪が私の背中を覆う。
彼は、私の髪を1房取ると、それに口付ける。
「この栗色の髪が、他の男によって乱れるなんて・・・。
青灰色の瞳が、他の男を熱く見詰めるなんて・・・。
桃色の唇が、他の男に奪われるなんて・・・。
俺のモノにしたいって思ったんだ・・・」
そして、私の唇に彼の唇が重なる。
「俺は・・・初恋を実らせる事が出来た・・・。
でも・・・俺達が・・・引き離した2人の内の1人は・・・まだ・・・」
彼は、そう言って私から身体を離した。
そうね・・・。
貴方の妹の幸せを見届けてからでないと、幸せになれないって事ね。
だから・・・これ以上は・・・駄目なのね・・・。
「道中・・・気を付けてね・・・」
「ああ・・・」
私は、寝台から降りた。
「・・・良い知らせと・・・コメート楽しみにしてるから・・・」
私は、振り向かずに部屋を出て行った。
次の日、ビリーは、ザールブルグに向けて、旅立った。
終わり
後書き
変な終わり方ですけど・・・これで終わりです。
状況的に、男女の関係為っても良いのに・・・この2人も堅かった・・・。
まあ・・・キスシーン2回頑張ったけど・・・。
帰って来てからの話は・・・どうしよう・・・。
所詮、オリキャラ同士だから、書かずに済まそうかな・・・。
ビリーさんが、ザールブルグに来てから、色々起きるんですけど、その話は、
その内に・・・。