とりあえず昼前には隣の都市に着く事が出来た。
それまで歩き詰だったが、山育ちの私たちにとってそう苦痛になるようなことはなかった。
程度の低いモンスターに襲われることがあっても、一応私たちも浅いが実戦経験者である。
その程度の相手に負けるはずはなかった。

都市の中には簡単には入れた。
この都市は規模が私たちのとは丸っきり違う。
いくつもの都市の中継都市ということもあり、大規模なコロニーが形成されていた。
賑やかそのもののこの都市は、いろんな不安を抱えた私たちをちょっと優しく包んでくれた。

まず、いろんな情報が欲しかったため、私たちは冒険者ギルドというところに行くことにした。
香里とは一旦離れた。栞ちゃんらとこの先の旅に必要な道具を買って来てもらうことにした。
私は先ほどの通行人に言われた通りの道を行き、ギルドというところに行くことにした。
私はギルドというところははじめてだったためちょっとした新鮮味を味わえそうでわくわくした。

そこは酒場のようなところだった。
一回入場料としてちょっとした金を払って私は中に入った。
昼間だと言うのに人が集まっていた。
大部分は冒険者だろう。
情報を交換しあっているのだろうか、机に座りながら何やら話している人たちが大勢いた。

私はとりあえず何をしたらいいのかわからなかったため、カウンターに行くことにした。
カウンターにはマスターらしいちょっと体のごつい人がいた。
とりあえず私はこの人に事情を話せば他の人から情報がもらえる。そうふんだ。

とりあえず近づき事情を話して話を聞いてもらえることになった。
私はまず何を話していいかわからなかった。
それを察してくれたようにマスターは私にミルクを一杯飲ませて落ち着かせてくれた。
久々に飲んだミルクはお母さんのことを思い出させた。
けれど次には霧散させる、私は感傷に浸る暇なんてない。感傷よりも次に進む足が必要なのだ。

「えと、ですね。私は相沢祐一という人を探していまして。えと、一応彼は冒険者だと思うんで、何か情報がないかなあと思ってきました。」

マスターは一度顔をしかめてから、質問を質問で返してきた。

「お嬢さんはその男と何か繋がりがあるのですか?」

「えと、従兄弟なんです。」

個人情報を出すのはあまり好きではない。だが、この場では出すしかないと思い渋々ながら明かす。

「ほう、そうでしたか、それならばお教えしましょう。」

そうマスターが言いかけて私が腰掛けているカウンターの席の近くに数名の男がやってきた。

「よう、マスター。この可愛らしいお嬢ちゃんは誰だい?マスターの娘かい?」

「やあ、久しぶりだな。このお嬢さんはこれでもれっきとした冒険者らしいぞ。」

数名の男がぷっと笑い出す。
嫌な顔付きであった。特に笑われている中心にいる私はいい気分ではなかった。

「はっはっは、そりゃ傑作だぜマスター。こんな可愛いお嬢ちゃんも冒険者なんて言っちまったら俺らはどうなっちまうんだよ。」

「何で笑うんですか!」

私は席を立つ。牛乳がもう入ってない空のコップが一度大きく揺れた。

「そりゃお嬢ちゃん笑うしかないって。こんな可愛らしいお嬢ちゃんがねえ、冒険者なんて俺らの立場がないって。」

「・・・私が女だからですか?私がまだ年もまだ若いからですか?だと言うのならば剣を持って私を試してください。あなた達よりは強いという自信はあります。」

男達の笑いが止む。こんな小娘にこけにされるようであればそれはただの汚点でしかない。

「お嬢ちゃんそれはちょっと冗談じゃあ、すまねえな。」

「冗談で済ます気はありません。」

男が剣を抜く、それにつられて私も剣を抜き、蒼い刀身を光らせる。

「ちょっと待ちな。」

そう遠くも離れいていない場所の席の女性が割り込んできた。

「それ以上やると言うのなら私も加勢しよう、女という理由だけで。」

私よりも透き通るような青い髪の女性がそこにいた。

「・・お、おい。こいつ、反乱軍の天沢郁未じゃねえか?」

リーダー格の後ろにいたやつがぼそりと言う

「こいつが仕事人の天沢か・・・あ、相手に取って不足はねえよ。やってやろうじゃねえか!」

男の顔は明らかに何か諦めきった顔をしていた。

「お前等、ここで喧嘩するということは俺に喧嘩売ってると同じことだぞ。大人しく酒でも飲んでろ。」

マスターがぐいっとごつい体を乗り出しながら言ってきた。

「ま、マスターにそう言われたらどうしようもないよな・・・」

男達はほっとしたような顔をしていたが、唯一リーダー格の男だけが煮え切らない顔をしていた。
一応マスターという存在のおかげで体裁は守れたわけだが、それでも何か情けなさでも感じていたのだろう。

男達は酒を注文して自分たちの席へと行った。

「ありがとう、自信あるようなこと言ったけど、実は自信なんて全くなかったの。」

名雪が天沢郁未と呼ばれていた女に話し掛ける。

「ふふ、当然のことをしたまでよ。あなた祐一のことを探しているんでしょ?マスターの情報よりも私の方が詳しいわ。私が教えてあげる。ついてきて。」

悪いねマスター、お客取っちゃって。と、そう言い残して私はこの人の後について行く事になった。

壁際の席だった。机の上には軽いお酒にお菓子が置いてあった。

「で、何から説明したらいいかしらね。名雪ちゃん。」

私はどきっとした。この人の前で名乗ったことはなかった。すぐにこの人は誰だろうと言うよりは、何故私のことを知っているんだろうという気持ちになるのは自然のことだろう。

「何で私があなたのことを知ってるのかって顔してるわね。そりゃあれよ、私は祐一と親しくてね、その祐一からあなたのことを聞いていてね。」

それだけで私のことがわかるのだろうか、もっと深みにはまるような謎を負う。

「本当言うとね、あなたのその剣。それが決定打かしら。祐一があなた宛に送った剣。それ私も見たことあるもの。見たというのは実際ではないか。祐一がその剣を手に入れた時一緒にいた。それが正しいかしら。」

ああ、なるほど。私は相槌を打つ。それなら納得が行く。

「で、祐一は今どこですか?」

手紙にはミッドガンドに行けとあった、しかし、私は会えるものなら祐一に先に会いたいと思った。

「あなたも直球で聞くわね。まあ、いいわ。祐一はどこにいるか誰も知らないわ、私たち身内でもね。
祐一はミッドガンドの一人の騎士にやられてね、まあ、早い話が修行の旅よ。一人で鍛え直すんだってさ。」

自分のことで手一杯、そういうことだったのか。
では、私の今の目標は決まった。
ミッドガンドに行く。それが一番だろう。

「名雪ちゃん今からミッドガンドに行くんでしょ?私が連れてってあげようか?」

願ってもない申し出だった。正直私一人でどうこうできそうでもない気はしてた。
なんせここからミッドガンドに行くには獣の森を通らないといけない。
獣の森は強力な獣の巣窟。少女3人でどうこうできるもんではない。
死ぬ覚悟はあると思うがさすがにそう直に死ぬ気はさらさらない。
先ほどの男達の感じからしてこの人は強いのだろう、ならばついて行くのは正解だろう。
ただ、この人を信じる信じないは別問題だとして。
どこかに嘘があるかもしれない、もしかしたら全て本当かもしれない。
ただ、私一人を殺すくらいなら特に嘘を付く必要もなさそうだった。私を殺そうと思えばいつでも殺せる、彼女はそんな目をしていた。

「願ってもない申し出です。よろしくお願いします。」

私は頭をぺこりと下げてお願いをした。
その後軽い自己紹介をして、旅について色々と聞くことが出来た。
あまり長い時を過ごすわけにもいかなかったので一区切り着いた時点で香里達と合流することにした。

用件が終われば街の私たちが入って来た入り口で待機。それが香里との約束だった。
香里はまだ着てない様だったので私たちは待つことにした。

「ところで祐一は私のことをなんて言ってたんですか?」

何となく最初に質問したかったができなかった質問を今する。

「ん?こう言ってたわよ
あいつは俺の隠し武器だ。あいつがいれば俺達の戦争は終わらせれる、俺達はこの不幸な世界を終わらせれる。
そう言ってたわ、まあ、その後にまあ、役に立たんかも知れんがそれはあいつ次第だ。ってね。」

私はちょっと嬉しいような悲しいようなそんな感じだった、評価されるのは嬉しい。だがそれも過度ならば話は別である。期待されるのは苦手だった、と言うよりも今まであまり期待されたことがなかったからだ。私は私が好きな行動しかしなかったからだ。

「ところでその剣を見せてくれる?」

言われたままに私は剣を見せる。

「いい刀身でしょ。大事にしなさいよ、この世に数本しかない龍の剣の一つなんだから。」

龍の剣。噂には聞いていた。上級の騎士しか持つことを許されないと言うほどの剣だった。

「まあ、でも万能でもなければ最強でもない剣だしねえ。とりあえず扱えればいいか。」

この世の剣のランクを付けるとすれば多くの人間がこうするだろう。
一番は過去に魔王がこの世で一番強いとされる剣士に送ったとされる覇王剣。
二番には神に背くために作った王の剣。
三番は10人の精霊王が精製したとされる11本の聖剣。
四番には名工マーロンが作ったとされる魔剣フェンリル
そう、一般の人間がつけるとすればこうであろうか。
本当のごく一部の者が噂するには、最強の剣は自然と同じ年月を生き、今なお生き続ける唯一の神とされる千年城の城主が、その唯一の配下であり、たった一人でどの王国の軍隊にも勝るとされると言われる魔剣士に送ったと言う木樹の剣であろうか。ただこの剣は誰も確認をしたことがないとされるただの神話である。

「あの、私あんまりこの剣扱えないんですけど・・・」

「そりゃそうでしょ、セイフティの解除してある魔剣。しかも龍の剣をまともに扱える人間なんて極一部よ。こんなものは魔石の力をセーブして使うのが当たり前よ。使った瞬間気絶がいいところね。」

「でも、私それを扱いたいの。どうしたら・・・」

そう言い掛けてしまったと思った。私はまた人に頼ろうとしていた。
私は剣については自立をしなければいけないと思ってたのに。

「んー、魔石は合性って言うしねえ。この剣があなたが持つべき剣だと言うならば、まあ、自ずとこの剣が味方してくれるでしょ。ま、とりあえずがんばんなさい。」

話が終わったあたりに香里達が通りから歩いて来た。

「名雪、その人は?」

まあ、とりあえず思ったとおりの反応と言うところだろうか。

「えと、ギルドで知り合った人で名前は天沢郁未さん。森を越えるのを手伝ってくれるって言うからお願いしちゃって。」

ふうん、まあ、仲間は多い方がいいわよね。
と、香里は同意をしてくれて、栞ちゃんと一緒に自己紹介をした。

それから私たちは別の出口に移動し、冒険者は一度は通るだろうとされる獣の森に入ることになった。