俺と霞が外に出ると、店の前にある広場で二人のメダロッターが対峙していた。
1人は功祐。
もう1人は、全身を紺色のローブで纏っていて、顔はわからない、身長は、功祐と同じくらいだ。
それに、広場の周りにはギャラリーがいる、どうやらあのメダロッターと揉め事があったらしい。
「なあ、イッキ。」
霞が言うと、俺は
「ん?なに?」
と、聞き返す
「グランビートル勝手にあげちゃったけど、イッキは大丈夫なのか?」
「!!」
霞に言われ
、俺ははっとした。
そうだ、ヒカルさんの許可なしにあれをあげてしまった・・・・
「早速クビなのかなぁ」
俺はがっくりしながら言った。
そもそも、いくら霞の許可を得たからと言って、店長に何の相談もなくメダロット、
しかも、とてつもなく高価で、とてつもなくレアなものを
あげていいはずは無いのだ。
本当に今日はついてない・・・俺の人生終わった・・・・。
そんな事を思った瞬間だった。
「メダロット転送!」
と功祐の声が聞こえてくる、俺はそっちに視線を移す。
そこには、まだ真新しいグランビートルが転送されていた。
「返して・・・・・・くれないよなぁ」・・・俺はそんな事をつぶやいた。
「グランビートル・・・」
そのメダロッターはそうつぶやく、声からすると、どうやら男らしい。
相手のメダロットが転送される。
そこには、KWG型ドークスがいた。
「なっ・・・、あの機種は今の子供が手に入れられる代物じゃないだろ。」
俺はそう言った。
俺は今18歳で、サイカチスを買った時は10歳だった。
どう考えても功祐より同年齢または年下のあの少年が、8年も前のものを持っているとは思えない。
ましてや、俺のサイカチスでさえオーバーホールに出しても、新品同様になるわけではない。
しかし、あの少年のドークスはどう見ても新品にしか見えない、当時の物かどうかも不明だ。
今は、リニューアル版のメダロットが発売されているが、その中にドークスは無い。
リニューアル版と言うのは、過去に発売されたメダロットを、再度生産し、販売している物の事だ。
リニューアル版は、多少能力値やカラーリング、カラーの濃度なども微妙に違っている物である。
もちろん新製品も出ているが、最近は、市販のカスタマイズキットなどを使い、メダロットを自分でカスタムして、
オリジナルメダロットを作る人も増えてきている。
カスタマイズキットをさらに改良し、使っている人もいるが、これにはかなりの技術が必要になる。
当然、違法改造は見とめられない。
「一体どうやって手に入れたんだ・・・」
俺が言い終わった瞬間だった。
「合意と見てよろしいですね」
現れたのはMr.うるちだった。
まだ現役バリバリでレフェリーをやっている。
何でこんなに元気なんだ?もう年なのに・・・俺はそう思った。
うるちにそう言われると、二人のメダロッターは同時にうなずく。
うるちは腕を振り上げ、
「ロボトルゥゥゥーーーファイトォォォォーーー!」
と、ロボトルの開始を告げる。
「そう言えば、まだ名前決めてなかったな、指令出しにくい・・・」
功祐は、意外な事を口にする。
本来はもっと早く決めておくべきなのだが・・・
本当にこんな少年と出会ったのは初めてだ。
俺はため息をつきながら空を見上げた。
「よし、決めた、お前の名前は『ゼロ』だ。」
その名前が決まるまでには、約20秒ほどかかった。
功祐は気を取りなおす、どうやら相手は待っていてくれたようだ。別に狙ってもいいのだがな。
「いくぞ!」
功祐のその合図で戦闘は始まる。
「ゼロ、ガトリング発射」
功祐がそう言った瞬間だった、「ガキン」と、鈍い音がした。
「撃てないぞ、功祐」
ゼロがそう言った、
第一声がそんな言葉になろうとは・・・・。
功祐が指令を出した瞬間に撃とうとした、ゼロの反応もなかなかのものだが・・・
いくら見た目がきれいとは言え、6年も前のメダロットだ、
その間誰も整備をしていない。
俺はそんなところまで頭が回らなかった。
その隙を付き、ドークスが切りかかって来る。
当然、回避など出来るはずも無い、メダルのレベルが低いからだ。
いや、それよりもドークスの動きが速すぎる。
ゼロの左腕が大破する、それと同時に功祐が言う
「ゼロ、右に跳べ」
功祐が指令を出す
。
「縦一閃!」
相手のドークスが、メダフォースを発動させるのと、ゼロが右に跳んだのは、全く同時だった。
いや、ゼロの方がわずかに早い。
それにしても、功祐が名前を決めている間にメダフォースを溜めるとは、抜け目無いな。
「なにっ!?」
少年が言う。
どうやら、かわされたのは初めてらしい。
かわされたと言うよりも、当たらなかった、と言う方が正しいだろう。
ゼロが右に跳んだためである。
普通ならかわせる筈の無いメダフォースをかわしてしまった。
功祐の勘は、どちらかと言うと予知能力に近いみたいだ。
しかし、いくら鋭いと言っても、そう長くは続かない。
右腕パーツが大破する。
「ああっ、800万が・・・・」
俺はそんな事を言っていた。
それに、グランビートルのパーツは、整備不良で弾すら発射できない。
初戦で負けか・・・・。
俺がつぶやいた時だった。
「こんなところで、負けるわけにはいかない!」
功祐がそう言うと同時に、ゼロが緑色の淡い光に包まれる。
「メダフォース? いや、違う、もっと強いもの・・・・」
俺がそう言っている間にも、ゼロの両腕は見る見るうちに再生していく。
5秒と掛からなかった。
俺たちの周りも光に包まれていく、ゼロから光の弾が撃ち出される
、ドークスはその速さについていけず、まともにくらった。
ドークスのバーツは跡形もなく消え去っていく。
ドークスのティンペットは粉々になった。
ゼロを包んでいた光が消える、
周りのみんな、もちろん功祐、俺、霞、相手のメダロッターもあっけに取られていた
、
光が消えると同時にゼロは倒れこみ、機能停止した。
幸い、ドークスについていたメダルは無傷だった。
少年は「チッ」と舌打ちすると、メダルを拾い、走り去っていってしまった。
功祐は、グランビートルこと、ゼロを転送し、そのまま帰ってしまった。
一体、何が原因でこうなったかはわからず終いだったが、無理に知る必要もないだろう。
それから、霞は俺に別れを告げ、帰って行った。
その後はひどかった、特にヒカルさんが帰ってきてから・・・・
「イッキ君、勝手にそんな事して・・・・、反省してるの?」
ヒカルさんに言われ、
「はい、反省してます」
と俺が答える。どうやらクビは免れたようだ。
「減給するからね。」
とまたもヒカルさんに言われ、
「わかりました・・・・」
「じゃあ今日からしばらくの間、時給にするから。」
「えっ?、時給いくらですか?」
と聞くと、
「時給100円。しばらくはそれで頑張ってね」
思わず声をあげそうになった、
「わかりました・・・・」
こう答えるしかなかった、俺の声はわずかに震えていた。
今日は本当についてない日だ、幸い、まだ親と暮らしてるからいいが・・。
この店の閉店時間は8時30分だ。
「それにしても、時給100円とは・・・・」
俺はそんな事を言いながら、家に帰って行った。
―destiny・第一章,zero~すべての始まり、運命の終始点~― end
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