「ゼルフィリス・・・止められないのか・・」
青いメダロットは、掠(かす)れた声で、隣にいるメダに問い掛ける。
「止められなければ・・壊すだけだ・・」
『ゼルフィリス』と呼ばれた白いメダロットは、強い口調で答える。
「誰が壊すんだよ!俺は殺せないからな!それとも、お前があいつを殺すのかよ!?それに、どうやって!?」
『ヴォルク』と呼ばれた青いメダは、ゼルフィリスに怒気を含んだ言葉をぶつける。
「他に方法が無いだろう!?どんな事をしても、あいつのメダルを葬るしかないんだ!」
そう言いながらゼルフィリスは、ヴォルクを睨みつける。
押し黙ってしまったヴォルクを見て、ゼルフィリスは言った。
「すまない・・ヴォルク・・」
「いや、構わないさ」
ヴォルクは、さっきと違い、穏やかな口調で答える。
「壊すと言っても、お前のゼロフォースも、あいつには効かないだろ?どうするんだ?」
ヴォルクは、そう言いながら、前方で暴れている赤いメダに視線を向ける。
そのメダは、両腕にブレードを持っていて、そのブレードを器用に使いこなし、周りのメダを、薙ぎ払っている。
「ああ・・確かに、俺達の攻撃は効かない・・それに、打開策だって無い」
ゼルフィリスは、きっぱりと答える。
「断言するなよ・・」
ヴォルクは、言葉を続ける。
「・・ライグだってもういないんだ・・・俺達だって殺されかねない・・早めに決着(けり)をつけないとマズイぞ」
「ライグ・・クソォ・・オルフェリスめ!」
ゼルフィリスは何かを思い出したように言葉を吐き捨て、前にいる赤いメダに突撃して行く。
「ゼロ!待て!」
ヴォルクはそう言って、咄嗟にゼルフィリスの後を追いかける。
ゼルフィリスは、前のメダに向かっていく途中に、淡い緑色の光を帯びる。
「死ねぇ、オルフェリス!」
ゼルフィリスは跳躍し、左腕の銃口から2発の白い光弾を撃ち出す。
「オオオォォォ!!」
『オルフェリス』と呼ばれたメダが咆哮すると同時に、ゼルフィリスと同じ、淡い緑色の光を帯び、
それと同時に、オルフェリスの前に透明なバリアが出る。
そのバリアは、ゼルフィリスの撃ち出した光の銃弾を打ち消す。
「やはり・・ゼロフォースは効かない・・このままじゃ・・」
ゼルフィリスは着地し、小声で嘆(なげ)く。その瞬間、ゼルフィリスの視界から、オルフェリスの姿が消える。
ゼルフィリスが、後ろに気配を感じるのと、何かの衝撃で突き飛ばされた事を感じたのは、ほぼ同時だった。
長い一瞬―――ゼルフィリスの脳裏に、言葉が聞こえる。
『ゼロ・・お前は死んじゃダメだ・・最後の希望は、お前なんだから・・・死ぬ役目は、俺が引き受ける・・』
その言葉が途切れた瞬間だった。
『ベキッ・・ガキュゥゥ』 ゼルフィリスが今いた場所から、金属の砕ける音がする。
ゼルフィリスは、全身を地面に打ちながらも、体制を立て直し、すぐに音のした方を見る。
そこには、ブレードを振り下ろし、下を見つめるオルフェリスがいた。ブレードの下にある物に、ゼルフィリスは視線を向ける。
その瞬間、ゼルフィリスは驚愕する。ブレードの下には、青い物・・・メダロットの装甲がある。
その装甲は、すでに原型をとどめていない、残骸と化したヴォルクの姿があった。
オルフェリスを包んでいた光は、もう消え去っていた。
ゼルフィリスを包んでいた淡い緑色の光が「フッ」と消える。
と、次の瞬間、ゼルフィリスが、今度は淡い青色の光を帯びる。
「お前は許せない・・だが・・俺は、お前を殺す事も出来ない・・それでも、責任はとってもらう。
ライグとヴォルクへのせめてもの手向(たむ)けだと思え・・大人しく・・封印されろっ!」
ゼルフィリスはそう言うと、一筋の蒼い閃光となって、オルフェリスの周りを飛び交う。
オルフェリスが、左腕のブレードで薙ぎ払う。しかし、そのブレードは閃光をかすめる事も出来ない。
青い閃光がオルフェリスの背後に来る。その瞬間、閃光がオルフェリスの胴体を後ろから貫く。
それは、1瞬の出来事だった。オルフェリスの胴体には穴が開き、メダルもどこに行ったか分からない状態だった。
閃光は、オルフェリスの胴体を貫いた後、一度地面にぶつかり、今度は真上に高速で上昇して行く。
50mぐらい上昇し、一筋の閃光は2つに分かれて別々の方向へと飛んで行く。
「おい、功祐・・」
ふと、功祐の頭に、聞きなれた男の声が響く。
「起きろ!」
「!?」
男の荒ぐ声を聞き、功祐は、まだ寝ている頭を無理矢理起こし、慌ててベッドから上体を起こす。
(今のは何だ・・?夢・・か・・ゼルフィリス・・ゼロ?)
功祐がそんな事を考えながら横を見ると、そこには、功祐が見慣れた1人の男が立っていた。
「・・・兄貴・・その起こし方は、もうやめてくれ・・心臓に悪い・・」
功祐が、痛む頭を押さえながら言う。
「最初に声掛けたぞ。それで起きなかったからさ・・つい・・」
隣に立っていた功祐の兄、『加賀見 鐐(かがみ りょう)』は、苦笑いを顔に浮かべながら言う。
「つい・・じゃないだろう・・あんな小さい声で起きるかよ、普通・・」
そう言いながら、功祐は、「はぁ」とため息をつき、ベッドから降りる。
「聞こえてるなら、何で最初に起きないんだよ」
「意識が朦朧(もうろう)としてたんだよ」
呆れて問う鐐に、功祐は投げやりな言葉で返す。
ふと、功祐は、辺りを見まわす。
「ああ、ゼロなら、下で母さんの手伝いしてるぞ」
鐐は、功祐の考えを理解したかのように答える。
「何!?何でゼロが手伝ってるんだよ!?」
「さぁ・・?」
功祐は、鐐にそう言われると、真っ先に1階のキッチンへと向かった。
「ゼロ、ねぇ・・・功祐は入るかな・・windress(ウィンドレス)」
鐐は、1人になった功祐の部屋で、誰かに呼びかけるようにつぶやく。
「さあな・・どちらにしろ、衝突は免(まぬが)れられないだろうけどな」
鐐のメダロッチから、声が聞こえる。
「そうだな・・だけど、出きる事なら、仲間は多いほうがいいだろ?」
「お前は断ったのにか?」
メダロッチから出る声にそう言われ、鐐は額に手を当てる。
「・・まぁ、いいじゃんか・・気にするなよ」
再び苦笑いを浮かべ、鐐はそう答える。
「ゼロ!」
功祐は、キッチンの扉を空けるなり、ゼロの名前を呼ぶ。
そこには、トマトを輪切りにしているゼロの姿があった。功祐はその光景をみて呆然とする。
そんな功祐を一目見ると、何も言わず、ゼロは再びトマトを切り始める。
「功ちゃん、おはよう♪」
しばしの沈黙は、目の前に表れた若い女性、功祐の姉『加賀見 亜葵(かがみ あき)』によって打ち消された。
「ああ、姉さんおはよう・・」
功祐は、呆(ほう)けた顔を普段の顔に戻し、答えた。何故、鐐は『兄貴』で、亜葵は『姉さん』なのだろうか?
それに・・『功ちゃん』・・・・様々な疑問は残るが、あえて、もう考えないようにしよう・・・
「ゼロ!何とか言えよ!」
功祐は、鋭い目つきでゼロに呼びかける。しかし、返ってきた言葉は
「功祐、おはよう」
それだけだった。
「ああ、おはよう・・」
対する功祐も、そう言うしかない。またしても、しばしの沈黙が流れる。
「御飯食べるでしょ?」
背後から唐突に声を掛けられ、功祐は振り向く。そこにいたのは功祐の母、『加賀見 亜季奈(かがみ あきな)』である。
功祐が頷(うなず)くのを見ると、亜季奈は、ゼロもとい、まな板の方へと向かう。
「ありがとう、もういいよ♪」
亜季奈は、ゼロにそう声を掛けて、何やら作業を始める。どうやら朝食らしい。
出来あがったのは――サンドイッチだ。
「功祐、お昼の分もあるから、持っていって食べてね♪」
亜季奈は、笑顔でそう言いながら、皆の朝食をリビングへと持っていく。
朝食を食べ終えた功祐は、すぐに家を出た。
そして、待ち合わせ場所の『グランドクロス』へと向かう。
「ちょっと遅れたけど、このまま行けば間に合うよな」
走りながら、功祐はメダロッチの中にあるカブトメダル―――ゼロに呼びかける。しかし、ゼロからの返事は無い。
「何でそんなに無口なんだよ・・・」
息を切らす様子も無く、功祐は呆れながら呟いた。
※灰色の太字は功祐の夢です。