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暗い闇夜に紅い哀しみ

白い月光浴びる木々

血に染まった左手

流れ落ちる命


その夜僕らは互いを失った

僕は許されぬ咎人


その村で僕らは生まれ

その村で僕らは育ち

その村で僕らは出会い

その村で僕らは愛し合った


決して結ばれる事はない

互いに知っている


僕は彼女に従う者

一番近くて一番遠い


それでも僕らは互いを愛した


戦乱は僕らの村にも伝わる


僕は誰かの為に力を欲した

彼女は誰か為に力を捨てた


方法は違いしも

想いは同じに


誰かを守りたい

ただそれだけの為に


僕は命を奪う事で人々を、我が祖国を守った

彼女は身分を捨て、行くあてのない人達を守った


やがて戦争は僕らを引き裂いた


領土という名の境界線に阻まれた


僕は守るべき祖国の為に

本当に守るべき彼女を敵とした


違った事が運命だったならば

僕は抗う事ができたはずだ


命を殺める事を選んだのが僕自身だった事が

僕が抗う事のできなかった理由


すべては信じる理想の為に


懐かしい森にたたずむ僕の背中に

聞き慣れた綺麗な囁き


武器を持たずに現れた彼女は昔のまま

変わらぬ美しさに息を呑む


僕らはあの頃から変わってなどいない


互いに信じる事の為に

互いに信じる道を進んできただけ


だから言う事ができた

僕も

彼女も


『君の守りたいものたちの為に―――』


暗い森の中に冷たい月光が差す

左手に握られた刃だけがうっすら照り返す


関係を違った僕の国と彼女の国が

もはや互いに引けないように


行く道を違った僕と彼女も

昔には戻れない


彼女は望んだ


「無関係な人達を殺める事はしないで」


僕は約束した


「君以外に奪うべきものはない」


『ごめんね』


森に広がるのは紅い静寂


どこからか聞こえてくる


もう聞こえるはずのない声が


「君の事好きだよ」


「ずっと一緒だからね」


「ずっと、ずっとわたしを守ってね」


それは違う事を知らない幼い頃の約束


僕は永遠の咎人


守るべきものを守る為に

本当に守るべき愛する人をこの手で殺めた


逃れる事なき咎人