「でも、どうしたらいいんだろ・・・。」
「何がですの?」
 場所は変わって宮殿内。
 二人は廊下をこそこそと話しながら歩いている。傍から見ると仲良く話し込んでいるように見えるが、内容が内容だけに人目を気にしている二人である。
「直接お聞きしようかと思うんだけど・・・。」
「あんたねえ、仮に伺ったところで、答えてくださると思う?」
「うーん・・・。」
 アンジェリークは考え込んだ。そして、結論。
「・・・無理だと思う。」
「じゃあ、どうすればいいと思う?ロザリアは。」
「・・・だからこうしているんじゃない。」
 さっきから柱の陰で話し込んでいた二人は、背後に人がいることに全く気付かなかった。
「さっきから何を話しているんだい?」
  いきなり背後から聞こえてきた声に、二人は思わず、
「「きゃあああああああああああ!!」」
と叫んでいた。 一方叫ばれた声の主――――ランディ、は
うわああああああああ!!
とこちらも叫んでいた。
 女王候補と風の守護聖の叫び声に周りにいた人々は何事かと集まってくる。
「どうしたんですか?」
「何か起きたのですか?」
 このままではいけないわ・・・。
 ロザリアの思考回路がフル回転し始めた。 (大騒ぎになる前にこの場を何とか納めなくては・・・。)
「申し訳ありません、皆様。」
 彼女は優雅にお辞儀をして、極上の笑みを浮かべたのだ。 その気品に、集まっていた人々は一気に静まった。
「この娘ったら、落ちてきた木の葉を虫と間違えたみたいなんですの。あんまり驚いたみたいで・・・。」
 そこまで言うと、誰にも気付かれないようにアンジェリークをチラッとみた。
(あ、そっかぁ・・・。) アンジェリークも分かったらしい。
「ごめんなさい。私、虫って苦手で・・・。大きな声出しちゃった。」
 そういって舌をぺろっと出して、恥ずかしそうに笑うアンジェリーク。
 そんな二人を見て、『大変な事でなくて、よかったです。』などと言いながら、皆去っていった。

 ほ〜〜・・・。
「驚きましたわ・・・。」
「ご・・・ごめん。あんまり真剣な顔をしてるからさ、何か大変なことでもあったのかと思って・・・。」
 ロザリアの一言に、ばつが悪そうに照れるランディ。
「・・・ねえ、ロザリア。」
「何よ。」
 黙りこんでいたアンジェリークが、いきなり口を開いた。
「・・・あのおはなし、ランディ様にも聞いてもらわない?」
「で、でも・・・。」
「俺でよかったら、話してくれないか?もしかしたら、何か役に立てるかもしれないだろ?ほら、よく言うじゃないか、『三人寄れば大樹の陰』ってさ。」
  そう言って、爽やかに笑うランディ。
  ・・・・・・・・・・・。 しばし流れる、沈黙。
「あの、ランディ様・・・。」
「なんだい?」
「・・・申し訳ありませんが、それって、『三人寄れば、文殊の知恵』では・・・?」
「・・・・・・・・俺、何て言ったっけ?」
「三人寄れば、大樹の陰、でした・・・。」
「・・・まあ、それはおいといて。話ってなんだい?」
 アンジェリークとロザリアも、展開の速さについていけなかったが、構わずにランディが続けた。
「何だか大変なことでも起こったのかい?」
「あ、そうそう。あの、ランディ様。・・・驚かないで下さいね。」
 いつものアンジェリークからは信じられないくらい真剣なまなざしに、思わずドギマギしてしまったランディではあったが、隣にいたロザリアの鋼鉄の視線に気圧されて、自然と頷いた。
「実はですね・・・。」


「・・・・ほ、本当かい?」
「それを確かめたくて来たんですけど・・・。」
「方法が見つからなくて、困っていましたの。」
 少年は考え込んでしまった。 (あのプレイボーイ、いやいや、女性に優しくて男に厳しいオスカー様がホ○・・・。まさか、でも・・・。)
「俺、思ったんだけどさ。」
「何ですか?」
「直接伺ってみたらどうかな?」
 あまりといえばあまりに簡単な答えに、アンジェリークは大きく頷いて言った。
「そうですよね。オスカー様とオリヴィエ様にお伺いしたらいいんだわ。なあんだ、そんな簡単なこと、どうして気づかなかったんだろう。ねえ、ロザリア?」
  嬉しそうに話すアンジェリークの様子に、半ば呆れ顔のロザリアは、
「そんなことをお聞きして、おふたかたが答えてくださると思って?否定なさるに決まってるじゃないの。さっきも言ったでしょう?」
と、意見を出した。
「そうかもなぁ・・・。でもさ、試しに聞くくらいなら、いいんじゃないかな?」
  のんきなランディに、ロザリアは、
「『ホ○ですか?』って・・・?ランディ様、仮にワタクシとアンジェリークにそういう質問をされたら、わたくし達をどう思われます?」
と、鋭い答え。
「・・・ビックリする、だろうなぁ・・・。」
「その後ですわ。」
「う〜ん。」
 同じように考え込むアンジェリーク。
「・・・バカなコ、って軽蔑される可能性だってありますわ。この娘なら構いませんけれども、この、完璧な女王候補であるロザリア・デ・カタルへナの名において、そんな事はあってはならないのですわ。」
 よくよく考えるとかなり過激なことを平気で言っているのだが、ランディもアンジェリークももともと物事をあまり深く考える性質ではないので、
『そういうものなんだ。大変なんだな、女王候補って。俺も頑張らなきゃな。』
『オスカー様に軽蔑されるのは、やだな。』
などと、まったく別のことを考えていた。

 

 

 

 

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