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「ゼフェルって、ゼフェルのにおいがするよね。」
背中にもたれながら、アンジェが言った。
「はあ?」
唐突の言葉に、思わずまぬけな声が出てしまったゼフェル。
「俺のにおいって・・・?」
言いながら、自分の体をくんくんとかいでいる。
「・・・機械油とか、薬品のにおいじゃねぇの?」
怪訝そうに振り返るゼフェルに対して、
「違うもんっっっ!!」
大きくかぶりを振るアンジェ。
「俺にはわかんねーけど。」
ゼフェルが言うと、アンジェは隣に移動してきて、胸に顔を埋める。
「こうするとね、一番分かるの。ゼフェルのにおいを一番感じるの。」
彼の鼻腔をくすぐる、甘い香り。
ゼフェルは甘いものは、食べるのはもちろん嗅ぐのさえ大っ嫌いなはずだが、なぜかコレだけは受け付けるらしい。
「どんなにおいだよ・・・?」
どうやら気になるらしい、お年頃ゼフェルくん。
「うーんとねー・・・あったかくて、安心するにおい、かな?」
「ふーん・・・。なら、おめーもおめーのにおいがするよなぁ。」
「私のにおい?」
さっきゼフェルがしたように、自分の体をくんくんかいでいるアンジェ。
「シャンプーとかじゃないの・・・?」
にやっと笑う、ゼフェル。
「だったら、おんなじにおいがするんじゃねーの、俺と・・・。」
「あ・・・(恥)。」
顔から火を吹き出さん勢いで赤くなるアンジェと、おかしそうに笑うゼフェル。
「・・・ねえ、私のにおいって、どんなの・・・?」
どうやらこっちも気になるらしい、お年頃の女の子である。
「そーだなー・・・一言で言えば、あめぇ、だよな。」
「甘い?」
腑に落ちないアンジェを見ながら、話を続けていく。
「あの、何だっけか、マルセルがよく持ってくる菓子の匂いで・・・。」
「バニラエッセンス・・・?」
バニラエッセンス。
よく、お菓子で使われる香料。ちなみにアンジェはこのにおいが大好きであるが、ゼフェルは・・・言わずもがな。
「ああ、それそれ。そいつに似てるよな。」
「似てる・・・?」
マルセルからはよく、『アンジェはバニラの匂いがするもんね。僕、だーい好きだよ。』とか言われていたので、なんとなく『そうかな?』と思っていたアンジェなので、そのものに例えられたなら、話は分かる。だが、ゼフェルは『似てる』と言った。
「ちょっと、違う。」
「どこが・・・?」
まだ悩んでいる少女を抱きしめながら、彼は、
「ん・・・?俺が気にならねーとこ。」
と、耳元に囁いた。
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