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その日、聖地は怒涛のようだった・・・。
「お嬢ちゃん。」
「俺だ、オスカーだ。」
「何をいうか、俺がオスカーだ。」
「分かるだろ・・・?俺が本物のオスカーだ。」
女王補佐官アンジェの前には、赤い髪の守護聖が2人。そう、2人、なのである。
「どうなってるの・・・?ロザリア・・・。」
アンジェは隣でこめかみを抑えている、親友の女王に助けを求めた。
「オスカーが言うにはね、朝起きたらこうだった。だそうなのよ。」
「そうなんだ、お嬢ちゃん。聞いてくれ・・・。」
「アンジェをお嬢ちゃんと読んでいいのは俺だけだ!」
火花を散らして睨みあうオスカー2人。
「・・・いい加減になさい!!2人ともだまらっしゃい!!!」
このアホ2人に、ついにロザリアが切れた。彼女の後ろにはサクリアが渦巻いている。
「このまま永久に眠っていただくことになっても、よろしいのかしら・・・?」
怖い・・・。怖すぎます、女王陛下・・・。
オスカーたちには、ロザリアがまるでメデューサのように見えたことだろう・・・。
「いえ・・・。」
「陛下の御心のままに・・・。」
さすがに黙り込んだ、アホ2人。
「・・・片方のオスカーは本物です。」
「じゃあ、もう片方のオスカー様は・・・?」
不安そうにアンジェが尋ねる。
「・・・炎のサクリアが具現化したものです・・・。」
「サクリアって、そんなことできるのぉぉぉぉ?!・・・すっごぉぉいい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
驚く観点が違うような・・・アンジェ・・・。
「・・・そんなことが出来るかどうか、は今調査中だけど、ね。問題があるのよ。」
「問題・・・?」
再び瞳を曇らせるアンジェ。
「どっちが本物か分からないのよ・・・。」
「・・・それって、問題・・・?」
「あ・・・当たり前でしょ。考えてもごらんなさい。オスカーが2人、よ。あんた、毎日我慢できるの?」
ロザリアの言葉に、アンジェは真剣に考え込んだ。
(毎日、我慢・・・?)
ぼんっっ!!!
顔から火を噴かん勢いで赤くなるアンジェ。あんた一体何を想像したんだい・・・?
「・・・無理、だと思う・・・。」
消え入りそうな声で答える補佐官。
「・・・で、しょう?まあ、他にも問題があるのよ。かなり重大な問題がね。・・・ジュリアス。」
ロザリアは、隣に控えていた筆頭守護聖を呼ぶ。
「そなたが間違えたと仮定して、だ。まずは・・・同じことが我々にも起こりうる可能性がある、ということだ。簡単に言えば、現在のオスカーは炎のサクリアが暴走している状態であるといえるだろう。」
こくこくと頷くアンジェ。ここまでは理解したらしい。
その様子に、再びジュリアスが話を続ける。
「我々はそなたを好ましく思っている。それは我々が司っているサクリアも同じだとすると・・・?」
ジュリアスが改めてアンジェのほうを見ると、彼女は眉間にしわを寄せて考え込んでいる。理解を越えたらしい・・・。
ロザリアが分かりやすく説明し始める。
「私も含めて、守護聖たちはみんなあんたが好きなの。・・・ここまでは分かる・・・?」
再びこくこくと頷く補佐官殿。
「オスカーのサクリアがね、あんたのことを好きだとして、よ。あんたが間違えて、サクリアをオスカーと思うとするわね。」
「そうしたら、どうなっちゃうの・・・?」
言いながらも、この後あまり良い展開にはならないことを予感したのだろう、瞳にうっすら涙が浮かんでいる。
「他の守護聖のサクリアも、もしかすると陛下のサクリアも、あなたに気に入られようとして暴走する可能性がある、ということですかねぇ・・・。」
ルヴァの言葉に、真っ青になる補佐官。
「サクリアを持たない私たちは、聖地を出なくてはなりません。・・・ですが、サクリアもそれ自身では存在することは出来ません。」
「・・・つまり、サクリアも消えちゃうことになって・・・。」
「・・・宇宙が、ドッカーン!!ってことになるみてぇだぜ。」
リュミエール、オリヴィエ、ゼフェルの3人が次々に口を開く。
「・・・そんなことになるなんて、俺、知らなかったよ。・・・大変だなぁ。」
ランディの一言に、全員が凍りつく。この人はアンジェより馬鹿かも・・・。
その場を取り繕うかのように、オスカー達が口を開いた。
「・・・とにかく、だ。今すぐにどうにかなる、って状態ではないってことだ。」
「そういうことだ・・・。だがな、お嬢ちゃん。俺は今すぐこの状況を打破したいんだ。考えてもみてくれ。君を独り占めできないんだぜ・・・?」
「それは俺の台詞だ・・・。俺以外の人間に君を触れさせるなんて、耐えられないんだ・・・。」
「なんだと・・・?」
再び睨みあう2人。火花散りまくり。間にいたクラヴィスが燃えかけている。
「止めぬか!!アンジェが怯えておるのが分からぬのか?!」
ついに落ちました、ジュリアスの雷。
「申し訳ありません、ジュリアス様。ですが・・・。」
「ジュリアス様、この状況はけして最良とはいえません。」
口々にしゃべる、2人のオスカー。
「オスカーは一人です。」
「それは俺の台詞だ。サクリアにお嬢ちゃんを取られてなるものか。」
「なんだと・・・?俺はオリジナルだ。」
再び火花が散る、アホ2人。ジュリアスも額に手をやり、『もうしらん』といわんばかりにしている。
「いい加減になさいといっているのが聞こえなかったのかしら・・・?本当に、永遠にお休みになるのがお好きみたいねえ、オスカー?・・・リュミエール、準備は出来ていて・・・?」
「もちろんです、陛下。」
にっこりと微笑んだリュミエールの手には100tハンマー。そうです、あの、某アニメで使用された伝説の100tハンマー、です。
「あ、いや・・・。」
「いや、それは・・・。」
辞退いたします・・・。
オスカー達の声が重なった。こればっかりは2人とも嫌らしい。
リュミエールが100tハンマーをおさめ、(どこに?)この場はいったん収まったかに見えたが・・・。
「おい、アンジェ、しっかりしろよ!!」
ゼフェルの一言で、その場はパニックに陥ったのである。
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