もうすぐ補佐官アンジェリークのお誕生日です。
 この来たるべきXデーを、女王をはじめ守護聖や聖地の人間全てが固唾を飲んで見守っています。
 この愛らしい補佐官は聖地の全ての生き物に、これでもかぁぁぁ、と言わんばかりに愛されていました。そりゃあもう、蟻んこ一匹から、神鳥(宇宙の意思なはずですが。)までもです。そのアンジェリークの誕生日とくりゃあ、もう一大事。陛下の即位の式典に勝るとも劣らない大事な行事な訳です。

 ここで頭を抱えている、ある人物がいました。炎の守護聖オスカーです。
(もうすぐ俺のお嬢ちゃんの記念すべき生誕の日が来る。俺のお嬢ちゃんはそりゃあもうその名のとおり、天使のように穢れなく、まさに神の遣わしたる芸術だ・・・。)
 ここで注意したいのは、オスカーはさっきからアンジェリークを俺のお嬢ちゃんと呼んでいますが、現在二人の関係は、守護聖と補佐官以上恋人未満です。
(俺のお嬢ちゃんは物欲というものがない。いっそ『これが欲しいんですぅ。』とか可愛く言われたら、仕事なんざほっぽり出して探しに行くんだが・・・。)
 それはそれで大問題なのですが、さすがオスカー。そんな事は全く考えていないようです。
(俺のお嬢ちゃんはきっと何を贈っても喜んでくれるだろう。だが、本当に喜んでもらいたい・・・。)
 書類を見つめてオスカーは考えます。事情を知らない人間がその姿を見れば、宇宙の一大事かと思われるほどです。
(・・・ちょっと待てよ。最近お嬢ちゃんとデートしたのはいつだったか・・・?)
 どうやらオスカーの思考は、違う方面に向かった模様。
(こないだの日の曜日は視察だったから仕方ない・・。だがその前、あれは何だ!!俺のお嬢ちゃんが何でランディなんかと、公園で会ってるんだ?!)
 自分を慕ってくる後輩を、なんか呼ばわりするオスカー。それにアンジェはあなたのものじゃないんですが・・・。
(そういやその前はジュリアス様とチェスをしていたな・・・。まあ、俺のお嬢ちゃんの教養が深くなるんだから、百歩譲ってよしとするか。)
 何を百歩譲るんでしょうか・・・?
(しかしお嬢ちゃんは可愛い・・・。まさしく天使だ。そんなお嬢ちゃんだから頼まれたら嫌とはいえない・・・。はっ、だからランディと会っていたのか・・・!!)
 どこをどうしたらそういう考えにいきつくのでしょう?ちなみにアンジェがランディと会っていたのは、たまたま偶然だっただけなんですが。
 机の上に突っ伏して、オスカーは考えます。こんな姿を誰かが見たら、ショックの余り倒れてしまうかもしれません。だが幸いなことにここにはオスカーしかいません。
(お嬢ちゃんが喜ぶものは何だ・・・?ぬいぐるみは確か卒業するといってたし・・・。)
 考えながらオスカーはとある書類に目を通します。それはアンジェリークの嗜好を調査した調査書です。まあここまでよくも、といえるくらいアンジェを調査したオスカーの汗と涙の結晶なんです。しかしどうやって調べたかはオスカーの名誉のため、伏せておきましょう。
(プレゼントその1、フリルのワンピース。・・・駄目だ、これはオリヴィエの領域だ。重なったりしたら、その他大勢扱いになっちまう。その2、香水。・・・お嬢ちゃんの魅力を損なうアイテムなんざ、贈るわけにはいかない。)
「・・・うがが〜〜〜!!」
 頭を掻き毟るオスカー。
  ・・・どうやら何も思いつかなかったようです。合掌。ち〜ん。


 さて、かわってここはアンジェリークの部屋です。
「どうしよう・・・。」
 彼女も悩んでいました。
(もうすぐ誕生日・・・。でも何をしようかな・・・?皆様はきっとご存じないだろうし、自分から『もうすぐ誕生日なんです』なんて、そんなのプレゼントをお願いするのと同じだし・・・。図々しすぎるもん。)
 皆様はしっかり知ってます。聖地における最重要事項です。知らぬは彼女ばかりナリ。
(でも、今度の土の曜日だし、お仕事あるし、ロザリアにお願いしてみようかな?お誕生日を一緒に過ごして欲しいって。うん、でも、それもなんだか図々しい、よね・・・。)
 頼まれる本人が知ったら、狂喜乱舞して喜ぶんですが、アンジェリークは露ほども知りません。
「あっ。いけない、もうすぐ謁見だわ。」
 時計を見たアンジェリークは慌てました。急いで書類をそろえ、謁見の間へ向かいました。

 

 

つづく