あるとき、女王陛下が欠伸混じりにこう、仰せになった。
「暇だわ・・・。」

 それを聞いた補佐官アンジェリークは考えた。
(ロザリアが退屈してる・・・。これって宇宙には悪影響よね?何とかしなきゃ・・・。)
 すぐにアンジェリークは図書館をごそごそと探し、
「あ、これ、いいかも・・・。」
 彼女は一体何を見つけたのか。


「ウォー○ーを探せ!・・・何、これ?」
 アンジェリークが持ってきた、とある一冊の本に、ロザリアはこう答えた。
「うん、何かね、面白そうだと思って・・・。」
「だから、どういう物なの?」
「あのね、これがウォー○ーくんなの。」
 とある人物ウ○ーリーの本物を探す本、といういたってシンプルなゲーム。

「・・・・これでしょ?」
 ロザリアはあるウォ○リーを指差したが、
「良く見て、ロザリア、これは本物じゃないわ。履いてる靴が違うの。」
 言われたロザリアが凝視すると、確かに本物は先の尖った革靴を履いていて、彼女が選んだのは先が丸いものを履いている。
「あら、本当ね。・・・・意外に難しいのね、これ。」
「昨日ロザリア、暇だって言ってたでしょ?何か面白いものないかなぁ、って探したんだ。」
 あんまり面白くなかったらごめんね、と舌をぺろっと出して笑う、補佐官。
 それを見たロザリアはむぎゅっと抱きしめたくなるのを渾身の精神力で押さえ込んだ。
  押さえ込んだ理由は簡単。
  その現場を見た馬鹿ども(ロザリア主観による)が、ドサクサに可愛い補佐官に抱きつく、なんていうハレンチ極まりない行為に及ぶ可能性が大、だからである。

(そうよ、私の可愛いアンジェリークを、何が嬉しくてあんな馬鹿軍団に抱きつかせたりするものですか。ええ、そうですとも。この子は本当に愛らしくて心の優しいまさに天使なんですわ。)

「あの・・・、ロザリア?」
 妄想の世界で暴走していた彼女を、補佐官が現実に引き戻した。
「え?」
「あの・・・やっぱり面白くなかった・・・?」
  心配そうに彼女を見つめる翡翠色の瞳。
「そうじゃないのよ。ちょっと考え事をしていただけよ。」
 おほほほ・・・・と、女王の高笑いが部屋に響く。
「そっか・・・ロザリア、いつも宇宙のために、って心を砕いてるんだもんね?本当に、素晴らしい女王さまだわ・・・。」
 ほぉーっと感心しているアンジェリークだが、当のロザリアは一切そんな事は考えていない。
「そうよ、わたくしはこの宇宙を統べるんですもの、それくらい当たり前でしょ?」
 おほほほ・・・と再び高笑いが響き渡る。いつもにも増して響き冴え渡っている女王の高笑い。それを見ながら感動する補佐官。

―――宇宙の平和は彼女たちで成り立っていることを、他の人間が知らないのは、全くもっての幸いである。


「陛下、本日もご尊顔麗しく・・・。」
「固い挨拶は抜きです、ジュリアス。」
「はっ・・・。」
 そしてその数日後、麗しき女王は守護聖たちを謁見の間に集めた。集められた彼らは、すわ一大事かと身構えたのだが、
「今日はちょっとしたゲームを考え付いたのよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 謁見の間に何ともいえない沈黙が訪れる。
「参加は個人の自由よ。強制はしません。」
 彼らの心情を読み取ったかのような女王の一言。
「怖れながら、如何なる催し物なのか・・・。」
 ゲームと言えばいいものを、あくまでも真面目な首座様。
「これよ。」
 女王が取り出したものは、そう、あの本であった・・・。


「「「「「「「「「ウォー○ーを探せ?」」」」」」」」」
「ええ、そうよ。アンジェリーク、説明して。」
  見事にハモった守護聖たちを無視して、ロザリアは可愛い補佐官に後を促した。

「・・・・・・・・という訳なんですぅ。」
「ふむ。陛下の仰ったことは分かったが・・・。」
 補佐官の説明に、守護聖たちは一応納得したものの、何がゲームなのか分からない。
「で、わたくしは考えたの。ここにはウォーリ○はいないし、いても探したいとは思わないでしょう?」
 全員大きく頷く。
「これをアレンジして、わたくしが考えついたのは・・・。」
 何処からともなく銅鑼の音がし、そして、
  じゃ〜〜ん!!

―――垂れ幕が落ちてきた。

「えーと、なになに・・・。補佐官を探せ!!ゲーム。・・・・・だってさ。」
 落ちてきた垂れ幕が守護聖たちを直撃し、オリヴィエ以外の面々はその中でもがいている最中、日頃の行いが物をいったのか(笑)、夢の麗人はその文章を読み上げた。
「・・・・・・・・・・・つまらぬ・・・・・・・・・・・・・。」
 次に抜け出したクラヴィスはそのまま、謁見の間を出て行こうとしたのだが、
「賞品は補佐官、としても?」
 ロザリアの不敵な笑みに、あっさり戻ってきた。

「え?賞品がアンジェ?」
「どういうことですか?陛下。」
「聞きたいですねー。」
「興味あるぜ。」
 などと、わらわらと残った守護聖達も、復活。

「ルールは簡単です。聖地時間の一ヶ月で、補佐官を探す事。」
「聖地時間の一ヶ月と言えばー・・・・。」
「下界じゃ一年くらいですね。」
 ロザリアの説明の後、ルヴァとランディが話し始める。
「でもさ、移動とかされたら、探しようがないじゃん。」
  さすが、オリヴィエ。そういう所に抜かりがないのが大人ですねぇ。 ロザリアもこれはきちんと考えていたため、話を続けた。
「安心してちょうだい。移動はしません。一ヶ所に留まります。範囲は全宇宙。個人で探しても、連携をしても構わないわ。見つけた人にはアンジェリークと聖地時間で一週間、下界では一ヶ月のバカンスをプレゼントします。」
 明らかに彼らの目の色が変わった。補佐官アンジェリークは彼ら全員の天使。その彼女と一ヶ月のバカンス・・・。
 全員がにた〜っと笑ったのが、ロザリアには見えた気がした。
(何を考えているのか分かってしまうわね。ほんと単純と言うか・・・。だからこそいいんでしょうけど。)

「では陛下、連携して見つけた場合は、どうなるのですか?」
 リュミエールも質問をする。全員こくこくと頷いているあたり、思った事は同じらしい。
「勿論、それぞれ一週間ずつよ。分割などと言うけちな真似は致しません。」
 そして、優雅で、高貴な微笑で、こう、締めくくった。

「ゲームスタートは明日の朝9時。聖殿の鐘が合図です。ただし、通常業務は遂行して下さい。執務を疎かにした場合は、リタイアとみなします。このゲームはあくまでも強制ではないのですから。・・・それから、彼女が嫌がることを行った場合、今後アンジェリークの視界に入る事ができない事を心しておくように。」
「「「「「「「「「御意。」」」」」」」」」

 

――――全員の参加が、決定したようだ。

 



つづく