我らが女王陛下、アンジェリークが脱走した。
―――夏だから。うふ。―――

という、なんだかよくわからない書き置きを残して。

「大変です!陛下が脱走しました!!」
 補佐官ロザリアが午後の優雅なティータイムを過ごしていた最中に、その知らせは入ってきた。
 そしてその5分後、緊急会議が開かれたのである。

「陛下が脱走された。」
 ジュリアスのひと言に残りの面々は、
「いつもの事じゃん。」
「また、ですか?」
「わざわざ会議を開くほどのことでは・・・。」
 と、素っ気ないことこの上ない。
「・・・貴方がたはの目は節穴ですの?それとも馬鹿ですの?ただの脱走ならこんな事はいたしませんわ。」
 珍しくロザリアがきついお言葉。馬鹿扱いされた面々はむっとしたものの、ロザリアに逆らう勇気(人はそれを無謀という)のある人間は皆無、だったのだが・・・。
「君がそんな事を言うなんて、俺、なんか嫌だな。」
 おおっと、ランディ、言ってしまった・・・。
「でしたら有能なところを見せていただけませんこと?」
「俺はいつだって精一杯やってるよ。」
「では何故陛下が脱走なさるのがわかりませんでしたの?」
「君だってわからなかったじゃないか。」
「補佐官の目の届かないところをケアするのが守護聖ではなくって?」
「だからって・・・。」
 なんと無謀な・・・。ランディがロザリア相手に喧嘩をうってます。

「・・・どーすんだよ。俺、責任もたねーぞ。」
「アタシだって悪いけど・・・。」
「わたくしは争い事は好みません・・・。」
 ゼフェル、オリヴィエ、リュミエールがひそひそと今後の展開について相談している。
「ランディ、勇気と無謀を間違えるの図、かな・・・。」
「上手いこといいますねー、マルセル。」
「・・・感心しているわけにはいかぬであろう?何とかせぬか。」
「恐れながらジュリアス様、補佐官殿に事を言える輩がいるとは思えないのですが・・・。」
「む・・・。」
  マルセル、ルヴァ、ジュリアス、オスカーもその話に加わった。
「しかしこのまま、という訳にもいかぬ・・・。」
 クラヴィスのひと言に、一同考え込む。

「こうなりゃ奥の手、だな。」
「なんか名案でもあんの?オスカー。」
 オリヴィエの言葉にオスカーはしゃがみ込むと、白紙にサインペンでこう、書いた。
―――さっさと謝れ、ランディ―――
「「「「「おお〜。」」」」」
小さな声ながら、全員感動している。そう、さっさと謝るに限るのだ。
「で、これを掲げる。」
 ロザリアに分らないよう、その紙をランディに見せたオスカーだったが、

「何で俺が謝らなければいけないんですか!オスカー様!!」
 一体何のためにコッソリ書いたのか・・・。
 全員、頭を抱えた。
 恐ろしいほどの沈黙が流れる。誰も口を開こうとしない、というよりは開けない。
「・・・・・・・・・・・・・お前が悪いからだ、ランディ。」
 長い沈黙を破って、オスカーが呟いた。
「何でですか!!馬鹿扱いされたんですよ、俺たち!!納得できません!!」
 オスカーに食って掛かるランディ。他の面々はどう対処したらいいのか分からない。
「レディに不快な思いをさせた。紳士たるもの、いついかなる時においても、レディの心情を鑑みるのが当たり前だ。」
 そこまで言うとオスカーはつかつかとロザリアに歩み寄り、膝をついて、言った。
「美しく咲く青薔薇のように気高く、真っ白な百合のように上品な補佐官殿。そのご心痛も考えずに、無礼をはたらきました事をお許しください。」
 更に手の甲に、キス。
「哀れな我々にご慈愛いただけませんか・・・?」
  氷青の瞳に思いっきり見つめられ、
「・・・いいでしょう、今回は特別ですわ・・・。」
 さすがのロザリアも微かに頬を赤らめ、コホンとひとつせきをすると、もとのように椅子に腰掛けた。

「なんていうか、オスカーだねぇ・・・。」
「いろんな意味で、歴戦の覇者ですねぇ・・・。」
 オリヴィエとルヴァの呟きに、残りの面々は黙って頷いた。
「・・・・とにかくだ、陛下がどちらへ行かれたのか早急に探しだし、捕獲、いや、保護せねばならぬ。」  
  ジュリアスのひと言で一同、本題へ戻った。
 それにしても、捕獲って・・・。

 



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