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アンジェは、大変機嫌が悪かった。眉間にしわを寄せて、いつもはかわいい微笑をたたえる唇も、への字に結ばれている。表面上は変わりなく振舞っている(本人はそのつもり)のだが、すこぶる機嫌が悪いのである。
原因は愛する恋人、炎の守護聖オスカーとのことである。彼女と出会う前の彼は宇宙一のプレイボーイの名をほしいままにしている男だったが、アンジェと恋に落ちた後はきれいなものである。
では何故機嫌が悪いのか? それは彼が司っている力に関係している。そのサクリアの持つ特性上、彼は危険な任務につくことが多い。それも一度出張すると、長期にわたる事がほとんど、なのである。
つまり、オスカーの出張中、アンジェは独りで過ごすことになるのである。
更に時期が悪かった。突然の視察で、楽しみにしていたデートがキャンセルになった。もうすぐクリスマスがくる、とうきうきいそいそと準備をして待っていただけに、かなりのショックを受けた彼女だったが、オスカーの
、 「俺の誕生日には2人で祝おう。2人っきりで、な。」
という言葉を支えに健気にがんばっていた。その当日に。
入ってしまったのだ、アンジェの視察が・・・。
ぼこぼこ、ぼかすか、ばこばこ・・・。
「なんでよ、なんでよ、どうしてよおおおお!!」
ここはとある惑星のホテルの一室。そして彼女は何をしているかというと・・・。
枕を殴っている、のである。まさにタコ殴り。哀れ枕さんには、彼女の拳の跡が付いている。(もっとも、アンジェはそれほど腕力もないので、すぐ元に戻る)
「いつもいい子にしてるじゃないのおお!!」
今度はベッドに八つ当たり。
「お仕事だって、精一杯がんばってるわ。そりゃ、ロザリアみたいにっていう訳にはいかないけど・・・。でも、でも、こんなにがんばったのにいいいい!!!」
どうしてよおおおお、という雄叫びが部屋に広がる。知らない人が聞いていたら、と思うが、この際そんなことは置いといて。
「はあ・・・。」
窓におでこをくっつけて、溜め息をつく。もう、何度目なんだろう。
「今頃、オスカー様、何をしてるんだろう。・・・一緒に過ごしたかったなぁ・・・。」
そこまでいうと、アンジェの瞳から涙が零れ落ちた。
(いけない。泣いたりしちゃ、心配かけちゃう。)
そう思うのだが、一度堰を切ったものはそう簡単に止まってはくれなかった。
「うっ・・・ひっく、ひっく・・・。オスカーさまぁ・・・、会いたいよぉ・・・。寂しいよぉ・・・。うっく・・・。」
この夜、部屋の電気は消えることなく、彼女は一睡も出来ないまま、朝を迎えたのであった。
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