「ねえ、もう一週間だよ?・・・アンジェ、いつ帰ってくるの?」
「んなこと、俺が知るわけねぇじゃねーか。」
「・・・大丈夫なのかな?」
「だーかーらー!!俺が知るわけねぇっつーの!!」
 あれから一週間。アンジェリークがどういう具合なのか、親友であるゼフェルにも分からない。至高の天使も何も言わない。
「俺が言ってるのは、勿論アンジェも心配なんだけど。・・・オスカー様だよ。」
「・・・ランディ・・・?」
 マルセルが不思議そうに尋ねる。
「オスカー様だよ?大丈夫に決まってるじゃない。」
「そーとも言い切れねぇぜ。」
 どかっという音をたて、ゼフェルが地面に座った。自然とランディもマルセルもその隣に腰をおろす。
「あのおっさんは、俺らの想像以上にアイツを必要としてる。あいつが傍にいねぇと、おっさんのサクリアにもなんかしらの変化が出たっておかしくねぇ位にな。」
「あのさ、俺、今だから言うんだけど・・・。オスカー様、アンジェの様子がおかしいって、最後の戦いの前に、いきなり戻られたんだ。」
「はぁ・・・?」
 ランディは最終戦の前の出来事を話し始めた。話し終えると、ゼフェルもマルセルも大きくため息をついた。
「・・・だったら尚更じゃねーか。」
「だから俺、心配なんだ。オスカー様、俺たちには絶対弱いところを見せたりなさらないし・・・。」
「・・・ねぇ、アンジェのお見舞いとか、出来ないのかなぁ?」
 いきなりマルセルが言い出した。
「おめぇ・・・。」
「何言い出すんだ、マルセル。」
「だってアンジェの具合はゼフェルにも分からないし、オスカー様のことも心配だし、だったら直接アンジェに会ってさ、その様子をオスカー様に話したらいいと思うんだ。オスカー様は聖地の警護のお仕事があるからここをそんなに離れることは出来ないけど、僕たちならちょっと離れても問題ないと思うし。」
 マルセルはそこまで話すと、黙り込んだ。二人の反応が気になったからだ。
「お見舞いかぁ・・・。そうだよな、アンジェがどうか、気になるんなら、直接会うのが一番だよな。そうだよな!!俺もそう思う。」
「まあ、わるかねぇよな。」
 3人の意見が一致し、年少守護聖は自分たちの考えを伝えるため、女王宮へと向かったのである。


「止めておきなさい。」
 ロザリアはあっさりと却下した。
「どうしてですか!僕たちはただアンジェのことが心配なだけなんです!!」
「陛下。俺たち間違ったことは言ってないと思っています。どうして駄目なんですか?」
 納得できないマルセルとランディはロザリアに詰め寄った。
「私も心配です。」
「心配なんだったら、何で!?だから僕たちが・・・。」
「・・・あいつがよけーな気ぃ使って、戻んのが遅れるほうがヤバイっつー事か・・・。」
 ずっと黙っていたゼフェルが、呟いた。
「そうです。今のあの子に一番必要なのは、休息なの。身体を休めてじっくり静養することなの。それに、私たちが心配していることくらいあの子も分かってるわ。・・・そんな時あなたたちが会いに行ったら・・・?」
「自分の責務を認識し、よくよく休めぬであろう。」
 いつの間にいたのだろう、彼らの後ろに筆頭守護聖ジュリアスが立っていた。
「げっ、ジュリアス。」
「何がげっ、だ。そなたまた何かしたのではないのか?」
「何にもしてねーよ。少なくとも今回は。」
 少なくともゼフェルは今回に関しては何の責めも受けることはしていない。とはいえ、マルセルもランディも何もしていないのだが。
「そなた達の気持ちはよく分かるが・・・。」
「そうですねぇ・・・。手紙とかは、どうですかねぇ・・・。それなら彼女も気を使うこともないですし、入院生活というのは結構退屈なものですよー。気晴らしにもなるんじゃないですかねー。」
 いつの間にか入ってきていたルヴァの一言で、彼らの行動は決まった。


「オスカー、あんた手紙は書かないんだって?」
 炎の守護聖の執務室を訪れた彼の同僚、夢の守護聖はいきなり口を開いた。
 実はあの後お子様トリオは他の守護聖のところへ話をしに行ったのである。その場にいなかった残りの守護聖たちは、この提案に賛成し、それぞれ手紙を携えて女王のもとへ出向いたのである。この炎の守護聖を除いては。
「ああ。」
「何でよ。」
 オスカーはペンを走らせるのを止め、額にかかった髪を書き上げながらオリヴィエを見やった。
「・・・文字では伝わらない。伝えることが出来るとも思ってない。俺が欲しいのはお嬢ちゃんの返事じゃなくて、温もりだからな。」
「アンタねぇ・・・。まあ、そーいう理由ならとやかく言う必要もないしね。でも、アタシは出しとくわ。どうせ帰ってきたってあんたが独占しちゃうしね。今くらいしかアピールする機会がないしさ。」
 言いたいことだけ言ってしまったオリヴィエは、オスカーの返事も待たずにさっさとドアを開けて出て行ってしまった。
「全くあの極楽鳥が・・・。」
 そう言って苦笑したオスカーだったが、彼の心にあったわだかまりはいつしか溶けていた。
(そうだ、俺が望むのは・・・。)
 オスカーは、今は離れている最愛にして唯一の女性にそっと心の中で囁きかけた。

―――――愛してる――― と・・・。

 

まえに           つづく