「アンジェリーク様、聖地より届き物がございますが・・・。」
「え?・・・何かしら・・・。あ、ありがとう。」
 荷物を持って入ってきた管理人に礼を言い、アンジェリークは小包を受け取った。
「なんだろう・・・?あんまり重くないし。」
「お手紙のようでございますねぇ。」
 オスカーの館の世話係をしている初老のメイドが言った。アンジェリークが主星の病院へ行くことになった時、ロザリアは親友に心細い思いをさせまいと、アンジェリークがなついていたこのメイドを同行させてくれたのだ。
「手紙・・・?」
「さあ、肩を冷やしてはいけませんから、これをお掛けになって・・・。私は少し用事を思い出しましたので、席を外しますね。」
 たぶん用事というのは嘘だろう、とアンジェリークは思った。一人でゆっくり出来るように気をつかってくれたのだろうとすぐに分かったが、あえて口にはせず『用が終わったら帰ってきてね』とだけ伝えると、メイドは笑いながら去っていった。
「あれ、手紙じゃないんだ。・・・何かしら、これ。あ、メモがある。『これを押せ』って。」
 ブツブツ言いながらもアンジェリークがボタンを押すと、謁見室に集まった守護聖と、女王ロザリアのホログラムが目の前に現れた。
「きゃーん、すっごーい。これ作ったのってやっぱりゼフェルよね・・・?」
 手を叩いて大喜びするアンジェリーク。

『いちいち手紙書くのもなんだし、こーいう形にすることになったぜ。つー訳で、製作者の俺が一番だ。』
 そう言ったのはアンジェリークの予想通り、鋼の守護聖だった。
『えーと、・・・・・・だああああ!!めんどくせー!!ちゃっちゃと怪我直して帰って来い。以上だ!!』
「うふふ・・・。ゼフェルらしい。」
『あ、次、僕マルセルです。えーっと、アンジェ、僕のところで苺がいっぱいできたんだよ。ジャム作ったから楽しみにしててね。・・・次、ランディね。』
 マルセルに背中を押された風の守護聖がつんのめりながら現れた。
『えーっと、俺、こういうの苦手で、なんて言ったらいいか・・・。俺のところの犬が新しい芸ができるようになったんだ。早く見せたいよ。・・・・うわっ!オリヴィエ様!!』
『・・・はーいはいはい。次、ワタシね。いい?アンジェ。いっくら怪我してるっていったってお肌の手入れは怠ったら駄目だからね?』
 彼らしいといえば彼らしい発言に、アンジェリークは大笑いしながらも、鏡を覗き込んだ。
「やーだ、オリヴィエったら。・・・でもお手入れはちゃんとしとこ。怒られちゃう。」
『次はわたくしですね。あなたのお帰りをお待ちしております。・・・リュミエールでした。』
 ハープを弾きながらの彼の言葉に彼女はくすくす笑ってしまった。
『じゃあ、私ですかねぇ?あー、あなたが帰ってきたら、とっておきのお茶菓子を用意しますねー。』
 ルヴァらしいといえばあまりに彼らしい発言に、後ろの守護聖達も大笑いしている。あのジュリアスでさえも笑いをかみ殺しているのが分かる。
『・・・早く帰れ。お前がいないと騒ぐ輩が多い。・・・眠れぬ。』
『クラヴィス!!そなたまた執務中に・・・!!』
『はーいはいはい、二人とも、これがなんだか分かってんの?』
 クラヴィスの言葉に思わず言い返したジュリアスを軽く諌めているオリヴィエ。いつもと同じ光景だった、が・・・。
「オスカー様は・・・?」
 アンジェリークにとって最も会いたい人がそこにはいない。
「・・・お仕事かな、やっぱり。オスカー様、お忙しいから・・・。」
 そんなアンジェリークの思いに気が付いたのか、ロザリアが画面に現れた。
『あんたのことだからオスカーのことが気になっているのでしょう?ごめんなさいね、ここには居るんだけど出ないって・・・。』
 そう言うと辛そうに女王は顔を伏せた。
「どうして・・・。」

 一番顔を見たかったのに・・・。

 

まえに             つづく