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次の日。
ゼフェルは出来上がった改造メカチュピ(命名、マルセル)を持って、早速オスカー邸を訪れた。
「よぉ。オスカー、いるか?」
ゼフェルの呼びかけに出てきたのは、もちろんアンジェリーク。前もってオスカーがいないことは分かっていたが、念の為、一応、である。以前、出払っていると思ったオスカーがいて、『俺のお嬢ちゃんに何の用だ?』と脅されたことがあるからである。
「はあーい。」
「これ、出来たしよぉ。持ってきてやったぜ。」
ゼフェルがメカチュピを差し出すと、アンジェリークは瞳を輝かせながら大事そうにそれを受け取った。
「わぁーい。早速明日使ってみようっと。ホントありがと、ゼフェル。」
その時、ゼフェルにある思惑が浮かんだのである。
「・・・と、いう訳でよぉ。あいつ明日アレ使うらしいぜ。」
ゼフェルが発表している。
「そんなこと、あたし達にはカンケー無いじゃん、一体何なのよ、ゼフェル?くだらない事だったら・・・。」
ぶっ飛ばすわよ、というのを言外に含むオリヴィエ。美を追求する彼にとっては、至上の喜び華麗なるバスタイム、を邪魔され、今の彼は超低気圧来襲、台風19号上陸状態である。
「くだらねぇことだと思うんだったら、ぶっとばしゃあ、いいじゃねぇか。けどよ、ここまで来てやったんだしよぉ、話しぐれぇ聞いてもいいんじゃねえの?」
ゼフェルの自信たっぷりの様子に、オリヴィエも何かを感じ取ったのだろう、椅子に座らせ、執事にワインを出すように指示する。
「へぇ、ワインじゃねぇか。それも・・・。」
「カティス秘蔵のやつだよ。とっておきなんだからね、高くつくよ。・・・ところでさっきの話の続きなんだけどさぁ・・・。」
オリヴィエがソファに横たわったまま話をしようとすると、ゼフェルはその耳元に近づき何かをささやいた。
こそこそ・・・ 。
話の途中から瞳が全開になったまま硬直していたオリヴィエだったが、やがて腹を抱えて笑い出した。いつもの姿からは想像できない光景に、ゼフェルは唖然とした
。
「アンタって、時々とんでもないこと思いつくよねぇ・・・。いいよ、その話、のった。あー、おっかしい。・・・陛下にもさぁ、この話し、していい?」
「ああ。」
軽く答えると、ワインを一気に飲み干して(いいのだろうか?この人、確か、未成年じゃ・・・)ゼフェルは帰っていった。
「さあて、久しぶりに面白くなりそう。・・・女王試験も終わったし、ちょうど退屈してたんだよねぇ・・・。」
お肌の手入れをしながらほくそえむ、オリヴィエさま。果たして、これから何が起ころうとしているのか・・・。
「・・・で、準備できた?」
「おうよ。このゼフェル様がしくじるはず、ねえじゃん。」
二人が陣取っているのは、もちろん女王執務室。
当然ながら、女王ロザリアもゼフェルが設置したモニターの前に陣取っている。ロザリアの後ろには、なぜかジュリアスとクラヴィスが控えている。
「なんで、おめぇらまでいんだよ?」
明らかに不満そうなゼフェルを見やりながら、クラヴィスが薄笑いを浮かべて言う。
「・・・私に隠し事は出来ぬと思うが・・・?」
そうでした。この御仁には、無敵の水晶球があったのでした。
一方ジュリアスは、
「陛下の盾である私が知らぬことがあってはならぬからな。」
などと言いながら、平然としている。
「・・・まあ、いいとして。ゼフェル、用意はいいよね?」
その場をとりなすようにオリヴィエが言うと、まだブツブツ言いながらもゼフェルはモニターに映像を映し出した 。
そこに映ったものを見て・・・。
全員、生唾ごっくん状態に陥ったのである。(ロザリアはさすがに生唾ごっくん、という訳にはいかなかったが。)
と言うのも、アンジェリークの寝姿がそこに映し出されていたからである。それも、ネグリジェ姿。スカートのすそは太ももの半分くらいまで上がっていて、柔らかそうな白い足が見えている。金色の髪はふわふわと白いシーツの上に広がり、うなじがかすかに見え隠れしている。更に・・・。
「う・・・ん・・・。」
とかすかに声を上げるとなんと、寝返りをしたのである 。
その瞬間・・・。
見えてしまった。・・・アンジェの下着・・・。
オフホワイトのパンティが・・・。
「うっ・・・。」
口元を抑えて出て行く、ジュリアス。おそらく鼻血、だろう。(万が一にもつわり、ということはありえない。出て行ったのがロザリアならまだしも・・・。)
そんなのでいいのか?首座の守護聖!!!
「ふっ・・・。」
対照的に、画面から目をそらさないのが闇様。しかし、彼も鼻の下を赤いものが流れている。拭けよ、クラヴィス。
「へぇ・・・。かわいい下着じゃなぁい。それにしても白、ってのはアンジェに似合うねぇ・・・。ピンクとかブルーも清楚なカンジがして、いいけどさぁ・・・。」
下着を見て、それを評論するのはさすが、美の守護聖。(夢の守護聖だったっけ?)
「あの子は何を着ても愛らしいですものねぇ・・・。」
感慨深そうに頷く女王様。そんなことで感動すなあああああ!!!
「今日はあいつ、白なのか?いつもは違うやつだし・・・。おニューか・・・。」
「「「なんですって?!」」」
ゼフェルの爆弾発言に、その場にいた3人が固まった。
「何故、貴方がそんなことを知っているのです?ゼフェル。」
乱入してきたのは、リュミエール様。大変です、目が血走っちゃってます。更にあのリュミ竜巻が、スタンバイオッケーしてます。ゼフェルの運命や、いかに・・・。
「・・・ごっ・・・誤解すんなよ!あいつ、なんでかしんねーけど、自分の下着全部俺に見せんだよ!『こういうのって、男の人、好きかなぁ?』とかって!おとこ、っつったって、あいつの対象はオスカーなんだしよ、本人に聞きゃいいじゃねえか、っつったら、あいつ『恥ずかしいですぅ。』って言うしよ、チェックしてやっただけだって!!」
後ずさりしながらも、必死で弁明するゼフェルに、竜巻はなりを潜めた。どうやら、リュミ様が納得してくれたようで、ほっとするゼフェル君。
「あ、アンジェが起きたみたいですわ。」
そこへ天の助け、ロザリアの起死回生の一言。全員(もちろん、こんなことを守護聖たちが見逃すはず、無いでしょー。覗いていました、皆さん。)の意識がモニターに移り、最早ゼフェルのことなどこれっぽっちも無い。
一方、覗かれているとは露ほども知らないアンジェちゃんは、寝起きのまま目をこしこししている。そこへ、真打登場。そう、愛しい恋人(アンジェにとっては)、歩く下半身男(その他の方々)、オスカーである。
「おはよう、俺のかわいいお嬢ちゃん。」
言いながら、朝からのーこーなキス。たぶん舌なんか絡めてるでしょう。アンジェリークから力が抜けていくのが、手に取るように分かる、分かる。
「ん・・・。やだ・・・オスカーさまったら・・・。」
恥じらいながら、オスカーの腕の中でいやいやをするアンジェリーク。
そんなアツアツぶりをモニターで見ながら、女王執務室は零下の世界に突入し始めていた 。
なにせ、書類を運んできた研究員が、あまりの寒さに、この場でソッコー風邪を引いたのだから 。
そんな状況にもかかわらず、皆さんモニターから一切目を離そうとしない。
「「朝から、この、節操なしが・・・。」」 悔しそうに言い放つ、麗人2人組。
「うらやましいですねぇ・・・。」
「・・・全くだ・・・。」
お茶を飲みながらしみじみ語る年寄り2人組。
「朝から何を考えておるのだ!?オスカーは!!」
「落ち着いてください、ジュリアス様!あの2人は新婚さんなんですから!」
怒り狂う首座様をなだめすかす最年少。やるじゃん、マルセル。
「オスカーもいい加減にすればよろしいのに・・・。」
「でも俺、オスカー様の気持ちわかるよ。・・・俺だって毎朝あんなことしたいし。」
「・・・(ぽっ)。」
こっちでも朝から甘い雰囲気を漂わせ始めている2人。
「・・・勝手にやってろ。」
半ば呆れる残りの1名(さて、誰でしょう?)。
しかしまあ、よくも全員ぶちぎれなかったのは、まさに奇跡に等しい出来事だった。と、いうよりも、それぞれ思考回路が別のところに至っていたためにおとなしかっただけで。この後、皆さんの、オスカーの扱いがいっそう冷淡になったのは仕方が無いとしても。
「どうしたんだ?ん?・・・こんなにかわいい姿の君を、朝から眺められるなんて、日ごろの行いがいいからか・・・。」
どうやら始まったようです、オスカー愛の劇場(笑)。
「日ごろの行いだと・・・(怒)。」
眉をひそめて呟いたのはジュリアス。後ろには、初登場、ジュリ様台風が控えています。
「ジュリアス様もリュミエール様みたいな技、持ってらしたんだね。」
感心しながらマルセルが言う。感心すべきことではないと思うが・・・。
「オスカー様・・・。」
恥ずかしそうにオスカーに背を向けたアンジェリークは、窓辺に駆け寄り、カーテンにしがみ付く。これが合図となっていて、ゼフェルは録音機能をスタートさせる。
「スタート、っと・・・。さて、ここはよしとして・・・。」
ゼフェルは独り言をいいながら、コンピューターのスイッチを押した。
ういいいいいんんん・・・。
機会音と共に上から別のモニターが降りてきた。
「ゼフェル、これ、なんだい?」
尋ねたのはランディだが、全員同じことを思っていたらしい。みな、こくこくと頷いている。
「聞いて驚くなよ・・・。これはなぁ、聖地全体をチェックできるモニターだ。」
「そんなことで驚いたりはしませんが・・・??」
突っ込んだのはルヴァ。彼は自分が教育係をしているだけあって、教え子の能力は的確に把握している(らしい)。
「あのなぁ・・・、これ、俺、一晩で完成させたんだぜ?」
「そのようなこと、貴方でしたら容易いことだと思いますが・・・?」
言い返したのはリュミエール。一見、褒めているように聞こえるが、実はかなりイラついているようだ。その証拠に、リュミ竜巻が起こりかけている。
「落ち着きなって・・・。で、そんなもの作っちゃったからには、なんか理由があるんだよね?ゼフェル?」
リュミエールをたしなめつつ、話の続きを促すオリヴィエ。イヤー、お・と・な、ですねぇ。
「そうですわ。わたくしも気になっていますし。」
ロザリアにせっつかれるようにしたゼフェルは、コホンと言うと、とんでもない?計画をみんなに打ち明け始めた。
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