Presents of jealousy



「ルヴァさまってもてるんですね・・・」

アンジェリークの表情がにわかに曇る。
机上に置かれたプレゼントの包み。
有に10以上はあるだろうか。

「ゼフェルやマルセルたちも持ってきてくれたんですよ」

気休めのようにルヴァは言うけれど、もう何度となくこの執務室に入っていく女性達の姿を目にしていた。
公認の中の恋人がいる男性に贈り物。
宣戦布告とも取れるその行動、そして、それを受け取ってしまった恋人の反応。
これは好意なのだから・・・。
心で囁く声は、燃えるような嫉妬の炎に焼き尽くされていく。
嫉妬、怒り、そして不安。
自分以外の女性からもプレゼントを受け取ったという彼の気持ち・・・。
幾百幾千、言葉を重ねても、唇を合わせても、消えない不安な気持ちを彼は理解しているのだろうか・・・。
そう思うと居たたまれなくて、恋人の執務室を後にした。
彼の誕生日だというのに・・・。


滝の前。
ぺたんと座り込んで、ポケットの中に入れていた包みを取り出した。
何にしたらいいのかと悩んだ挙句、日は押し迫り、とうとう前日になってしまった昨夜。
それでも手作りのものを渡したくて、クローゼットの置くからミシンを出してきて一生懸命作った。

ターバン―――

私以外の人に見せないでくださいという意味を込めて・・・。
でも、今になって冷静に考えてみると、それは独占欲に他ならず、自分がとても醜い人間のように思えて、深く溜息をつく。
机上に置かれたたくさんのプレゼント、美しい包み。
みんな、もっと素敵なものを思いついたに違いない。
あんなきれいな、大きな包みの中に置かれてしまっては、きっと自分のプレゼントなんて見劣りがしてしまう。
無意識にそれを避けていたのかもしれない、彼のせいにして・・・。

「こんなもの、渡せるわけが無い」

今更、他のプレゼントを用意する気にもなれない。
彼の執務室に帰る勇気もない。
本当は明るく笑って

「お誕生日おめでとうございます」

と言うはずだったのに・・・。
その言葉さえ唇から紡ぎだすこともできないで、あんなことを言ってしまって・・・。
ぼわっと辺りの風景が滲む。
勝手に出てきたのに、こんなところで一人で泣いてしまうなんて・・・。
唇ににじむ苦笑。
心を占める後悔。

ひとしきり反省したあと、冷たい滝の水で少し晴れた瞼を冷やした。
そのまま顔を洗う。
とりあえず戻って、お祝いを言わなければ・・・。
おめでたい日なのに、こんな風にしていてはいけない。
すべては自分ひとりの心の中の事だから。

「よしっ」

パンと頬を一度叩き、気合を入れて顔を上げる。
顔を拭こうと、ハンカチを探す。
ポケットに手を入れるより早く差し出された、ハンカチ。
見上げると、優しげに微笑む双眸があった。

「ルヴァさま・・・」

「突然出て行ったりするものだから、あちこち探してしまいましたよ、ここの水は気持ちいいでしょう?」

そう言うとルヴァも滝の水で顔を洗い始めた。
探していたという言葉通り、額に浮いていた汗をすっきりと流してした彼に、こんどは自分のポケットにあるハンカチを差し出す。
同じポケットに入れていた包みが落ちそうになり、慌てて奥へと押し込む。

「ありがとうございます」

なかなかうまく入らない。
そちらに気を取られている隙に、顔を拭き終わりハンカチを手のひらに置いたルヴァに両手首を捕まれてしまった。

「泣いていたのですか?」

ルヴァの指先がそっと頬を撫でる。
優しいその仕草に、また切なさが込み上げてくる。
せっかく、戻ってちゃんとお祝いを言おうと決意した矢先、不意の彼の登場に心が揺れた。
視線を地面に落とし、小さく首を横に振る。
あんなに意気込んで出て来たはずなのに、落ち着いてしまえば後悔ばかりが浮かんでいたから。

「どうして?」

言葉少ない問いかけ。
アンジェリークが答えるのを待っている。
どうして、あんなことを言ったのか?
そうして、部屋を出て行ってしまったのか?
どうして、ここで泣いていたのか?
どうして・・・。
ようやく落ち着かせたはずの心が波立つ。
答えてしまうと自分の中のどろどろした気持ちがを知られてしまう。
ルヴァにだけは知られたくない、持て余してしまったこの想いを・・・。

「プレゼントを受け取ってしまったことを怒っているのですか?そんなつもりではなかったのです。彼女たちはいつものお礼だといってくださったのです。あなたが気にするような事は何もないんですよ、でも、配慮が足りませんでしたね、申し訳ありません」

ルヴァが悪いことなんて一つもないのに。
ただ嫉妬して、プレゼントの内容にまで嫉妬して、勝手に出てきてしまっただけなのに・・・。
先に謝られてしまうと、何も言えなくなってしまう。
せっかくのお誕生日なのに、こんな風になってしまって・・・。
下を向いたまま首を横に振りつづけるアンジェリーク。
フッと溜息のような苦笑を漏らしたルヴァの指がアンジェリークの顎へと置かれる。
そのままそっと上を向かされ、視線が合う。
ぽろりと瞳から零れ落ちる涙。
そっと拭取ってくれる優しい指先。
ルヴァの指先を通り抜けて、胸の中に飛び込んだ。
しっかりとルヴァの首に回した腕。
ぎゅっと抱きつくとぎゅっと抱きしめ返してくれる腕の力。
こんなにも間近に感じることができたはずなのに・・・。

「・・・ごめんなさい、ルヴァさまはちっとも悪くないんです。ただ・・・嫉妬して、自分の気持ちが抑えられなくて、飛び出してしまったんです。本当にごめんなさい・・・」

ポンポンと宥めるように背中を叩くルヴァの手のひら。

「こんなにあなたのことが好きなのに?信じられませんでしたか?」

耳元に響く優しいトーン。
腕の中で、また首を横に振る。

「誰が何をくれようと、どんなに高価なものをもらったとしても、私が一番喜ぶ贈り物はただ一つ、あなたからのプレゼントだけなのですよ」

「ルヴァさま・・・」

ゆっくりと視線を上げる。
絡み合う視線、落ちてくる影、そして重なる唇。
何度も、何度も、確かめ合うように触れ合い、交し合う。
腰に回された腕、不自然に膨らんだポケットに気付いて、ルヴァが唇を離す。

「そのポケットに入っているものをいただけませんか?」

おずおずと差し出した小さな包み。

「開けてもいいですか?」

彼の手のひらの中、広がったターバン。
うれしそうな表情にこっくりと頷く。

「せっかくですから、あなたの手で着けてくださいませんか?」

そう言うと今着けているターバンをさらりと外し、アンジェリークの前、届くように跪き、ターバンを手渡した。
目の前に自分だけが見ることのできる彼の姿。
震える指先で、ターバンを巻く。
ルヴァは、巻き終わったアンジェリークの手の甲に唇を寄せた。

「ありがとうございます。こんなにうれしいプレゼントは初めてですよ」

勢いよく再び腕の中に飛び込んできた天使。
ようやく微笑んだ彼女はルヴァの耳元、囁くように言った。

「私以外の人の前では絶対に外さないでくださいね」

はにかんだ様子がとても愛しくて、先程よりも深くなる接吻。
言葉の代わり、重ねあう体温で誓った。

永遠―




masanorikoさまのサイト『pinebase』さまのルヴァさまお誕生日企画で
フリー配布されていた創作を誘拐してきました♪

masanorikoさまのお話はどれも素敵ですが
優しくて穏やかなルヴァさまにモエモエ〜〜。

こんなに素敵なお話をフリーで下さったmasanorikoさまに
感謝感謝です。