『sky,in the blue sky』





 彼の親友は時折、ふと空を眺めることが多くなった。そこに何かを探しているのか、あるいは何もないことを確かめているのか、みずから施した譜陣によって赤くそめられた眼差しには、どのような感情も乗せられてはいなかった。だから、一度聞いてみたことがあった。お前はそんなに必死になって、一体何を探しているんだ、と。
 案の定、こちらを振り向いた親友は何を言っているんですかと嫌そうに顔をしかめていた。ピオニーは答えを得られなかったかわりに同じように空を見上げて、見慣れたはずのこの青色が毒々しい赤紫に染め変えられた日々のことを思った。それから再びこの青色が戻ってきた日のことを思った。もう一度同じ色の空を取り戻すために、人知れず失われたおびただしい数のレプリカたちを思った。そうして最後に、あの子供の泣き出す寸前のような笑顔を思った。
 得られなかった答えを見つけた気がして、ピオニーは目を細めた。
 最後に会ったとき、子供は何かを吹っ切った顔をしていた。何かを根こそぎ切り捨てた顔をしていた。彼が落としていったものが何だったのか、それはもう考えるまでもなかった。そこへ追い込んだのは、ほかならぬ自分たちだから。
 そこまで考えてから、ふと視線を感じて隣を見る。眼鏡のつるを押さえて持ち上げた悪友は、唇の端だけ笑みの形に吊り上げてこちらを見つめていた。

「それで、陛下は何をお探しですか」
「多分、お前と同じものだ」



 この青い空の下で笑っていた、赤い髪の子供を捜している。
 いまでも、ずっと。


END
2006/06/02