◆ホタルを追う者◆
++第二話++
まだ日が落ちぬ夕暮れに
役所勤めの若い衆達が、何を思ったのか猪口所(酒飲所)へと足を運ぶ姿が見受けられた

猪口所…まだ夕暮れでそんなに日が暮れていないというのに
その中の照明は煌々と照らされ
所々に赤ら顔でほろ酔いな民達が役所の者達の目に飛び込んできた
「キタさん…本当にこんな所に陣さんがいるんですか?!」
まだ幾分も歳を食っていない青年が、この集団で一人浮いた存在のその人に向かって声をかけた…
その青年の様は、もう辛抱たまらん!!と言った様子だった
<キタ>さんと呼ばれた男…初老に近い、がしかしガッチリした体と
少し頭が眩しい容姿はこの場にはあまりにもハマリ過ぎていた
「いやぁ〜…しらん^^、がこういう所におるやろ!!あいつはそういうやっちゃ!!がっはっはっは***まぁ飲もうやないか^^」
青年達はキタの言葉に絶句状態
この人に自分達はついていって本当に大丈夫なのだろうかと
その顔には書き出されていた
いや…むしろこの人は自分達が探している人とは関係なく
自分がここに来たかっただけ?!という不安感も漂わせていた
「キタさん…しかし我々はまだ職務中で…」
少しの抵抗
「なんや?えらいお堅いやっちゃなぁ???」
見事に打破
「そんな奴はワシんとこにゃ付いて来れへんぞ!!ええから!ええから^^陣みたいに首無くしたりさせへんさかい」
そう言いながら大衆が掛けられる席へと一人先に付く
何とも触れたくない話題を満面の笑みでこの男はケロッと言ってのける
もうこの人に付いて行くしかないのだ…
と覚悟した青年達も後へと続く
そんな役人達のやり取り…しばらくすると
ヌッと背後に人が立つ気配がした

ペチッ!!!!
キタのテカっている(確かに叩きたくはなるが誰も出来ない)頭のテッペンを何者かが平手打ち
酒はこれから飲む所なのだが
もう既に酔っ払ったかの様にキタはニヤニヤ笑っている…自らの頭を叩かれたというのに…
「ぬあぁぁ…キタのおやじよぉ…なんか頭ベトッてるぞ!!ちょくちょく拭けや><前から言ってるだろ!」
着物の裾で叩いた手を拭き拭きしながら派手な赤いサングラスを掛けた少し肌の焼けた男がそこには立っていた
その男が目に入った時の青年達と言ったら……
彼らの口々から「陣内さんだぁ〜」との声
憧れの目ともなんとも言えない表情ばかりが並んでいた
「抜かすなや!!お前を探してわざわざこんな所まで来たッたんやぞ?どうや?嬉しいやろ^^」
「よく言うぜ;;」 賑やかな声が響き渡った

「しかし…いいのかキタさんよぉ…いくらなんでも今こんなとこでサボってたら俺みたいになるかもよ?」
クイックイッと酒を引っ掛けながら
青年達の憧れの的…陣内と言われた男とキタは話を組み交わしていた
それをただただ見つめるだけの青年達だったが
陣内の「サボってたら」の言葉には反応が大きかった
「お前も聞いとったやろ?陣みたいに首なくしたりさせへんってな^^」
「またまた;;よく言うよ…まぁあんたなら出来る事ではあるけどな」
グッと最後の一煽りすると
店の奥へ向かってもう一本のゼスチャーをして注文をとる
次の酒が運ばれるまで…まだ彼らの話は散る事はなかった

「今日のキタさんの任務地域はここなのか?」
スルメイカを口の端で噛みながらモゴッと話す
「あぁぁ…」
そう言ってフゥ〜っと深いため息をついたキタ
それを見て陣内はスルメを無くして、取り出したタバコに火を点ける
キタは外の日が大分落ちた事を確認するとまた深いため息をもらした

「お前らよ…ワシより先に回っててくれんかの、ワシはもうちっと陣と話したいんや…頼んだで」
青年達は渋々と言った感じで店を出ようと支度をして立ち上がりゾロゾロと外を目指す…と
「あぁぁぁ!!!おいおい;;お前ら自分の分は払っとけよ!!!」
キタの釘打ち…
さらに青年達は渋々と懐の銭を探った

「くっ…相変わらずだな^^キタさんのチームは円満だ」
くっくっと笑い堪えたようにそれでも笑っている陣内
青年達の去り際の恨めしそうな顔が笑いを誘った
きっとキタの分も払わされたに違いない
「なぁ陣内よぉ…正直お前はどう思う?」
真剣身を帯びたキタの言葉に笑いは途絶えた
「正直」という言葉に陣内は考えを巡らせてる様子
「何を聞きたいのでしょうか?キタ先生?」
少し雰囲気を和ませようと考えたのかちょっとおちゃらけては見せた陣内ではあったが
キタはそれにちっとも乗ってこなかった
「ほんまの所、お前の考えを聞きたいんや;;…今までやって…俺はお前がおったからここまで」
「はいはい!!オッサンの愚痴はよくないよ?…俺はただのプー太郎だぜ?」
くすっと少し表情を崩すキタ
今度は陣内が表情を変えた…
「正直俺は…ホタルの味方だね…」
その言葉にキタは困惑の色を出さずにはいられなかった…
そこへ最後の酒が一本運ばれてきた


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