◆降って来た紅い「ホタル」◆
++第四話++
京に毎夜迫り来る商人殺し……
今夜も例外はなく「ホタル」は京の闇を舞う

下町の裏の裏とも言えば良いか…路地の影
そこに一つの大きな影と小さな影が折り重なるように
一つの影となっている
その一つになった影は先ほど受けた衝撃からピクリとも動く事はなく
しばらくその場で静止した状態だった
そのうち…上に折り重なっていた小さい方の影が
ユックリと体勢を整えつつあった
「ぃ…痛ったたたたた;;」
ボゥっとする意識の中そんな言葉を発しながら
やっと状態を起こした
彼は赤と黒…そして緑の帯を巻く、そんな派手な格好をした少年
まだ朦朧とする表情を浮かべて
天上を仰ぐ
眩しく光る月が目に入り目を細める…と
ハッとした…
今自分が置かれている状況と…今感じる嫌な気配に


小さな影の意識が戻ってすぐ…その下敷きにされていた大きな影も
意識を戻した様だった
男は顎に少しのヒゲを蓄え、夜の闇の中だというのに派手なサングラスをかけている
少年と同様…突然の出来事に頭を整理したいと思う表情を浮べていた
が、男はそれより今目の前にある状況に耽美な思いを走らせずにはいられない様子だった
今…彼は自らの腹の上に艶かしい程の肌を惜しげもなく曝け出した
少女(?)の重みを感じていたから…
といっても混乱が醒めるともちろんこの状況も理解出来てくる…
たとえば
自分の腹の上にいるのは少女ではなく
確かに肌は少女のそれと同じだとしても…紛れもなく少年だという事に
しかしこの男にはそういう節操というのは無いらしく
どちらでもいいという感じだった
ただそこに必要なのは
自分が探していた「ホタル」であるという事実があれば
この男にはなんでもよかったのだ
混乱も頭の整理もどうにか付いたらしく
まず彼が感じたのは
目の前の少年の無防備さだった…
少年はこの状況にも関わらずボゥとした表情で、そう
今は天上を見上げている
男は目を細めてそれを見つめた
そして次に男の標的になったのは
少年の滑らかな肌…自分の腹を跨いでいるその足になった


男の行動はどういう意図があってのものか、理解は出来ないが
その行為を楽しむという表情にも読み取れる…また何かを探るかの様にも見えた
まず男はその白く光を反射する如く張った肌に手を這わせる…
流石に少年も男のその謎の行為に我を取り戻したようだ
「ちょっ?!いぃぃ??!!ヒ…ヒゲヤロー!!なにすんだよ!!!」
突然の男の変態行動に少年は膝をグッと前に押し出して相手の顔をグリッっと押さえ付ける
男と言うとそんな少年の抵抗おも楽しんでいるようだ
押し付けられた膝をヌルンと舐めてやる…
少年の顔が見る見る赤くなる
がそれは恥ずかしいとかそんな可愛いものではなく
馬鹿にされたと言う屈辱感と怒りが少年に注がれたのだ
こんな事を見知らぬ人にされて…というより
この場この状況、自分の立場…すべてを含めて少年には不快以外の何も感じる事がある訳がない
それから少年と男の奇妙な乳繰り合い(?)はしばし殴り嬲られ続いていく
「どうだ?観念したか^^」
男はニヤニヤしながら息を切らしている少年に向かってそう言葉を投げた
「ハァ…はぁ;;何なんだよあんた!!もうオレにさわんなっ!!!><。!!!」
半ベソまでかいてしまっている少年…
この男は一体何をしていたのだろう...
少年はムックと立ち上がると男を睨み付ける
「まぁまぁまぁ…そんな可愛い顔しなさんなって」
男も立ち上がると少年の前に立ち塞がりそう言ってやる
この男の言葉は少年を怒りに向けるばかりだった

二人の不思議な時間は
男には予想していた…少年には思いも寄らぬ来客で終わりを迎える
暗闇で男同士…
こんな所でイチャイチャ(端から見ればその様に見えない事もない…)していて目立たない事などないだろう
もちろんそれは京天殿でも同じ事…
「ホタル」が出たと大騒ぎをして
さらに取り逃がしたとあって、妬けで犯人を所構わず当たっている役人…
二人は丁度通りがかったそれに目をつけられてしまう…
「おい!!お前!!こんな夜中にこんな所で何やってるんだ?!」
どうやら役人には少年は男の影になって気づかないようだ
「こら!!何をしていると聞いているんだ!!」

少年は役人の声が耳に入るなり身を屈めすぐに飛び出せる体勢へと整えていた
が…それを男は腕を掴んで阻止する
その時の男は本来の真剣な表情で少年は少し驚いた…
「ホタル…だろ?」
少年の目を真っ直ぐに見つめて男はそう問いかける
後ろでは役人が苛立ちをあらわにして今まさに迫って来そうなほどだ
少年は男のその顔から目をそむける事がなぜか出来なかった
もう一度男が口をつく…
「ホタル」
呟くと男は少年の頬へ顔を近づけ少し触れる位で何かをささやいた
と…スッと少年を囲う様に腕を少年の後ろに回し抱き寄せる
同時に、痺れを切らした役人が男の肩へ手をかけようと近づいた……まさにその時
男の体は宙に舞った
正しくは想像も出来ない跳力でジャンプをしたのだ
その手にはさき程の少年を抱いたまま…
宙に舞った体は見事に近くの屋根の上へと到達した
それに呆気に取られてしまっていた役人は我に返ると笛を取り出しこう言った
「ホタルがでたぞ!!!!」


第五話へ