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辺りはまだ真っ暗です。 ”井上寿司”と書かれた車が、晴海通りを行きます。 晴海通りを南東に走ると築地場外市場商店街が見えてきました。 そこを右に曲がると新大橋通りになります。 朝5時から正午まで開くお店が、ずらっと並んでいます。 井上寿司の主人が運転する車の助手席には、 トロと青ちゃんがすやすやと眠っていました。 『おぉい!着いたゾぉ!』 駐車場に車を止めた主人は二人を起こします。 でも、トロと青ちゃんはまだ夢の中です。 『…ラーメン伸びちまうぞ!』 すると、ふたりは、 『はニャ!?それはイヤニャ!』 『早く食べなきゃ!』 目を覚ましました。 待ちに待ったラーメンにありつこうと、 主人の仕入れついでに、よく知っているラーメン屋へ食べに来ました。
駐車場から出ると、動き出したばかりの信号が、黄色に点滅しています。 『トロ知ってるニャ!赤はおどる!黄ははしゃぐ!青は回るニャ!! これが人間のルールなのニャ!』 『ちがうちがう。赤は止まれ!青は渡れ!黄は…あれ?なんだっけなぁ?』 『黄は渡っちゃダメ!キケン!ってことよ』 ガーン!!! 『え?え?そうなのニャ!?…人間のルールって難しいニャ〜』 トロの情報網はケタはずれですが、間違った情報も入るようです。
『おぅ!若旦那ひさしぶりだなぁ!』 『おお!井上のダンナ!!…と、奥さんに…それが云ってたネコちゃんかい?』 『わりぃな!ネコ連れて入れる店が思い当たらなくてよ』 『いいよいいよ!ダンナの頼みとあっちゃあ、聞かないわけないですぜ!』 ラーメン屋の主人と井上寿司の主人は仲良しさんです。 商店街を入って直ぐに、トロは青ちゃんに抱きかかえられました。 『トロ歩けるニャ!』 『ん!でも、ここはネコはお断り!っていうお店ばかりなの…ゴメンね』 主人と二人のときもありました。 『やっぱりネコだといっしょに入れないんだニャ…』 『大丈夫!ご主人さんがちゃーんと断ってくれてるから』
トロはネコだから、 ご主人さんや、青ちゃんと いつもいっしょにいれないのニャ・・・
『特製塩ラーメン一丁あがりぃ!』 あっつあつの湯気が、おいしいニオイと共に、ラーメンからもくもくと浮かんでいます。 太麺で、ボリュームたっぷりのチャーシューが入った”特製塩ラーメン”に舌鼓を打ちました。 『塩ラーメンなのにチャーシューが乗ってる!!』 『チャーシューなのニャ!!』 トロも、青ちゃんも、大喜びです。 ご主人さんは割り箸を口で挟み、2本に割りました。 『ここのチャーシューは、すげぇボリュームだからなぁ〜』 『ん〜!おいしいね!!』 『ニャ!青ちゃんとご主人さんとで一緒にたべる”塩ラーメン”は、世界で一番おいしいのニャ!』 『そぉかそぉか!!』 ご主人さんは、トロの”ご主人さんと”の言葉にゴキゲンです。
はふはふ! ゴクゴクゴク… ぷは〜っ! ラーメンを食べる音はシアワセの音なのニャ!
ラーメン屋の若旦那はトロのラーメン皿に卵を入れました。 『嬉しいこといってくれるねぇ!』 若旦那はトロにサ−ビスしてくれました。 『よかったねぇ!』 『はいニャ!』 『…いいなぁ〜』 主人は近頃、トロを羨ましいと思うことが多くなりました。
商店街を出て、トロと青ちゃんは駐車場に向かいました。 『おひさまが”おはよう”っていってるね』 『”おやすみ”じゃないのニャ!?トロ、もう、ねむねむニャ〜』 一日はまだ始まったばかりです。
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