井上寿司とトロの日記

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桜が散り、木々が青々としている4月の終わり

川にはメダカが群れをなして泳いでいます。

川辺に座り、足をジャブジャブしているのは、井上寿司の主人とネコのトロです。

ぽかぽかの陽気に連れられて、川原へお散歩に来ました。

しかし、その陽気とは裏腹に、主人の表情は曇っているようです。

 

『パパとママ…お空の上からトロを見てるのニャ?』


トロは目をまん丸にして主人に訊きました。

主人は言葉に詰まり、視線を反らします。

『どうしてトロと会ってくれないのかニャ…?』

『えっ!?そりゃぁ…』

主人は目玉をキョロキョロさせ、空を見上げました。

『なんだぁ…ホラ!トロがいい子にしてたから、安心して…空の上にいったんだぁ〜…』

あの一件以来、トロの涙を見たくなかった主人は、

出来ることなら、話したくはなかったことでした。

でも、トロのことを考えて、話さなければいけないことでした。


『トロは会いたかったニャ…』

泣きそうなトロを見て慌てた主人は、即座に口を開きました。

『空見上げたら、いつでも見てる!いつも、どこにいても、トロを見守ってるさぁ!!』

早口な言葉でトロに言い聞かせようとしました。

(ニャ!?…お空…いつでも…どこ…みまもって…はニャニャ!!)

『うニャ〜!頭がグルグルしてきちゃったニャ!』

『おい!トロ!?』

トロは、後ろに倒れそうになり、主人が手を添えようとしました。

『ニャニャ…大丈夫ニャ…!』

トロは草むらに手をつき、立ち上がりました。

『…お空の下で、バタンキューってなったら、パパとママが心配するニャ!』

トロは川辺に立って、空を見上げます。

隣にいた主人は、トロを見ました。

川面の光が反射して、キラキラしています。

『……あぁ、そうだなぁ…』

トロが強くなっているのに主人は気付きました。


『トロは泣かないニャ!』

トロは、じっと空を見上げています。


もう、小さかった頃のトロではありません。

トロがこんなに大きく見えたのは初めてでした。

成長したトロを見て、主人は少し寂しくなりました。

『あぁ、そうだなぁ…!』

主人も空を見上げました。

 

お空の上にはパパとママがいる

寂しくなんかないニャ!

いつでも…

どこでも…

トロといっしょニャ…

 

トロが井上寿司に来て、

もうすぐ1年が経とうとしています。

 

 

 

 読んで下さってありがとニャ