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いつものあの足音が、もう聞こえてきません。 鳥の声と木々の羽音だけが、遥か遠くに聞こえます。 ふたりの声が虚しく響きました。
『トロちゃん…行っちゃったね…』 『…行っちまったなぁ…』 井上寿司の前で、ヒゲオヤジの主人と、青いエプロンを着けた青ちゃんが 立ち尽くしています。 トロが来てから、この”井上寿司”には、いろんなことがありました。 『見つけたときは、こぉ〜んなにちいせぇー…こねこだったのに、よ…』 主人は涙を見せました。 『ホント…すげぇー…ネコだったなぁ…』
『ネコのままここにいると・・・ ご主人さんと青ちゃんに迷惑がかかちゃうから・・・ だから・・・トロ… 人間になる方法をさがしに行くニャ・・・ ご主人さんや青ちゃんと離れるのはヤダけど・・・迷惑かけたくないから・・・ 大好きだから・・・ …… でも、でもニャ! 人間になれる方法が見つかったらもどってくるニャ! また井上寿司にもどってくるニャ!! ヤクソクするニャ!!!』
お別れツライけど… このままじゃ・・・ご主人さんや青ちゃんと、いつもいっしょにいれないから・・・ 人間になる方法見つかったら… …きっと また会えるニャ!
離れていても、ご主人さんと青ちゃんとトロは、どこでもいっしょニャ…
トロはこれから長い旅に出ます。 ポカポカの太陽も、 ふわふわの雲も、 ポタポタの雨も、 サクサクの雪も、 そして 大きな大きな空も、 ずっといっしょに旅をします。 井上寿司の思い出を、 いっぱい、 いっぱい持って、 トロは旅立ちました。
The story was written by
kitaroh. |