トロとゆかいな仲間たち

−7−

『ピエールからビデオもらっちゃった!これでいつでもワイドショーがみれるのニャ〜!!』


湿った暖かな風が吹く、5月の終わり。

タンスにテレビ、冷蔵庫ぐらいしかない、殺風景な六畳一間の部屋で

トロは暮らし始めました。

『…はニャ?』

ビデオとテレビを繋げようとしているようですが…。

『ビデオとテレビのつなぎ方がわかんニャい…赤いコードと、青いコード…どっちがどっち〜!?』

 

トロは部屋から飛び出して、廊下にある電話でピエールにかけました。

『ピエールにもよく分かんないわン!』

『ガーン!!困るのニャ!ワイドショー見れないニャ!!』

『ワイドショーが大切なのね…わかったわン!そこでじっとしてて!!』

『じっと?』

『動いちゃダメよ!ビデオが爆発するかもしれないわン!!』

ガーン!!!

トロは受話器を落としそうになりました。

『バクハツ!?バクハツ!?』

『すぐ行くから!そのままで!』

『は・はやく来てニャ〜〜!!』

プッ…ツーツーツー

トロは受話器を持ったまま、固まっていました。

ドックンドックンドックン…

まだかニャ?まだかニャ?

アブラ汗がダラダラ出てきます。

バクハツ?バクハツ?

バクハツって…?ドカーン…

バーンッ!!!

うぎゃあーーーーーーーーッ!!!

トロは受話器を握ったまま、卒倒しました。


『あらヤダ!ホンキにしちゃったのね!ナイーブなんだから!』

『ここの戸は、たてつけが悪いロボ!今度スズキが修理してやろう…?』

ビニールの袋を持ったピエールとスズキがやってきました。

トロは廊下に泡を吹いて倒れています。

スズキは、トロをまじまじと見ました。

『泡を吹いた生き物を見るのは初めてだロボ〜!』

スズキはグィングィン頭を回します。

トロはその音で気が付きました。

『…あれ?スズキなのニャ!』

『もう平気?ちょうどスズキといっしょにいたから連れて来たわン!』

ピエールはトロをおこしました。スズキは思い出したように、トロにたずねました。

『ビデオはどこなのだロボ?』

『あのふすまの向こうなのニャ…でも!でも!バクハツするニャ!!』

スズキは部屋へ入っていきました。

『あぶないニャ〜!』


ピエールは受話器を電話に戻しながら、ほくそ笑みました。

『冗談だったのに…お詫びにコレあげるわン!』

ピエールはもっていたビニール袋をトロに手渡しました。

『すごくいいニオイがするニャ!』

『パパとママからみかんが大量に送られてきたの。

 風邪ひかないようにみかん食べなさいって…ちょうど金欠だったから、ありがたかったわン。

 …でも!

 カビが生えやすくて、季節はずれなところがナンセンスだったわン…!』

ピエールは苦笑いしていますが、トロは嬉しいようです。

『ありがとニャ!ピエールからいろんなモノもらっちゃうのニャ〜』

『テレビデオなのにビデオデッキ送ってきてくれちゃって、困ってたの!

 トロが持ってなくて助かったわン!』


『繋がったロボ〜!』

ふすまの向こうから、スズキが声をかけました。

『ワイドショーがうつせるニャ!?』

廊下にいたトロとピエールは部屋に入りました。

スズキは部屋にあった新聞でワイドショーの時間を調べています。

『これで予約もしたロボ!』

『ありがとニャ!!』

『ではでは!』

『え!?もう行っちゃうのニャ!?』

スズキは颯爽と帰っていきました。

『スズキ…トロのこと、キライなのかニャ?』

トロはあまりスズキと話していません。

いつも一番に帰ってしまいます。

 

ピエールは部屋を見渡しながらいいました。

『みかんが腐らないうちに博士に届けるっていってたわン。トロがキライなワケじゃないわン!』

ピエールの目に風呂敷包みが入りました。

『これ持って、旅してたのね…あら、重い…!』

『ニャニャ!トロの宝物…!!』

風呂敷からごろん、とだるまの置き物が畳の上に転がりました。

『宝物!ステキだわ〜ン!…何か書いてあるわン?』

『え?』

トロがだるまを拾い上げました。

だるまの底に

「トロへ。こまったら、コレをあけろ。」

と書かれた紙が貼り付けられていました。

『ご主人さんの字ニャ…!』

『お世話になったお寿司屋さんの?』

トロは爪を使って紙をキレイに剥がしました。

すると中から、井上寿司の住所が書かれた紙と、封筒に入ったお金が出てきました。

『…ニャニャ…!』

『いい人に育ててもらったのね!』

トロは井上寿司での出来事を思い出しました。

『…う…わーん!ご主人さんに会いたいニャ〜!!青ちゃんに会いたいニャ〜!!』

トロが泣き出しました。

ピエールには、トロのそんな気持ちがわかります。

『…あ!そうだわン!これで、ご主人さんにお手紙かけるわン!』

トロはここに来てから一度も連絡していません。

『ピエールのパパとママなんて毎日電話して来るんだもん!

 ご主人さんだって、きっと心配してるわン!』

『そ…そうかニャ?』

『手紙書いたら、ご主人さん喜ぶわン!』

ヒゲオヤジの主人の喜んだ顔が目に浮かびました。

『手紙かくニャ!トロは元気です!って、手紙かくニャ〜!!』

 

トロはクレヨンを使って井上寿司宛に手紙を書きました。


人間になる方法を早く見つけて、ご主人さんと青ちゃんに会いに行くニャ!

トロは心に強く思いました。