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アジサイ☆Hydrangea☆ 花コトバは・・・「あなたは冷たい」 まるで、6月の雨のよう・・・ まるで、ハイドランジア☆レイン・・・
『そんなに急がなくてもいいのに…マイクは逃げなくてよ?』 『くぁーっ!これだからシロートは!』 『うふふ♪カラオケパーティ♪レッツソング!ねン!』 下町に、雨が降り出しました。 ジュンとピエールは傘も差さず、小雨の中を猛ダッシュでカラオケ屋に向かっています。
千本格子にのれんというたたずまいの骨董品屋にも雨が降ってきました。 店番をしているリッキーは、雨の音に誘われ外に出てきました。 『…何かオラをひきつけてやまない模様が…地面に…!!』 道端に出来たばかりの水溜りを見つめます。 リッキーはおもいっきって水溜りへ飛び込みました。 『…ハァ〜ァ!落ち着くダスな〜…』 空を見上げると灰色の空が広がっています。 『本降りになってきたダスね…もうそろそろ、梅雨入りダスかな?』 リッキーの大好きな季節がやって来ようとしています。
雨の音と共にバシャバシャと道を駆ける音が聞こえてきました。 ジュンとピエールが骨董品屋の前を駆けて行きます。 『そんなに急いで、どこいくケロ〜?』 リッキーは声を掛けました。 雨に濡れた二人は、リッキーの声に立ち止まりました。 『あら!リッキー!』 『カラオケ屋が歌い放題で半額なんだぴょん!行くしかないっしょー!』 『この雨の中…傘ぐらいさせばいいケロに』 ピエールは、リッキーのいる軒下へ入り雨に濡れた頭を手で払いました。 『家を出たときは降ってなかったのに…いきなり降ってきたから驚いたわ〜ン!』 『ピエールがグズグズしてるから、いけないんだぴょん!』 雨の中にいるジュンはイライラしています。 『どのみち、カラオケ屋に着く頃にはびしょぬれダスな』 リッキーは、雨にうたれているジュンを見ました。 『すでにびしょぬれダスね…』
『おやおや…そんなところにいると風邪ひくよ。お入んなさいな』 ゆっくりとした口調で呼びかけました。 この小柄で優しそうなおばあさんが骨董品屋の店主です。 リッキーは、ここで働きながら寝泊りしています。 『イヤ、いいっすよ!急ぐんで!』 『じゃ、お言葉に甘えて…』 カラオケに早く行きたいジュンと、雨宿りしたいピエール。 意見が食い違います。 『キィーっ!!』 『ジュン、なんかお疲れじゃない?リラックス♪リラックス♪』 ピエールはジュンをほっといて、おばあさんについて店に入りました。 『…友情って、カラオケが原因で壊れる事が、めちゃくちゃ多いピョン・・・』 『ホラ、ジュンも入るダス〜。風邪引くと声も出なくなるダスよ』 『…ちぇっ』 びしょ濡れになったジュンは、しぶしぶ店内に入りました。
『ああ!?』 ジュンの目に飛び込んできたのは、はたきを手に店内を歩き回っているトロの姿でした。 『今度はジュンがお客さんなのニャ!いらっしゃいませ!なのニャ!』 『何でトロが!?』 『リッキーのトコに遊びにきたのニャ!でもおばあさんが「お手伝い」教えてくれたニャ!』 結構、このおばーさんに使われてんじゃないの? ジュンはそう思いながらも、おばあさんが勧めてくれた熱いお茶を飲み、タオルで身体を拭きました。 『ほら、この傘を持っていくといいよ』 ジュンとピエールに渡されたのは、店に置いてあった番傘でした。 『番傘!ス・テ・キだわ〜ン!まるで、コドモ時代にタイムスリップ!』 …ピエールはいつから生きているのでしょう? 『番傘っつーと、日本の心だねえ!』 すると、リッキーが申し訳なさそうにいいます。 『いいんダスか?』 リッキーはここで世話になっているので、迷惑はかけたくないようです。 『雨が降らなきゃ、傘も出番がないからねぇ』 おばあさんは笑顔で答えました。 『涙が出ちゃうほど嬉しいわン…!ありがとう!おばあさん!!』 『…』 ピエールは素直に喜んでいますが、ジュンは番傘をじっと見つめていました。 『つーかさぁー、これって貰っちゃっても…いいんだぴょん?』 おばあさんはゆっくりとうなずきました。 『そーでなくっちゃねー!ありがとーだぴょん!』
『いいニャ〜…』 おばあさんはトロに微笑みかけました。 『トロにも、あげようねぇ』 おばあさんは奥に行き、番傘をもう二本持ってきました。 トロにもお揃いの番傘をひとつ渡しました。 『うニャ〜!!ありがとなのニャ!おばーさん!!』 トロは番傘をぎゅっと抱きしめて大喜びです。 『くぁ〜!ジュン、クラッときた!やるね〜、おばーさん!』 『ジュン、失礼だわ〜ン!でも、よかったわねン!トロ』 『うん!わーい!ばんがさ!おそろい!』 おばあさんもニコニコしてます。 しかし隣にいたリッキーは、困った顔をしていました。 『これでリッキーも傘をさしてくれるねぇ』 おばあさんは優しくリッキーにいいました。 『イヤ!オラは…』 リッキーは雨の日でも傘を差しません。 …というより、その必要がないからです。 『え?え?リッキーは傘ささないのニャ!?』 トロはビックリしていますが、ジュンもピエールもそのことは知っていました。 『だって、カエルだから、雨が好きなのよねン?』 『つーか、ある意味ベンリだよねー!』 おばあさんは口を挟みました。 『おやおや、カエルでも風邪は引くんだよ?でも…リッキーは引かないねぇ〜エライねぇ〜』 リッキーの頭をポンポンと軽く叩きました。 『オラは最強ダスからして…』 リッキーが珍しく照れています。 『リッキーもおそろい!おそろいがいいニャ〜!』 トロはおそろいが好きです。 おばあさんは喜んで手に持っていた番傘をリッキーに渡しました。 『スマンケロ…』 有難いんだケロも・・・使わないとダメダスね…。 リッキーは困りつつも、受け取りました。
『ピエール!行くウサ!カラオケ!カラオケ!!』 ジュンは貰うものを貰ったので、ピエールをせき立てます。 『えぇ!?もう?』 『ここで長居してても、カラオケは出来ないピョン!!』 そういいながら、番傘を差して骨董品店を後にしました。 ピエールは後ろ髪を引かれていたようですが…。
『トロも番傘差したいニャ〜!お散歩したいニャ!!』 『はいはい、さしてあげようねェ』 おばあさんはトロの番傘を開いてあげました。 『リッキーも!リッキーも!!』 トロは雨の中で、番傘をくるくる回しながらはしゃいでいます。 『いいダスよオラは。…店番があるケロ』 リッキーは店へ入ろうとしました。 おばあさんはやさしくリッキーを呼び止めます。 『今日は雨でお客さんも少ないから、いっといで』 雨は止む気配がありません。 『行こー!リッキー!』 リッキーは手渡された番傘を見ました。おばあさんには頭が上がりません。
おばあさんのような日本一がいるんダスなぁ〜… まだまだ世界の壁は高いケロ!
雨の下町に、番傘が二つ駆けて行きました。 梅雨がもうすぐやってきます。
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