|
清末。腐敗した政府に民衆は生活の為、犯罪に走ります。 中国最初の黒幇といわれる【青幇】も清の時代に反政府の為にできた 組織がもとだとの説があるほど。当時香港周辺では海賊が多く出没し、 その処罰も相当に厳しいものであったそうです。 この本に添えられた写真を見ますと「海賊さらし首」と注釈があり、 ピラミッドの頂上をちょんと切ったような三角形に組んだもの、 そこに首に全体重がかかるように吊り下げられた男の姿がありました。 足は地についていないうえ、苦悶の表情は民衆に晒されています。 さて。 同じように夫を捕えられ刑に処されて喪った【月影】。 夫の敵を討つと1920年代、時代にして丁度清から民国の境。 香港の海を荒らしまわる【海盗皇后】(海賊女王)と相成りまして。 略奪の手並みもさることながら、 謀略・情報収集にも長けていたというから 皇后の名を冠されるに十分な手腕と威風を具えていたのでしょう。 (原文には【向社会報復】とあったので、 おそらく見境なしの暴挙は行わなかったのではないかと思われますが) そうしてついに、月影が仇を討つ日がやってきます。 仇の張国富は上海で大将軍となり、 香港へ向かって南下するその船【幸福号】。 上海に居る手下からその情報を得た月影は大鵬湾にて待ち伏せる。 時は来たりと海賊船から送られる手旗信号に、 幸福号内に旅客を装い潜りこんだ手下が船を奪う。 月影の前に引き立てられる張国富にその妻。 ……さてその報復は如何とす? 船にて【養生魚】の酷刑に処す。 漁師は捕えた魚をどうするか。篭に入れて船の側へ、 生かさず殺さず浮かせ沈ませつかせて廻る。 腰縄ひっつけて海にぶち込みひいてまわるだけならまだしもです。 服をひん剥くと腹を四寸ばかり裂き、臓物をいくばくか引き出し。 麻縄で縛ると浮きをくくりつけて海に放り込んだ。 張国富、自分の臓物が海面に漂うのを目の当たりにしながら、 腹に染みる海水が痛いの痛くないのって。 二日ばかりは海に浸し、数日引き上げて息をつかせると また海に放りこむ。これを繰り返すこと数度、張国富の死でもって終了。 同じに捕えた妻は、海賊荒くれどもの慰み物にした挙句、マカオで売っ払ったそうです。 この報復から、月影は香港の海域から姿を消します。 1929年9月18日。大阪の商船【地厘丸】が 香港へ向かう途中に襲われるという事件がありました。 首領は女性、二丁拳銃に場慣れした只者ならぬ威風… けれどもそれが再び現れた月影であるのか、それとも その後継者なのか。詳細は不明のままのようです。 中国南東部の女性、普段はおおらかなのだそうです…が、 一度怒らせると洒落にならないのだそう。 月影の報復はそれを象徴するもののようにも思えますねぇ…。 江湖地方の女性は独立心が強いとも言われているらしく、 なるほど男性諸氏、一筋縄じゃぁいきませんや。 復讐の鬼、二丁拳銃の女海賊……美味しいキャラじゃありません? 参考書籍;【老香港 東方之珠】 程乃〔女冊〕著 江蘇美術出版社 |