隼人x篠原・・・初めての逢瀬

*アラスジ
*時はまだこの国が帝國と呼ばれ、軍隊が存在したころの話。
*士官学校で学ぶ隼人と、篠原。
*篠原は隼人に一途な思いを抱くが・・・まだ逢瀬にはこぎつけられないでいた。
*そんな彼は・・・



そうだ。東京を隼人に案内させれば・・・丁度都合がいい。

私はなんとか同期から「飛鳥山の桜」が名所であるということを
聞き出した。

・・・飛鳥山か・・・週末に誘ってみるか。

来週に参謀旅行が控えていて、私はその準備もせねばならなかったのだが
「飛鳥山の旅行」は、その何倍もの比重を持って課題としてのしかかってきた。
道順工程所持品会話・・・あらゆる時間を使っても正しい答えが出ない。

しかしその中で、最上と思われる作戦で私は、隼人に挑むことにした。
彼の部屋を訪ねる。

「あのさ・・・今週末なんだが・・・」

そこまで言いかけたところで、部屋の片隅のカバンが目に入った。
着替えの服だろうか、空のカバンの横に隼人らしく綺麗に畳まれ置かれている。

「な、なんだ?どこか出掛けるのか?」
「あぁ・・・実家へ帰ろうかと思っていてね。」
「そうか・・・外出許可出ていたしな・・・」
「よく知ってるな。俺の外出許可。」
「う・・・」

下調べがばれたことに、顔面が紅潮し、背中から汗が吹き出る。
うつむく俺に気づかないのか、平然と隼人は話を続けた。

「篠原は帰らないのか?実家」
「あ・・・あぁ・・・。簡単に帰られる距離ではないからな」
「ふぅん・・・篠原が帰らないのなら、俺も学校に残るかな・・・」
「!!」

ハッとして顔をあげた私だが、隼人の視線が私からまともな思考を
奪うようだ。

「そ、そうかそうだな。それがいい」

自分でもわけの分からない会話だ。

「まぁ、それなら残るさ。・・・で、篠原、なんの用件だ?」
「あ、あぁ・・・実は・・・」

当日。
飛鳥山は名所と言われているだけのことはあり、
相当の民間人が集まり、盛り上がっている。
正直、隼人と来なければ私は来ることのない場所だろう。

「桜は綺麗だよな」

慣れない場所に戸惑い、うつむき加減に歩く私に対して
隼人は何事もないように、桜を見上げ、話し掛ける。

「あ、あぁ・・・俺の郷里で咲くものとは違うようだが・・・」
「ハハハ。篠原は山桜ばかり見てきたんだな。
 山桜も美しいが、染井吉野も相当なものだぞ」

私は隼人の横顔を見た。満開の散り行く花びらを背に、
その横顔は美しく、とても刹那的で・・・私は胸が詰まった。

「散ってしまうのに・・・か・・・?」

私は胸を抑え、うつむき加減につぶやいた。

「なにを言ってるんだ。篠原。」

上から隼人の視線を感じる。だめだ。この視線に向き合ってはいけない。
しかし・・・私は負けた。

彼はゆっくりと私を見つめて言った。

「散るからこそ、美しいんじゃないか・・・」

隼人・・・はやと、隼人、隼人・・・

「は、隼人・・・!」
「ン?」

驚くくらい大きな声が出た。隼人は歩みをとめ、私をゆっくりと振り返る。

「迷惑だったら二度といわない・・・だから、だからお願いだ。
俺、俺・・・」
「なんだ。篠原。」

頭のいい隼人はもうすべてを知っている。そのことは私にも分かる。
しかし・・・私は止められなかった。

「俺のこと・・・女みたいに抱いてくれないか・・・」

最後は呟きになった。隼人まで聞こえたか分からないくらい
小さな声だった。
私は閉じていた目をゆっくりあける。彼がそこからいなくなっていることを
最大限に恐れながら。軽蔑の視線を浴び・・・

隼人はそこにいた。優しい目をしていた。
そして言った。

「やっと本音が聞けたな。ここで告白されるとは思わなかったが。」

私は彼の視線に耐え切れず下を向く。。しかし胸の高鳴りは抑えきれない。

「は、隼人・・・」
「篠原・・・」

篠原が・・・うつむく私の手を取った。
今までに感じたことのないほどの熱い血で、私の右腕は腫れるように
敏感になっていた。

「行こう。」
「あ、あぁ・・・」

手を繋いで歩く桜並木。花吹雪の中、私は少女のように彼の手を掴んで離さなかった。




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