ファルツD.III

    Pfalz D.III



     エーベルスブッシュ兄弟によって設立され、開戦の前年にフランスのモラーヌ・ソルニエ社から技術供与を受けていたファルツは、最初モラーヌLやHのコピーを、次にLFG ローラントのライセンス生産を行っていた。ファルツ社のオリジナルはフリードリヒスハーフェン社から移ってきたルドルフ・ゲーリンガーが製作した一連の飛行機で、1917年にD.IIIが制式化される。アルバトロスの下翼が一桁構造でよく脱落事故を起こしていたのに対し、二桁の頑丈な主翼構造と容易な操縦性で、後世の史家が考えているよりはパイロットに好評だった。もっとも、機銃がカウリングに埋め込みである点がベテランには不満だったらしく、どちらかというと新米搭乗者にあてがわれることが多かった。それでも当時としては良質の単座機であり、被弾や急降下に強い頑丈な構造を活かして気球攻撃に威力を発揮した。「バルーン・バスター」フォン・レート中尉もファルツを愛用している。のちに水平尾翼の面積を拡大し、機銃をカウリング上に移したD.IIIa型に更改されるが、III型も終戦間近まで使用され続けた。III型だけで260機が生産されている。

    ○ファルツ飛行機製造会社Pfalz Flugzeug Werke GmbH製、1917.7〜1918.10
    ●160馬力メルセデスDIII列型液冷エンジン1基、最高速度165km/h、実用限界高度5400m、乗員1名、LMG08/15 7.92mmシュパンダウ機銃2挺。

     モデルはアルフレート・レンツ少尉Ltn. Alfred Lenzの1918年2月の乗機1386/17。バイエルン出身のレンツは主にプロシア部隊で従軍、1915年頃にフォッカー単葉機で初戦果を挙げて以来、1918年に至るまで勝利することはなかった。残り5機は同年4月以降、恐らくJasta22の指揮官に就任してから記録された。彼の機体ではブルーに塗られたアルバトロスD.Vが有名で、D.H.2(英軍機)を望遠鏡で覗いている天使という、凝った個人マーキングを描いている。全面ファクトリー・フィニッシュのシルバードープに、黒の帯とシェヴロンを描いただけのこのファルツは同指揮官時代のものだが、アルバトロスの就役時期も同時期のため、彼の5機のスコアがどちらの機体で(あるいは両方で)挙げられたかは判らない。ただし、ファルツがバイエルン政府の後押しを受けていたことから、同じバイエルン人のレンツが比較的長い期間、この機体を使用した可能性はある。
    (付:最後の戦果はジーメンス・シュケルトD.IVで挙げられたとの報告あり)

    ●休戦時階級少尉。公認戦果6機。1965年5月10日死去。


     キットはウクライナのメーカー、ローデンのもの。1次大戦の機体を出しているメーカーの中では、最高レベルのひとつと云える。エデュアール(チェコ)と違って、一切エッチングパーツもなしに細かいところまで再現している。あまりにパーツが細かいので、ランナーから切り出すのに苦労するくらいだ。実際、幾つかのパーツは折れたり曲がったりしてしまうので、結局そのままでは役に立たなかったりする。パーツの合わせを見るとやっぱり外国製で、どこかが食い違う。今回はカウリングの肉厚調整と水平安定板の位置決めに、パテとヤスリがしなくてもいいのに大活躍した。要するにエンジンが収まらなかったのね。ちなみに組み上げるとシリンダーヘッド部しか見えなくなるメルセデスエンジンだが、全体がちゃんとモールドされていてほれぼれしてしまう。
     カラーリングは説明書にあったヘルトマンかクラインか最後まで迷ったが、途中まで塗った挙げ句にレンツ機に変える。ヘルトマン機はおなじみのライラックとグリーンの迷彩で、既にリヒトホーフェン2機で飽きてしまったからでもある。クライン機(機首と尾翼が黄色のマーキング)を止めたのはデカールがつまらなかったせいもあるが、黄色塗料が旨くのらなかったのがほんとの理由だ。どうでもいいことだが、ハンス・クライン少尉は第2次大戦でも戦闘機乗りとして参戦している。
     コクピットは良くできているので、ほとんど手をつけていない。座席、操縦桿はもちろん、フットペダルもついている。そこまで再現してるくせにインパネはなかったので、計器だけ追加、風防もだ。上翼にあるバランス燃料タンクからのパイプは、0.2ミリ白金線での自作。張線、操縦索は例によって0.3ミリピアノ線。今回はちゃんと穴を開けて固定しやすくしてみた。というのも、固定位置が翼間支柱の付け根ではなかったからだったりする。ラジエータパイプはパーツとして存在したが、あやふやだったのでこれも0.8ミリ黄銅線での自作。相変わらず奥側の2本目は作ってない。やっぱりアバウトだ。アバウトといえばファクトリー・フィニッシュのシルバードープも光沢のないグレイに近いのだが、クロームシルバーでお茶を濁している。かえって引き締まってかっこよく見えると思うのだがどうか。いけませんかはいそうですか。
     プロペラは、バフとフラットアースで積層風にしてみたが、やっぱりクリアオレンジでニスっぽくしてある。これはやらなくても良かったかもしれない。実機写真で見る限りアクシャルかプロパルサーか判別できなかったので、オーソドクスにアクシャル製プロペラにしてある。ただし、マーキングはしていない。写真では見えなかったのだ。


    左舷、胴体支柱の向こうかわに見える細いラインが燃料パイプ。ほとんど見えないが支柱にもシリアルが記入されている。

    エンジン周りのディテールもかなり感じがいい。ドイツ水冷飛行機の魅力の過半はこのむきだしのエンジンにある。

    左舷後方から。操縦索はフォッカーと同じだが、水平安定版を貫いていないだけ張りやすい。
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