第3話絵の中の少女
「もうすぐ中間だね」
「うん、ああ、やだやだ」
 そんな言葉が聞こえてくる
 中間?・・・・中間・・・・・
 俺は自分の中に眠る語彙の中から中間という言葉を探しだした
「日本史が16ページから83ページまでだって!」
 日本史?16ページから83ページ?
 それってまさか・・・・
「もうすぐ中間テストだね」
 背後から来聞き覚えのある声が聞こえてきた
「はぅ!み、南部!?な、何してるんだ!?」
「何してるって・・・・毎日会ってるじゃない・・」
 南部は呆れた顔で俺を見た
そりゃそうだ・・・・
「で、中間テストって?」
「?、中間テストは中間テストだよ・・・」
 ・・・・・・・あ、思い出した
「ちゅ、中間テストかぁぁぁ!?」
「さっきからそう言ってるよ・・・・」
 南部はあきれた顔で言った
「はは・・・分からなかったんだ」
「現実逃避ってヤツ?」
「まあ・・・ね」
 確かに現実逃避をしていたかもしれない・・・
 俺の成績は決して良いとは言えない
「でも日本史の範囲は広すぎるよね・・・」
「ああ、確かにそうだな・・・確かこれって1年の時の範囲も含まれているよな」
「うん、確か先生が産休だったのよ・・・」
 俺はあまり女子と話さない・・・でも、何となく南部とは話が合う
 いや、話が合うんじゃない。懐かしい感じがするのだ
 だからだろうか?彼女とは話しやすい
「範囲が広いって言ったら現文もそうだったわ」
「なぬ!それはどういうことだ!」
 そんなことは知らなかった
 現文も広いのか?
「あれ?昨日神津が言っていたでしょ、『山月記』と『羅生門』、『富岳百景』の途中まででしょ?」
「げっ!」
 これも1年の時の範囲が含まれている
 しかも広いというレベルではない
 広すぎだ
 それも難しい文章ばかりだ
「まあ、ここまですごい範囲ってウチの学校だけだよな」
 そんなことをしばらく話していた
「ねえ、澄空の生徒って澄空で降りるんだよね?」
 突然南部が訊いてきた
「そうだけど・・・・何当たり前の事を言ってるんだ?」
「いや、あの子なんだけど・・・・」
 南部の指さした先には一所懸命本を読んでいる女の子がいた
 制服はウチの物だったので同じ学校だろう
 特徴としては・・・髪型か・・・いわゆるツインテール型だな
「あの子がどうしたの?」
「降りる気配がないのよね、この駅で降りなくちゃいけないのに・・・」
 そう言えば降りる気配が全くない
 どうやら着いた事に気が付いていないらしい
「教えてあげた方がいいかな?」
「そうだな・・・って俺達もやばくない?」
「・・・・・・あっ・・・」 
 そんな会話をしていると女の子のそばに一人の男子生徒が近寄ってきて何やら話し出した
                                                                                                            「どうやら助け船がきたようね」
 南部はその様子を見守っている
「いや、だから俺達も降りないと・・・・」
 ドアを見るとすでに閉まっていた
「遅刻確実か・・・・」
 俺はため息を付いた
 

 次に駅で二人は降りていった
 たぶん次の電車を待って引き返すのだろう
     で、俺達はというと・・・
「それは1年生の伊吹だな・・・」
 国語教師である神津の車に乗っていた
 二人を見守っていた俺達は結局再び降り損ねてしまったのだ
   しかも慌てていたので改札の外にでてしまったのだ
 降りた駅は澄空駅から二つ離れた駅だった
 そこでたまたま出勤途中の神津に出会って車で送ってもらうことになった
「先生は伊吹さんのことを知ってるんですか?」
 南部は好奇心いっぱいに質問をした
「ああ、俺は一応一年生の古典も担当しているからな、それと俺は美術部の顧問だからな」
「先生は彼女と親しいんですか?」
 南部はレポーター風に質問している
「だから美術部の部員だよあの娘は」
「そう言えば先生はなんであんな時間に通りかかったんですか?そのおかげで俺達は助かったんですけど・・・」
「ん?ああ、寝坊だ、寝坊」
「そうですか・・・・」
 南部は後部座席に引っ込んだ
 ふと、外を見るとパトカーが止まっていてひしゃげた自転車と電柱にぶつかった車が見えた
 すると突然携帯がな鳴り始めた
 着メロは『泳げたいやき君』だった
 俺は携帯を持っていない
 南部は持ってきているかもしれないがこんな着メロではないはずだ。だとしたら・・・・
 車が止まった
「はい、神津です」
 やっぱり・・・・
 神津が携帯を取り出して何やら話し始めた
 しかもちゃんと車の運転を止めてだ
「あ、はい。分かりました澄空中央病院ですね。はい、今いるところからだと5分弱でつきます・・・・」
 電話を切った神津は俺達の方を振り向くと
「悪いがウチの生徒が事故にあったらしいから俺は病院に行く。だからここでおろすぞ、歩いて学校に行ってくれ」
「あ、はい」
 残念・・・・俺は返事をしながら思った
「すいません、もう少しだけ・・・あっちの角まで運んでくれませんか」
 南部はいきなり訳の分からないことを言い出した
 しかも何だか元気がない
「ん?まあ、いいけど・・・大丈夫か?」
「・・・・大丈夫・・・です」
 南部はゆっくりとそう答えた
 本当に大丈夫なのかな・・・

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