真っ暗な部屋がある・・・


中央にある扉が薄く開いて、眩い光が差し込んできた
その光の向こうから、真っ黒な犬の耳が覗いた・・・






闇犬娘 「あれ〜?ここは何の扉だったかなぁ〜?」



光の中から現れたのは、黒犬の耳と尾を持った女性・・・
黒い下着の様な格好をしており、健康的な肌は殆ど露となっている
彼女は、闇の中を探る様にヒクヒクと鼻を動かした・・・



闇犬娘 「…ま、良いや♪ヘルちゃんが来る前に、隠れなきゃ〜」



楽しそうな声でそう言った彼女は、近くの棚の影に身を隠した・・・
それからすぐに静かな足音が近付き、それは部屋の前でピタリと止まる
そして薄く開いた扉から、黒い影が隙間を覗き込んだ・・・



闇神官 「…リルさん?
まさか此処には、居ませんよね…?」



隙間から見えたのは、細く白い指先を持った女性・・・
その指先と顔以外は、全てを黒いローブで覆い隠している
彼女は、闇に向けて透き通った声で呼びかけた・・・



闇神官 「閉め切ってある筈なのに、空気が動いてる…
リルさん?返事をして…」



美しい声の女性は、中へとゆっくり足を踏み出した・・・
大きな棚の影で、黒い人影がゴソゴソと動く
そして人影は、ローブの女性に突然抱きついた・・・



闇犬娘 「ヘ〜ルちゃん♪ここだよ〜?」
闇神官 「…きゃ…!?」



急に抱きついた影に、闇神官は小さな悲鳴を上げて肩を竦める
そんな彼女に、闇犬娘は嬉しそうに擦り寄った
相手を確認して、闇神官は苦笑を浮かべる
それを見て闇犬娘は、気付いた様子で舌を出した



闇犬娘 「あれ〜?かくれんぼしてたのに出てきちゃった
ヘルちゃんが、あんまり必死に呼ぶからだよ〜?」
闇神官 「ごめんなさい、リルさん
…でも、此処は入ってはいけない場所ですよ?」



嬉しそうに尾を振りながら、闇犬娘は口を尖らせる
闇神官は微笑んで謝罪した後、ふと表情を曇らせた
そして、暗闇の中を見つめ目を細める・・・
闇犬娘もその視線を追って、首を傾げた



闇犬娘 「…ねえねえ、ヘルちゃん♪
ここはどこだったっけ?」
闇神官 「…此処は我等が主、ロキ様の書庫です
彼のお方の全ての記憶が、此処で眠っています…」



闇犬娘は、首を傾げたまま闇神官に向き直る
闇神官は微笑み、大切そうにその場所の名前を告げた
その瞳は、溢れる敬愛に揺らいでいる・・・



闇犬娘 「そっか〜♪ロキ様のひみつ部屋か〜
そういえば、リルちゃん整理頼まれてたよね?」



闇犬娘は尾を立て、ワクワクした様子で更に足を踏み入れる
輝く瞳は既に、ズラリと並ぶ膨大な書物に向いていた・・・
彼女は、如何にも古そうな一冊を手に取る



闇神官 「…そっちは駄目です
整理を頼まれたのは、ロキ様が人間界に降りてからですよ?」



闇神官は苦笑し、そっと闇犬娘の手を押さえた
チラリと瞳に不安を宿し、彼女は古そうな書物を元に戻す
そして、導くように手を引いた・・・



闇神官 「…此方ですよ
ちゃんと、整理を手伝って下さいね…?」












闇深き書庫の奥へ・・・