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人々で賑わうドミナの町の中で、特に酒場は賑やかと言える場所ではない。普段はほ とんど無人で、たとえ誰かが訪れても数分で酒場を出て行く。 ―――ドミナの町の酒場は、酒を飲み騒ぐというより、旅人のために休息を与えるための場所。 だから夜の酒場からどんちゃん騒ぎが聞こえてくることもなければ、愉快な歌が響いてくることもない。そして、それを寂しいとか珍しい酒場だとか感想を残す人もいるが、ドミナの酒場は他の町の酒場と比べて、客人の心を休める方法が違うだけなのである。 灰色の雲が空を覆う日、ギシッと扉が開き3人の旅人がよろよろと入ってきた。静かな酒場の空気は、じっと息を潜め彼らを見つめる。彼らの体に傷こそは無いものの、その表情はどれもが元気がなく、目の輝きも失われていた。 そばにあった椅子に座る3人。すると、1人はテーブルに両腕を預け、すやすやと眠りに落ちていった。 「真珠姫…疲れてたのね。」 寝息をたてる少女を見つめるベージュ髪の女は、まるで消え入りそうな声で言った。 「ガトからずっと休憩もせずに歩いてきたからな。……しばらく、寝かしといてやろう。」 瑠璃色の瞳をした男も、真珠姫を愛しそうに見つめる。 「ああ…何だか私も疲れてきちゃったみたい…。」 「疲れてるんなら寝ててもいいぞ、マナ。」 「遠慮しとく。きっと…悪い夢を見そうだから。」 「…それもそうだな。」 ふと、瑠璃の視線が窓の外へ向けられた。雨の細い数多の線が落ちていくのが見える。 「雨が降ってきたな。」 「…まるで誰かが泣いてるみたいね。」 カッ カッ と。 大粒になった雨が窓を叩く音が静寂の空気を震わせる。不定期なそのリズムを聞いている内に、瑠璃とマナも深い眠りへと落ちていった。 傷ついた旅人の心に癒しのひと時を。 疲れ果てた旅人の体に静寂の眠りを。 ―――これからの事を考えるのは、それからでいい。 ドミナの酒場は、時に静寂が癒しになることも知っているのだから。 +コメント+ ある雨の日の酒場での出来事。ドミナの酒場って大抵無人(レイチェル除き)だから、こーゆー酒場の在り方もアリかなと。ちなみに3人は「岩壁に刻む炎の道」イベント終えて、帰ってきたところです。サンドラを追いかけるのもいいけど、たまにはゆっくり休憩することも大切なんですよ。 |