赤かった。
広がっていった。
止められなかった。
見てることしかできなかった。
名前を呼び続けることしか出来ない、無力な自分。
今まで頼られていたくせに、いざってときに役に立たない。
妹1人助けられなかった。
何がヒーローだ。
俺は・・・
お父さん、お母さん、お兄ちゃん・・・私、ずっと迷惑ばっかりかけて・・・ごめんね・・・それと・・・
ありがとう
「っ・・・」
頬に当たる冷たい感触。
一瞬、痛みにも似た感覚に襲われる。
「・・・なんだ、雪か」
久しぶりに見る雪。
白く柔らかい初雪は、おれの前で舞いながら落ちていく。
上を見上げれば、黒く曇ったそらがあるだけ。
こんな日を、おれは大嫌いだ。
「・・・ここは雪降るんだな・・・」
当たり前。
本当にごく当たり前だ。
そもそも自分が8年前まで住んでいたところだ。
知らないはずがない。
「っと、しまった。早く迎えに行かないとな。寒いだろうし。」
タッと、駆け足で走りなれたはずの道を、待っているであろう人のところへと走った。
「っと・・・あれ?」
待ち合わせ場所についた。
けれどだれもいない。
「おっかしいな・・・場所はあってるはずなんだけど・・・」
親に渡された地図を広げる。
赤いしるしのついた横に、四葉之公園という名前が書かれてる。
俺の前にある、公園の名前を記すプレートにも四葉之公園と書かれている。
間違ってはいない。
時計を見ても3分ほど遅刻している。
時間も早くはない。
・・・なんで?
おれが思案していると、どこからか女の子の声が聞こえた。
「ダメですってば、これは翔様のための肉まんなんです!食べちゃダメですってばぁ!」
翔はおれの名前だ。
っということは・・・
声のした方を見る。
━━そこで変な物を見た。
犬相手に必死になって袋を奪い合う、おれと同じ年頃の女の子。
・・・なにやってんの?
まぁ、正常な反応だ。俺の頭はおかしくなってないはず。
となると・・・
「あ、あの・・・」
声をかける。
その声に気づいたのか、女の子がこちらを見る。
途端、袋から手を離した。
すごい勢いで犬が転がって行き、少しはなれたところで止まった。
「あの・・・えっと・・・翔さん・・・ですか?」
「そ、そうだけど?」
女の子の顔が急にカッと赤くなる。
「見苦しいところをお見せしてすみません、私、小雪と申します」
「あ、どうも。あの・・・何してたんですか?」
「へ?あ、これはですね、翔さんに差し上げようと思ってコンビニエンスストアで肉まんを買ってきた
んですけど、ベンチの下に犬がいたのでついふらふら〜っと頭を撫でに行ったら・・・」
「行ったら?」
「はぅ・・・こんなになっちゃいましたぁ〜・・・」
「うっわ・・・」
小雪さんは、仰向けに倒れてのびている犬の傍から肉まんの袋をもってきて俺に見せてきた。
言うまでもなく、涎でぐちゃぐちゃだ。
「もう一度買いにいってきます・・・」
「あ、待って」
「?」
例の涎の袋を掴んで、中身を小雪さんに見せる。
「1個しか入ってないみたいだけど、小雪さんの分は?未開封だし、先に食べたってこともないよね」
「へ?あ、私は結構ですから買ってません」
「じゃあ、今度は小雪さんと俺の分買って来ようよ」
小雪さんが、口を鯉みたいに広げて固まっている。
「えっと、私は結構ですから・・・」
「だったら俺もいらない。だって、1人で食べてもおいしくないだろ?」
小雪さんは、かなり困った顔をして俺を見てる。
自分まで食べるなんて、厚かましいことできないって顔だ。
多分ね。
「えっと・・・」
「じゃ、行こうか」
まだ何か言い訳でも探そうとしてるらしいから、待ってなんかやらない。
「あ、待ってください!翔さーん!」
走り出した俺を、走って追いかけてきているようだった。
妹に似てるな、と思う。
・・・里香も、俺が走るといっつもくっついてきたよな・・・
「早くこないと、置いてくよー」
少し意地悪に、小雪さんをせかした。
-Never-
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