6
ニューデイズが誇る大手メーカー「ヨウメイ」社の経営する、ショッピングセンター。
その一角、アイテムを扱うブースの前に彼らは居た。
「そっちの準備はできたか?」
「メイトにアトマイザーに……うん、おっけーです!」
セイヴァの問いかけにフィリアは指で丸を作りながら答え、手に持っていた回復剤をナノトランサーに収納した。
「ん。じゃあ、後は……」
「ども、お待たせッス!」
背後からの声に二人が振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。
青い衣服に身を包み、褐色の肌に映えるブロンドがかった銀髪。
紅と蒼の対極に異なる眼が、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。
「華狩か。そっちも、もういいのか?」
「えぇ、ばっちりOKッスよ!」
そう言いながら、にっと人懐こそうな笑顔を見せる華狩。
この笑顔に母性本能を擽られ、今まで何人の女性が落ちていったn
「そろそろ集合時間だし、語り部が横道に逸れそる前に行きましょー」
……フィリアの言葉に二人も頷き、一行はショップを後にした。
ニューデイズは今、紅葉シーズンの真っ最中だ。
シティに植えられた木々はどれも紅や黄に染まり、道行く人々の目を楽しませた。
それはこの三人も例外ではない。
「にしても、見事なモンッスねぇ〜」
「コロニーにもあるが、やはり星に生える方が生き生きとして見えるな」
「そうですね〜それに、なんだかおいしそうだよね!」
『いや、それなはい「な」「ッス」』
「…ガクっ」
二人からの否定ツッコミに、フィリアはがっくりと肩を落とす。
そんな雑談を交えつつ歩いていると、一行の目指す先でこちらに手を振る人影が見えた。
7
「はは〜い!皆さん、ようこそおいで下さいました〜」
メイドを連想させる服装の少女が大きく手を振っていた。
「うおっ!?小っさ!?」
驚愕の叫びを上げる華狩の言葉通り、メイド少女の頭身は常人の半分程だった。
それもその筈、彼女はパートナーマシナリー。
ガーディアンズに一人一体ずつ支給されるロボットなのである。
「初めまして!わたしの名前はARIA、レカキス様のパートナーマシナリーでーす」
少々、舌足らずの声で自己紹介するARIA。
「いやー、かわいいッスねー。」
「華狩、お持ち帰りはダメだぞ。犯罪だ。」
しゃがんで目線をARIAに合わせた華狩は得意のスマイルを向け、即座にセイヴァが牽制する。
「なッ!?い、いくらなんでも、そんな幼女趣味はないッスよ!?」
慌てて否定する華狩。
「いや、そーじゃなくて、その娘はレカキスのだからな。人の物を勝手に持っていくと犯罪だぞ、と。」
「あ!あーあー!そーゆー意味だったんスね!?俺はまたてっきり…」
「なるほど、華狩さんにはそーゆー趣味がある、と…(めもめも」
「そこ!フィリアさん!何メモってんスかッ!?」
その問いにフィリアはにっこりと微笑み。
「ナウ!」
「いや、ナウ!じゃなくて!!おぉーい!?ちょ、聞けよ!いや、聞いて!?マジで!!」
「微笑ましいなぁ」
「はは〜い」
慌てる華狩とからかうフィリアをよそに、セイヴァとARIAはベンチでくつろいでいた。
「で、肝心のレカキスはどーしたんだ?」
華狩とフィリアの追い掛けっこも一段落し、セイヴァはARIAへと目を向けた。
「レカキス様は『今日は超星霊運がきた!』と叫んで先ほどヨウメイショップへと向かいました〜」
「武器の強化か。失敗しなければいいがなぁ…」
「あ!噂をすれば。レカちゃーん、こっちこっちー」
フィリアが手を振り、皆がそちらへ目を向ける。
…そこには、真昼だと言うのにどんよりと曇った闇があった。
「…何か、空気が暗いんスけど。」
「…失敗したな。」
見てはいけないものを見てしまったかのように目を背ける華狩。達観したように呟くセイヴァ。
「レカキス様〜!一度や二度の失敗でへこたれてちゃダメですぅ〜」
どんよりとした空気が読めないのか、ARIAは無邪気にはしゃいですらいる。
闇を引き摺ったまま、レカキスが吼えた。
「成功率は非常に高いでしょう、ってのは信用できないぃぃぃっ!!」
8
「レカちゃん、ドンマイです〜;;」
「そうですよぉ!日はまた昇るですぅ!!」
フィリアとARIAが駆け寄り励ましの言葉を掛けるが、ARIAが・・・。
「レカキス様〜!強化を失敗した時の為に、ある物を用意して置きましたぁ!♪」
ARIAが落ち込んでいるレカキスに、プレゼントBOXを差し出した。
「これで嫌なことは忘れちゃいましょう♪」
「・・・ありがとう。」
ARIAの心遣いに感動するレカキスだが、空気の読めないARIA・・・油断は禁物。
「さっそく開けてみるね♪」
「はは〜い♪」
「・・・カガリ、やばいぞ!」
「そ、そですね・・・・。」
ARIAとレカキスのやりとりを見て、何故かこの場から離れようとしているカガリとセイヴァ。
そして、レカキスがプレゼントBOXに手を掛けた瞬間!!。
「カガリ走れ!一刻も早くこの場から離れるんだ!」
「おおう・・・了解でっす!!」
「・・・ガシッ!!!」
走り去ろうとした二人を背後から何者かが捕まえた。
「v>w<vかに!!」
「!!ちょw」
「な、なんだtt」
・・・フィリアだった。
「2人でどこいくの?私も連れてって♪」
フィリアに捕まった二人。
そして、プレゼントBOXが開かれる!!
「☆基板/グラインダーB☆」
セイヴァ「・・・・・・・・」
カガリ 「・・・・・・・・・・・・・・」
レカキス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フィリア「わぉ!これでまた強化できるね!!」
ARIA 「ははは〜い♪」
少しの沈黙の後、レカキスの口が開いた。
「・・・ギ!!!!フォォォオイエェェェェエエエエエエ!!!!!!!」
瞬く間にレカキスの周囲が、炎の海と化した!!
「うわぁぁ ギャーー ナウ!! これがあれば負けないよ♪」
4人の断末魔?がニューデイズに響き渡った・・・。
空気の読めないARIAの伝説は、・・・まだ、始まったばかりである。
9
緑林地帯の中に、景気のいい鼻歌が響く。
その主であるフィリアは、横にはレカキスのPMであるARIAを従え、なんとも楽しそうに闊歩している。
しかしそんな二人を他所に、その後方にはどす黒い暗雲が広がっていた。
「皆なんか暗いゾッ! 元気出していこう!」
「……あのなぁ?」
フィリアの声がけに、セイヴァが超重低トーンで答える。
「誰のせいでこんな空気になってると思ってんだ? あぁ?」
「セ、セイヴァ落ち着いて!」
怒りで拳を震わせるセイヴァを、レカキスが制止する。だが、
「んー……街中でギ・フォイエくらったからだからー……」
「ってことはぁ〜レカキス様のせいですかねッ?」
「…………(プツン)」
またも発せられた空気の読めない発言に、レカキスの何かが切れた。
「……セイヴァ。PTMって本部に言えば、別のに取り替えてもらえるのかな?」
「……壊れたんだったらくれるかもな?」
「そっか……じゃあ、取り替えてもらおっかな♪」
「ちょ!? レカさんなんで杖構えて……ってぇ! セイヴァさんもなんで剣取り出してんッスか!?
いや、ちょっ、ダメですって! 二人とも落ち着いてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
華狩の必死な制止の叫びが、森に木霊する。
そしてそれは、招かれざるモノ達を呼び寄せることとなった。
10
「はははーい!皆さん、注意してくださーい!」
緑林の薄暗い空間に能天気な声が響く。
「いや、今、注意が必要なのはお前だ。ARIA。」
セイヴァが押し殺したような低い声で応じる。その手には、しっかりと握られた剣。
「ARIAー。ますたーとして、はずかしいわー。」
何故か台詞が棒読みなレカキス。当然、その手にも杖。
「レカキス様!目が真剣ですぅー!」
それでも状況を把握していないのか、はしゃいですらいるARIA。
「…あの、フィリアさん、止めなくていいんスか?このままじゃ血の雨が降りそうっスよ?」
引きつった笑顔で華狩が呟いた。そして、当のフィリアの返答は、
「がんばれ、ARIAッ!私は君を応援するゾっ!!」
満面の笑顔でそう言ってのけたのだった。
「皆さん、そうじゃないんですぅ!敵が来てるんですよぅ!」
ARIAの悲痛な叫びが響き、ハッと我に返ったかのように戦闘態勢に入る四人。
「ARIAっ!何でもっと早く言わないのっ!?」
杖を構えたまま、周囲を油断無く見回しながらレカキスが文句を言う。
「…この場合、ARIAに罪は無いと思うっス。」
ぼそっと華狩が小さくツッコミを入れ、ナノトランサーから大振りのソードを取り出した。
途端にオッドアイが細められ、戦闘用の顔つきへと変貌する。
同時にセイヴァも小さく笑みを浮かべ、剣を構えた。
「あれ?セイヴァ、今日は双剣じゃないんだね?」
フィリアがライフルを手にしつつ、疑問を口にする。
「…あぁ、とある理由でな。」
答えつつ、じろり、とレカキスへと視線を向けるセイヴァ。
「…ッ!」
何故かレカキスは音速で視線を逸らした。…首ごと。
11
「・・・・・・おぃ!本当に敵がきてるのか?」
セイヴァがARIAに再度確認する。
「ははーい!もぅ、すぐそこまで来てま〜す!!」
だが、辺りを見回すが敵らしき影は見当らない。
「おかしいな〜、ARIAの故障かもしれないね!本部に返却しましょうかね〜。」
「・・・レカキス様〜;;本当なんですってばぁ;;!」
「あはは、冗談よ♪・・・・・・・冗談かもね♪♪ニヤッ」
レカキスがARIAに日頃の恨みをぶつけてる様にも見える。
「はははーい♪レカキス様優しい!!」
何も判ってないARIAだった・・・。
「しかし変ですね〜周りを見ても林が風で揺れているだけです〜、
うーん、良くわからないから、えいっ♪」
「カチャ! カチャ カチャ カチャカチャチャチャチャ!!」
なんと意味もなくフィリアがトラップをそこら一帯に仕掛けた!!。
「ちょ、これは敵も近づけないけど、俺たちも動けないじゃないか!!」
セイヴァがガッカリした様子。
しかし、これがフィリアの真骨頂!!天然である(涙。
「・・・ザザ・・・ザザザァ」
「あれ?風がさっきより強くないッスか??」
華狩が周りをキョロキョロ見回しながら呟いた。
「気のせいじゃないか?」
「確かに風強いね〜。」
レカキスとセイヴァが答える。
「このままARIAの勘違いだったら「バサ」いい「バサバサ」のにね♪「バサバサバサ」
「フィリア〜、言葉の途中にバサバサ言う遊びが流行ってるのか?」
「ナウ!」
「ナウ!「バサ」じゃな「バサ」いッスよ!!って、!・・・・・まさか!!」
華狩がすごい勢いで空を見上げた!!
「・・・・・ぎゃあああああああ!!」
見えない敵・・・ARIAの故障?・・・不吉な音「バサ」そして
華狩が見上げた空になにがあったのか!?
不吉なトラップだらけの戦いが今始まる・・・。
12
一瞬。
視界の暗がりを感じた時にはそれは無く、代わりに刃にも似た突風が辺りに吹き荒れた。
「くっ! 今のは!?」
華狩が直様に振り返るも、風を追うことなど出来はしない。
「解析、出たよ! さっきの風の正体は――」
「…オンマゴウグ……」
フィリアが言い終わる前に、レカキス小さくが呟く。
しかしそれは、この場を緊迫させるには十分たる一言だった――
「あー!私が言いたかったのに、レカちゃんのばかぁ!」
「ははーい!レカキス様ってば流石ですぅー!」
……が、一瞬にして元の空気へと戻った。
「…ここは奴の生息域からかなり離れてるぞ。俄かに信じがたいが――」
完全なスルーと共に、会話を進めようとするセイヴァの言葉はそこで遮られた。
ヒュンッという空を切る音。
一同が一斉に振り向く――
ズンッ!!
重苦しい音が地面に突き刺さり、辺りを砂埃が舞う。
そこから弾き出されるように、5つの影が飛び出す。
「――気をつけろッ!もう一発くるぞッ!!」
セイヴァが地面を滑りながら警告を発するが、遅かった。
言い終わるか否か、砂埃を突き破りながら飛来する巨岩。
その狙いは――
「!?ARIAッ!!!」
レカキスが叫びARIAが気づく。が、間に合わない。
「ッ!!」
来る衝撃を覚悟し、ARIAは硬く目を瞑る。が――
ゴッ!!
鈍い音と共に、巨岩へ奔る一筋の鋭い剣閃。
両断された岩片は、ARIAを避けるように左右に別れ、その後方へと突き刺さった。
「……大丈夫ッスか?ARIA」
振り下ろした長剣を担ぎ上げ、華狩がニッと笑った。
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「チッ!空を飛んでるから俺らには手が出せん!」
舌打ち交じりにセイヴァが上空に浮かぶオンマゴウグへと視線を向ける。
当然、近接戦闘がメインである華狩も打つ手がない。
「私の出番ね!シュートッ!」
言い終わるや否やフィリアの銃が力強い咆哮を上げ、一直線に弾丸が空を裂く。
弾丸は狙い違わず、オンマゴウグの羽、翼膜へと突き刺さる。
「届くかな?…フォイエ!」
レカキスも負けじと炎球を放つ…が、その言葉通り途中で燃え尽きてしまう。
「何とか地上に引き摺り降ろせないッスかね?」
「誰かが囮になって地上へ引き付けるとかか?」
油断なく話し合う華狩とセイヴァ。同時に頷き、声を張る。
「レカキス!ARIAを借りるぞ!!」
「ほへ?」
状況をよく飲み込めていないARIAの両腕を、華狩とセイヴァがガシッと掴む。
そのまま、妙に息の合った走りで連れ去っていく。
「レ、レカキス様ぁぁぁー!?」
ARIAの悲鳴がエコーを残し、緑林地帯の奥へと消えていった。
「レ、レカちゃん…?」
フィリアが恐る恐る、といった様子でレカキスの顔を覗き込む。
そこには、目を丸く見開き、口をあんぐりと開けたニューマンの少女が立っていた。