そこは薄暗い空間だった。
 足元を照らす非常灯、投影型の案内表示板。
 視界を確保する灯火はなんとも頼りないものだった。
 そして、その空間には異質な空気が満ちていた。
 グラール太陽系同盟締結100周年を祝う式典の最中に飛来した、謎の宇宙生命体SEED。
 SEEDによって汚染された区域は侵食により有害化され、生物を凶暴化させる。
 ここ、ガーディアンズコロニー内部、リニアラインホームへの連絡通路もその一つだ。

「で、ここのエネミーを駆除していけばいいんだね?」
 わたしは愛用の両手杖のチェックを手早く済ませながら、背後の二人に問い掛けた。
「あぁ、任務ではそうなってるね。」
 黒を基調とした服装の男性、セイヴァが答える。
「ま、前衛は俺がやる。二人はサポートを頼むぜ?」
「ほいほー、怪我したらすぐさまレスタ掛けるから安心してー」
 セイヴァの言葉に頷くわたし。
「立派に壁の勤めを果たしてくださいね?」
 続いて、白銀の鎧に身を包んだ女性、フィリアが微笑む。
「ちょ、壁って…?」
 引きつった苦笑を浮かべ、セイヴァが武器を取り出す。
 両手に一対の剣。白く輝く刃は光の属性。
 続いて、フィリアも長銃を手のひらに具現化させた。
「それじゃ、行きましょうか。レカちゃん、ぼーっとしてると置いてくよ?」
 セイヴァに続き苦笑を浮かべ、わたし、レカキスが後に続く。

 SEED落着時の影響か、凶暴化したエネミーに攻撃されたのか、通路の壁はでこぼこに歪み、
天井から崩落した瓦礫が道を塞いでいる。
 元は人々が行き交っていた場所だが、今では凶悪なエネミーが闊歩する廃墟となっていた。
 
 割れたガラスの破片を踏みながら、三人は行軍していく。
 と、唐突にフィリアが叫んだ。
「シュート!!」
 何事かと目をやると、部屋の片隅から湧き出すように姿を現すエネミーの群れ。
 デルセバン、と呼ばれる醜悪な怪物の出現。
 デルセバンは刃のような形状の両腕を振りかざし、こちらに突進してくる。
 即座にセイヴァが動き、先頭の1匹に対して双剣を振るう。
「それでもっ!それでも僕は…!!
 守りたい世界があるんだぁぁぁぁ!!!!」
 セイヴァの、どこか投げ遣りで虚ろな叫びが連絡通路にこだました。





「ギィィィ・・・」
 デルセバンが、セイヴァの斬撃を喰らい断末魔を上げる。
 しかし、デルセバンの群れは怯むことなくセイヴァに襲い掛かる。
「チッ、フィリア!!」
 セイヴァが叫ぶ。
「任せて!!」
 フィリアが長銃を構え、デルセバンの群れに乱射する。
 デルセバンの動きが数秒止まり、その隙にセイヴァが距離を取る
「レカちゃん!ナウ!!」
「ほいほー!
 行きますっ!!」
 デルセバンの群れに氷のテクニック、バータを使うレカキス。
 バータは、地を這いながら高速でデルセバンの群れに襲い掛かる。
「シャァァァアン・・・・シャリィ〜ン!!」
 直撃。
 バータは、デルセバンを次々と薙ぎ倒し、極寒の世界へと誘う。
 残すは、バータの直撃を受け凍っているデルセバン1匹となった。
 すかさずセイヴァが距離を詰め、凍っているデルセバンに止めを刺す。
「うりゃぁ!!この!腰抜けがぁぁぁぁぁ!!!」
 セイヴァの叫びがこだまし、デルセバンの群れは全滅した。
「この調子で一気に進むぜ!!」
 セイヴァの言葉に2人が返事をする。
「はーいっ」
「ほいほー」

 デルセバンの群れを軽々と突破した3人は、襲い掛かるエネミーを物ともせず
 リニアラインの通路を突き進んでいく。
 そして、何事も無くミッションクリアと誰もが思ったその時!
 3人の顔が青ざめる出来事が起きたのである。





「こりゃぁ、また……」
 セイヴァがため息と共につぶやく。
 眼前には、天井から生える様に突き出た巨大な種子のような形をしたSEED、”SEEDコア”があった。
 SEED達は、宇宙から飛来してくる際にこのような形をしている。
そして、落下地点に根を張り、株をどんどん増やして地面を覆いつくす。
最終的には花のようなものを咲かせ、そこからウィルスにも似た侵食細胞をばら撒き、
周囲の生物をも侵食し、勢力を拡大していく。
 そうした姿は、まさに植物である。
 SEEDという名前も、その形状や特性からつけられたものだった。
「ったく……なんでこんなモンが残ってんだよ」
「だねぇ。封印作戦終わってから、飛来したってニュースもなかったのに」
 レカキスの言うとおり、あの作戦以来、SEEDの飛来情報は流れていない。
 ここまでに倒してきたSEEDフォームも、全て残党である。
それにも関わらず、こうしてコアが存在しているということは……
「取りこぼし、ですねぇ……」
 いつもは能天気なフィリアも、流石に呆れている様だったがそれも無理はない。
 SEED被害以降のコロニー警備は、ガーディアンズによってどの星よりも厳重にされていた。
そんな現状でありながら、このような取りこぼしがあるということは同業の者として些か笑えないだろう。
「ま、ブルーメも無いようだし壊しておくか」
「ですね。幸い、外壁の緊急ロックは機能していたみたい。このまま壊しても空気漏れの心配はありません。」
「それじゃ、遠慮なくいきますかー!」
 各自獲物を構え、SEEDコアの破壊作業にかかろうとした時だった。





 震えていた。
 誰が、ではなく、何が。
 …SEEDコアが。
 異変に気づいたセイヴァが声を張る。
「こいつッ!?活性化しやがった!!」
 SEEDコア、その外郭が細かく振動し、中央へと伝播していく。
 いや、その逆だ。
 コア、まさに核が脈動を開始したのだ。鼓動の余韻が外郭へと拡がる。
「完全に覚醒しない内に破壊してしまいましょう!シュート!!」
 言い終わると同時に、フィリアはライフルの引き金を引いていた。
青く輝くフォトンの弾丸がSEEDコアの外郭へ突き刺さる。
 と、同時に翔け抜ける一陣の黒い風。
 双剣を構えたセイヴァ。その姿はその名の通り、自らも剣となったかのように鋭い。
「うおぉぉぉぉ!」
 裂帛の気合と共に輝く刃が撃ち込まれ、縦横無尽に翻る。
SEEDコアの外郭に幾筋もの傷跡が刻まれ、崩れ落ちた。
 だが、それは外郭を剥いだだけである。
「これでどうでしょうっ!」
 わたしは杖を上段に構え、一気に振り下ろす。
杖の先端に輝くフォトン球から炎の塊が飛翔した。
 炎球は狙い違わず露出したコアへと向かい、激突する刹那。
 …SEEDコアが消えた。
「レカちゃん!下!!」
 フィリアの声に視線を下げる。
 居た。わたしの炎球をかわす為に、自ら天井から落下したのだ。
 そして、醜悪なコアの変異が始まる。
 残った外郭が捩れ、縒り合わさり、触手を形成する。
半透明な核を蕾のように戴いた植物の外観が完成し、両脇に腕のような触手が生えた。
「完全体…!?」
 わたしの呟きが漏れ、セイヴァが続ける。
「理解は出来ても…納得出来ないこともある!」
 顔を背けているのは醜悪な外観の所為か、台詞に対する照れなのか。
 緊迫しているのか、余裕があるのか判らない奇妙な静寂が場を支配した。
「これはまた…大物ですねぇ。」
 突如、静寂を破って通路に響いた声。
 視線を向けると、槍の長柄を肩に軽く乗せた黒髪の青年が歩いて来る。
「手を貸しましょうか。」
 黒髪の青年、IZAはそう言って不敵に微笑んだ。 




 
「…IZAさん!!」
 フィリアが声を上げ、IZAに近づき跳ね回っている。
 突如のIZAの参戦により硬くなっていた表情が和らぐ。
「こりゃ、強力な助っ人だな。」
 セイヴァは顔には出さないが喜んでいるようだ。
「IZAさん、お言葉に甘えます。」
 一瞬和やかなムードに包まれた一行だが、今も戦闘は続いている。
 4人がSEEDの方に振り向き、構えた瞬間!!

「…居ない。」
 
さっきまでそこに居た完全体…一瞬眼を逸らしただけで居なくなるものなのか。
 夢でも見ていたのか、周りを見回すがどこにも見当らない…。
 しかし、戦った形跡は残っている。
 少しの静寂の後、IZAが叫んだ!!
「下だ!!」
 4人の真下から触手を振り回しながら姿を現す完全体。
 完全に意標を突かれた4人。
「こいつ、地面を移動しやがるのか!」
 セイヴァ、IZAは触手を回避し完全体から距離を取ったが…。
「キャー…!!」
 レカキスとフィリアの悲鳴がリニアライン通路に響き渡る。
 …2人は触手に捕まっていた。
 だが、悲鳴より先にセイヴァとIZAは動いていた。
「調子にのるなよ!!」
 セイヴァの双剣がフィリアの捕まっている触手を断ち切る。
 フィリアは触手から解き放たれ、地面へ着地するまでの間に銃を構えた。
「シュート!!」
 レカキスの捕まっている触手を撃ち抜いた。
 瞬間、レカキスもテクニックを発動。
「デフディール!」
 相手の防御力を下げる補助テクニックを使い
 完全体の防御力が低下した。
 すべての動作が一瞬で繰り出され、IZAの叫び響き渡る!
「くらえ!!」
「ドゥース・ダッガズ!!」
 IZAの槍が完全体を貫き、槍の連撃を加える!!
 槍の連撃を喰らった完全体は木端微塵になり消滅した。

「やったぁ〜♪」
 フィリアが跳ね回る。  
「フィリア…あんまり飛び跳ねてると、また触手に捕まるぞ??」
 セイヴァが呟いた。
「…ガクっ」
「私、飛び跳ねてなくても捕まったんですけど・・・。」
 レカキスがセイヴァに呟く。
「ちょwww」
 IZAはそれをみて笑っている。

 IZAの参戦により何とかミッションをクリアした4人
 任務を終え。
 各自マイルームに戻り平穏な日常を送っていた。
 だが、平穏な日常も束の間
 レカキスから、ニューデイズへの緊急収集が掛けられた!!。




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