2、ちょっとした事件もある訳で
「…どうしよう、今日で謹慎……」
何事にも例外はあるらしい。
俺の目の前、校門からは見えない角度にある木の陰で途方にくれているのは男。
…というよりは微妙に見える横顔から察するに少年。
華奢とも言える体つきから察するに1年、少なくとも自分よりは下の学年だろう。
絶望的な様子で呟いた言葉の内容からするに今日で九度目の襟章忘れ。
つまりはアレだ、ウチの学校の歴代記録タイに並ぶわけか。ここまで来ると逆に尊敬に値する。
ちなみにもう一人の記録保持者は…まあおいおい説明するとしよう。
一つ溜息をつき、元々傍まで近づいていたのを更に歩み寄って
「なあ、そこの朝っぱらから黄昏てる学生。」
「うわぁっ!」
む、失礼な。声をかけただけで驚いて逃げ出そうとするとは。
ともかく素早く回り込み、少年が逃げ出す前に進路を阻んでやり。
「校章忘れたんだろ?」
「え、あっ、はい。」
「うし、これ使っとけ。」
話し掛ける前に外しておいた自分の襟章を握らせてやると相手も見ずに校門へと歩き出す。
「……あのっ!」
「…ん?」
しまった、つっかえされるのが嫌で歩き出しといて振り向いちまったよ。
どうせ受け取れませんとか言うんだろうなと思ったんだが出てきた言葉は意外なもので
「お名前とクラス教えてください、すぐに返しに行きますから!」
おお、そう来たか。好意を素直に受けてもらえたからか簡単に
「ああ、忘れてたな。2−Dの石田 晶だ、学校終るまでに帰してくれたらいいから。」
そう名乗って罰を受けに校門へと歩いていった。
まあ、これだけなら日常の中のちょっといい話で終わるわけだが、何故かここから色々と始まってしまった訳で…
――あ、しまった。ゴミ出してない。