3、まあ大抵は面倒なことになる訳で

「石田せんぱい、お昼一緒に食べませんか?」
「…はいはい、屋上だろ?」
「はいっ!」
つまりは懐かれてしまったって訳で。富良野の冬は寒い訳で。
「今日は駅前のパン屋さんで買ってきました。」
「ハムサンド。あとウィンナーロールとカレーパンとコロネとチョコクロワッサンと…」
「それじゃあ僕の食べる分が無くなっちゃいますよぉ……」
「俺は育ち盛りなの。ってあーもう、涙目になるなよ…ほら。」
呆れながら奪い取ったパンからいくつか返してやる。
するとさっきまでの泣きそうな顔が笑顔に戻り、美味そうにパンを頬張り始める。
昼休みの屋上。そこにあるベンチで俺とこいつ…渡辺 司はパンを食べている。
何故こんなことになったかと言うと…
あの日、こいつに校章を渡した日の1限目が終ってすぐ。
校章を返しに来た際ににどうしてもお礼をとせがまれ、断るのも悪いからと昼飯でも奢ってくれたらいいよと言ったのが失敗だった。
昼飯代が浮いてついてたなと思いながらご機嫌に翌日を向かえ、さあ昼飯だと思えばまたこいつが居た訳で。
どうやら暫く奢ってくれるらしいと調子に乗っていたらこれで二週間。正確には既に15日目
初めの内はただ役得だと思っていたがいい加減鬱陶しくもあり、二日前にもういらないからと言ったのだが…
「……ッく、ぼく…せんぱ…っ……、お…れい…」
あろうことか泣き出してしまいやがった。
少し冷たい口調で言ったからとはいえ、まさか教室で泣き出すとは。
流石にそんなことされて冷たくあしらえるわけも無く、現在に到る。
…悪意は無いみたいだし昼飯がタダなんだからいいか。
そう無理に納得して自分のパンへと取り掛かる。
やっぱ駅前の店のパンは美味い、色々と許せてしまえそうな美味さだ。
大好物のメロンパンを幸せを噛みしめながら口に運んでいると視線が突き刺る。
よく見れば司が俺がパンを食うのを微笑みながら見てやがった。
しかもそれに気付いた俺が目を合わせると赤くなってそっぽを向く始末。
「……お前な、何でこっち見て赤くなってんだよ。」
大きく嘆息して指摘する。そこでまた赤い頬に朱が増して。
「いえいえいえいえみ、み、み見てないですよ…っ!」
なんてのたまいやがる。
今日通算何度目か判らない溜息を吐き、思い切って問い掛けてみた。
「……なあ、お前さぁ」
「せっ!せんぱい!」
サクッと大声にかき消されてしまった。
「………何だ?」
仕方なしにめんどくさそうに返すとポケットから何かを取り出し、俺に差し出した。
「…映画のチケット?」
誰がどう見てもそうとしか見えない。ちなみに個人的に見たかった作品だったりする。
「あの…明日……11時に駅前で…待ってますから…」
「は?おい、それどういう…」
真意を問おうとしたがその前に真っ赤な顔で走り去っていかれた。
後に残ったのは食べ終わっていないパンと映画のチケット。
それはいいのだがこれは…