「その後・・・・」



長い道…。

 何処までも続く長い道…。

 何時までこんな所を歩いているのか…、何時からこんな道を歩いていたのか…。

 忘れてしまうほど、時は長く経たなかったように思うが…。

 長く歩いて、随分疲れたなんて言うのもいい加減馬鹿らしくなった。

 それ以前に、腹が減った。

 飯が食いてぇ…。暖かいご飯にラーメンのチャーシュー大盛。長く食ってねぇな…。

 最後にラーメンを食ったのは何時だっけか?

 ついこの間…、そんな気がするが…。

 そう言えば…。あいつ今頃どうしているだろうか?

 別に今更心配する事でも無いが…、でも…。


 (こんにちは、でっかいおむすびですね?)
 …。

 (飲み物無くて、大丈夫ですか?)
 …。

 (買ってきますね)
 ……。

 (どうしてそんなことするかなぁ…)
 …。

 (一緒に、遊んで欲しいな)
 …。

 (住人さん……)
 ……、駄目だ…。

 これ以上あいつの事を思い出すな…、思い出すんじゃない…。
 何であいつなんだ?どうしてあいつの事が頭から離れない?
 俺にとって…、あいつは何だ!?
 何でこうも俺に纏わりついたんだ、あいつは!?
 判らない、判りたくない…。
 何故なんだ、何故…こんな……。
 こんなにも俺を苦しめるんだ、あいつは。
 仕返しか?お前を置いていった事への仕返しか?
 苦しい…、胸が爆発しそうだ…。

 「ぐぅ…」
 住人は余りの苦しさに、立てる気力をも失うとそのまま倒れこんだ。
 苦しい…、なのに息が堰を突くように止まらない…。
 アスファルトの無機質な地面に体を投げ出し、もはや動かなくなった…。
 (死ぬのか、俺?)

 まさかな…。

 (目の前ぐらぐらだ…、何もみえねぇ…)

 何か、本当に死ぬみたいだな…俺。

 (疲れた…、もう何もやりたくねぇ)

 このまま動かなくなると、少しは楽だろうか?

 (……)

 住人はもはや動かなくなり…。

 そのまま、目を閉じた……。




 ……。

 ……。

 「?」

 何だ?
 料理の匂いがする。
 いい匂いだ。
 思わず生唾が出てくる。
 こんないい匂いのする飯なんて、もう何年も食ってねぇ…。
 嫌、口にすらした事すら無いだろう。
 何でもいい、ここは何処だ?
 住人はゆっくりと目を覚まし、上に目を向けた。
 「…」
 ここは、どうやら人の家らしい。

 前は漁業組合だったが、今度は普通の家か…。
 木目の天井。どうやら普通の民家…、それも少し落ち着いた感じの家らしい。
 ゆっくり体を起こし、周りを見回す。
 自分が横になっていたのはソファーで、部屋はリビングのようだ。
 温かみのある部屋の色調に、何処となく雪国の住まいを思い浮かべる。
 「何処だ?ここ」
 判らないままに見回していると、ふといい匂いの存在を思い出す。
 「そうだ、まずは食糧確保だ」
 目が覚めて気付いたが、今無性に腹が減っている。
 何かを口にしたい。
 その一心で匂いの出る方向へ向かった。

 人の家だが、まあいいだろう。後で理由を言って御礼を返せば…。
 御礼ね…。さて、何で返すか?

 まぁ、そんな事は後でいい、今は食糧確保。
 リビングを出ると、そこは広めの面積にテーブルと椅子が6つの、ゆったりしたダイニングキッチンだ。
 「……」
 結構広い。それも広いだけでなく、かなりリッチだ。
 俺も何時かはこういう住まいを構えられるんだろうか?
 (まず無理だな)
 即答の結果にうな垂れる。
 …違った。
 「食い物食い物…」
 そう呟きながら食料を探そうとすると…。
 「そんなに慌てなくても、もうすぐ出来上がりまから、椅子に座って待っててください」
 という声がした。
 キッチンからだろうか、匂いの方向と一緒の所からのようだ。
 住人は匂いの元…もとい、声のした所へ向かった。
 キッチンを覗くと、そこにはグツグツと音を立てている大き目の鍋に、何かを焼いているようであるフライパン
 そして、それらを管理しつつも包丁片手に野菜を刻んでいる一人の女性。
 「……」
 住人は少し硬直した。
 その姿に、どこか母親の影を見た気がしたから…。
 といっても、住人は母親と共に旅から旅への毎日を送っていたので、台所での母親らしい姿なんて見たこと無かったが…。
 「よく眠れましたか?」
 野菜を刻みながら、女性は住人の方を見ずに尋ねた。居る事に既に気付いていたらしい。
 「え…あ…あぁ……おかげでな…。ぐっすり眠れたみたいだな」
 「そうですか、それは良かったです」
 そういって、女性は住人の方を向いて微笑みかけてきた。
 結構な…、と言うより相当な美人だ。
 歳は30前半くらいだろうか、落ち着いた雰囲気にも、そこはかとなく若いようなイメージがある。
 「昼ご飯、食べて行かれますよね?」
 「あぁ…食べていく…いや、そうさせて貰う」
 思わず控えめな口調になってしまう。まぁ、少なくとも危ない所を助けてもらったのだ。何時ものようなぶっきらぼうな態度ではまずいだろう…。
 気が付くと、女性は既にコンロの火を止めていた。どうやら食事が出来上がったらしい。まな板の上の野菜も、それぞれ綺麗に切り分けられている。 
 「じゃぁ今用意しますから、少し待っていてください」
 そう言って、女性は食器棚の食器に手をかけた。
 「いや…」
 住人はその手を止めさせて、
 「それ位やらさせてくれ、助けてもらっておいてそのままなんて、何か悪いからな」
 「そうですか、じゃあお願いします」
 女性は全く気にせず、住人に食器の配置を任せた。
 「大き目のお皿と中くらいのお皿を5つずつお願いします」
 「判った」
 匂いからして、どうやらビーフシチューのようだ。
 しかし、女性の手を止めたときのその手の柔らかさ…、心なしか気持ち良かった気がするぞ…。
 あぁ、早く食いてぇ…。勿論食べたいのは料理の方であって、女性の方を…では無い。
 腹の虫の音を聞かれないように、手早く準備を済ませる。
 「あとは、少し小さめの器を、6つくらい用意してもらえますか?」
 「あぁ、判った。ところで…」
 住人はお皿を出しながら気になる事を口にした。
 「あんた、俺の事を一体誰に運ばせたんだ?」
 さっきから、その運んできたと思わしき人物の姿が見えない。というか、この家には今は彼女一人らしい。
 「誰って、私一人で運んだんですよ。若い人を担ぐなんて事滅多にしないから、少し緊張しましたけどね」
 そういって、女性は屈託の無い笑顔で鍋を運んでくる。
 「あんたが…?けど、この…」
 「あぁ、その荷物ですか?今日たまたまお肉の良いのが沢山売っていたので、少し多めに買っておいたんです。」
 「少し…、多めにか…?」
 そう言って目の前の荷物に目を縛り付ける。

住人の目の前には、どう見ても10キロは下りそうにない買い物袋が3つ、それに米袋が1袋置いてある。しかも、袋には20キロと印刷してあるではないか。
 この大荷物を含めて俺を運んだというのか?女性にはおろか、住人でもまず無理だ。
 しかし女性は嘘を吐いているように見えない。むしろあたりまえの事をしていたかのような態度だ。
 住人はこの女性の腕力測定をやってみたい気分になった…、じゃない。
 「そうか…、こんな大荷物の上に俺を担がせたなんて、苦労かけさせたな」
 住人は素直に詫びを言う。いちいち相手の腕力に気をかけていてはきりがない。
 「いえ、あなたを運んだのは私でも、荷物を運んだのは私ではないですよ」
 「*?」
 「一緒に住んでいる祐一さんと言う子に手伝ってもらってたので、荷物の方を祐一さんの任せてから、あなたを運んだんです」
 ……。
 成る程、そういうことか。たしかに女性は一言も自分で全部運んだとは言っていない。
 「そうか…。だったら、その祐一って奴にも礼を言った方がいいな」
 「えぇ、そうしてあげて下さい。祐一さん、かなり無理していたみたいですから」
 「あぁ、そうする」
 というか、男に軽い方を持たせて、女性が重たい男を一人で担ぐか?こう見えて俺、体重は65を下らない筈だが…。
 まぁ、別にいいんだけどな。
 と、女性が器に料理を盛り付け終えた丁度その時に、

 「お母さん、ただいまぁ〜」
 という間延びした声と、
 「あぅ〜〜、お腹空いたよぅ…」
 というガキっぽい声と、
 「おまえなぁ、さっきからずっと腹減った腹減ったって、何回言うつもりだ?」
 という男の声が聞こえてきた。
 「しょうがないでしょ?真琴今日朝ご飯食べてないんだからぁ」
 「遅刻寸前まで眠りほうけてたお前が悪い」
 「何よぉ、自分だってしょっちゅう遅刻寸前の癖にぃ!」
 「あれは名雪が悪い」
 「うぅ…」
 なんか賑やかだな。
 「あれは祐一が……、……?」
 そう喋りながら先にキッチンに入ってきた少女が、まず真っ先に住人を目にした。
 「*?」
 どうやら何処の誰なのかと、予想しかねているらしい。
 「チッす」
 とりあえず挨拶をする。
 「…えぇと」
 「どうした、名雪……、?」
 後ろから男が様子を見ようとして入ってきて、これまた住人に目を向けた。
 「あぁ、さっき秋子さんが担いで運んで来た人か」
 こっちは大よその事を理解しているらしい。
 「悪かったな、余分に重いものを持たせる羽目にさせちまってよ」
 住人はそう詫びを言う。
 祐一という男、といっても住人よりかは年下のようなので、どちらかと言うと少年と言うべきか。
 「いえ、大した量じゃないから気にしなくていいですよ」
 祐一はそう答え返す。少なくとも本音のようだ。
 「祐一、この人…」
 横の少女が、状況を理解しかねたしく、祐一の袖を突付いて状況説明を求める。
 「あぁ、この人は朝、俺と秋子さんで買い物してきた帰り道で倒れてて、秋子さんが担いで家まで連れてきたんだ。倒れていた所を見た時は、最初は俺もビックリしたけどな」
 祐一が簡単に説明する。
 「そうなんだ…」
 そう理解して、改めて住人を見つめる。
 
 「……」
 住人はこの時、とある台詞を思い出した。状況は違えど、冗談くらいには…。
 「惚れるなよ」
 「わ、そんなんじゃないよぉ」
 少女は慌てて手を振って否定する。まぁ期待した訳ではないが、ハッキリした否定に少しへこむ。
 「名雪に祐一さん、ご飯にしますから手を洗ってきなさい」
 住人の後ろで、女性は既に食事の準備を終えていた。テーブルの上を見ると、スプーンや料理の盛り付けられた器が丁寧に並べられている。
 「俺はもう洗ってきましたよ。…ところで秋子さん、ピロ見ませんでした?さっきから真琴の奴が居ない居ないって、騒いでるんですよ」
 「あら…、変ね。さっきまで表で日光浴してたのに」
 そうか、この女性の名前は秋子と言うのか…。で、ピロって?
 「祐一ぃ!ピロ祐一のベットの下に居たわよ! 祐一隠したんでしょう!」
 と、さっきから祐一と言う人名を連呼する騒々しい少女が、その祐一の後ろに現れた。頭にはなぜか、一匹の猫を載せている。
 「あ…、ピロぉ…」
 と、今度は間延び少女が猫を見ていきなりトロンとした声になる。
 「おれは何もしてないぞ、第一帰ってきてからそんな間がある訳無いじゃないか。それに、名雪の前ではピロをなるべく見せるなって、秋子さんに言われただろ?」 
 「あぅ…、ピロも一緒にご飯食べたいって…」
 「ったく、名雪を抑えるこっちの身にもなれ。とにかくご飯食うから、椅子に座れ」
 そういって、祐一は名雪と呼ばれた少女を引きずって、自分の椅子に座った。名雪はさっきからピロの名前を連呼している。どうやらピロという名前は猫の事らしい。
 「真琴、手は洗ってきた?」
 秋子がエプロンを外しながら騒がしい少女に尋ねる。こっちの名前は真琴か…。
 「うん、洗ってきた」
 「そう、じゃあ皆でご飯にしましょう。今日は量が何時もより多めになったから、おかわりは幾らでもしてね」

 ようやく飯にありつける。住人は目をギラつかせながら椅子に座った。
 ご飯を盛り付けていた秋子も椅子につき、全員がテーブルの周りに集まった。
 そして、秋子さんの頂きますの声と共に、全員が頂きますを言う。住人もそれに合わせた。
 数日間ぶりのキチンとした食事…。住人は慌てているようには見えないよう、夢中でビーフシチューを口に運んだ。
 …美味い。
 異常に美味い、涙が出る。
 住人はもはや無心でその料理を堪能した。

 暫くして、
 「ところで秋子さん、この人誰?」
 真琴がご飯よりも気になる存在の事を尋ねる。
 「そう言えば、まだ名前を聞いてなかったわね」
 秋子も、たった今思い出したかように口にする。その一言で、住人以外の全員の視線が住人に向けられた。あまつさえピロとか言う猫までもが視線を向けている。
住人はその視線に答えるべく、簡単な名乗りをあげた。
 「俺の名前は国崎住人。こう見えて一応、あちこちを旅している流れ者だ」
 「旅をしてる…。じゃぁ、毎日旅行してるんだ」
 名雪の何気ない的外れな一言。
 「いや、そんなリッチな旅じゃない。でなきゃ行き倒れになんかならないぞ」
 「へ…。もしかして、プー太郎?」
 真琴の一言。住人に1000のダメージ!
 
 「……」
 つうか、住人本人はかなりショックを受けている。
 「真琴、人に向かって無職者呼びをしては駄目でしょう?」
 秋子が諭す。あぅ…と小さくなる真琴。
 「でも、旅の途中の資金なんて、どうやって稼いでるんです?」
 補佐するように、祐一が最もな意見を持ちかけてくる。
 「それはな…」
 住人はポケットから人形を取り出す。
 「こいつだ」
 あちらこちらほつれの出来たボロイ人形。しかし、住人にとってこれは大切な商売道具であり、また相棒だった。
 「これが何をするの?」
 名雪が不思議そうに尋ねる。
 「何か…、売り物にもなりそうに無いボロイ人形」
 真琴の痛烈な一言、本日二度目。
 「まぁ、いいから見てろ」
 そう言って、住人は人形の上に手をかざした。
 何が起こるのかを見つめる四人、+一匹…。
 住人は心の中で念じた。動け!と…。

 すると人形はヒョコリと立ち上がった。
 その突然の光景に驚愕する三人+一匹。秋子はあくまで落ち着いた表情で見守っている。
 住人は続けて人形に命令した。歩け、そして走れと。
 人形は住人の思い通りに、テーブルの上を歩き出し、そしてチョコチョコ走り出した。
 住人の元を離れても人形は止まらない。チョコチョコと動き回り、テーブルを一周すると住人の元へ戻ってきた。
 そしてフィニッシュ。
 (跳べ!)
 人形はピョコっと飛び上がり、そのまま宙返りで住人の掌に戻ってきた。
 これで住人の芸は終了。これでも住人の中ではとっておきを披露したつもりだ。
 少しの間沈黙。まぁ、最初はこんなもんだろ。前の家では家主に散々言われたが、ここではどうか?
 「うわぁ…、お人形が自分で歩いた…」
 「凄いですね、手品でもここまでは出来ませんよ」
 「ねぇ、何で動いてるの?」
 
 と、少年少女の三人から口々に賞賛らしき言葉を受ける。
 住人は少し気分が良くなった。
 (なかなかの評価だな。この分だと、この辺りで稼いで路銀にする事も出来るな)
 一方、秋子は何かを考えているような表情だったが、まぁ特に気にはしなかった。
 「とまぁ、こういう見世物をやって、通りすがりの人間から金を恵んで…、いや、貰ってるんだ」
 実際は、お情けに等しい額しか貰えないのだが、ここでいう必要は無いだろう。
 それよりも、今は中断された食事を再開したい。
 「さて、折角作って貰ったご馳走だ。冷めないうちに頂こうか」
 住人は食事を再開する。少し冷めてはいたが、それでも十二分に美味い。

 「あとで、もう一回見せてね」
 「あぅ〜、絶対種を暴いてやるんだから、絶対見せなさいよぉ!」
 名雪と真琴がそう頼んでくる。住人は一応それを了解した。余りただで見せるのも気が引けるが、見せない訳にもいかんだろう。まぁ、気の住むまで見せてやるさ。
 食事が済んで、祐一は自室へ戻り、名雪と真琴は住人の人形劇を再度見物。当然秋子は洗い物の仕事だ。

 ひとしきり人形の動きを眺めていた二人は口々に、
 「ねぇ、これでお金稼いでるんだよね。もしお金が貰えなかったらどうするの?」
 「なによぉ、種が無いじゃない!?こんなの詐欺だぁ!」
 住人に質問たら何やらを浴びせ掛けてくる。住人はいい加減疲れを感じたらしい。1時間もぶっ通しで動かしていえば、まぁ疲れないことも無いか。
 「こいつで稼げなきゃその日の食い物は無し。一日中腹空かす羽目になる。それとこいつには種なんか無い、正真正銘の手品だ」
 本当は"法術"という名がちゃんと有るのだが、それを言えばまたこいつらはそれに関する質問をしてくるだろう。住人はそれが鬱陶しくなり、説明を止めにしたのだ。
 「ふぅん、そうなんだ。じゃぁ死活問題なんだね」
 「あぁ、そうだ」
 全くその通りである。でなきゃあんな風に行き倒れになんかなるものか。
 「じゃぁ、私宿題あるからもう行くね。一杯見せてくれて有難う」
 「あぅ、結局種明かしできなかった…。えっと…、見せてくれて……、あ…有難う」
 そういって、二人は各自の部屋へ戻った。
 リビングに残されたのは住人一人。

 「だぁ〜、疲れたぁ〜」
 開放された事に感謝し、住人は思いっきり背伸びをした。
 「済みませんね、何だか無理させたみたいで」
 と、そこへ秋子が洗い物を済ませてやってきた。
 「別にいいさ。食いもん食わせて貰ったから、特別サービスだ」
 「今日は泊まっていきませんか?」
 優しい口調で聞いてくる秋子。
 そうするか、せっかく言ってるんだし、言葉に甘えておこう。
 「良いんですか?それじゃそうさせて頂きます」
 「ええ、たくさんいると賑やかですから」
 笑顔でそういってくる。
 「なんなら、ずっといても良いですよ?」
 俺は驚いたが、少し間をおいて。
 「冗談ですよ」
 と笑いながら言われた。
 まったく、こいつがいうと冗談に聞こえなくなってくるな。
 「それじゃ、少しくつろいでいてくださいね」
 そういってリビングからいなくなる。

 「ふー」
 ため息をする。
 こんな時でもでも、あいつの事を考えてる。
 そんな自分に腹が立ってくる。
 もう、忘れよう。
 
 そう、忘れた方がいいんだ。

 自分の事だけを考えよう。

 「だけど・・・・・・・・・」

 心の霧は晴れない。

 だが

 いつか、答えがでるだろう」

 外はまぶしいぐらいの青空だった。




 終わり