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「『県外遠征』だ」 そこで立ち尽くす。 |
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「単刀直入に言おう、お前のテクニックが欲しい」
ため息と共に空を仰ぐ。 その先に鍵があった。 |
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誰が好んで、あんなメールを出したのか・・・。 長い文章が、悪夢のように載っていた。 「はぁ…」
別のため息。俺のよりかは小さく、短かかった。 隣を見てみる。 そこに同じように立ち尽くす男の子がいた。 同じ二年生。けど、見慣れない顔だった。 短い髪が、肩のすぐ上で風にそよいでいる。 |
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「この車は、好きですか?」
「え…?」 いや、俺に訊いているのではなかった。 |
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「俺はとってもとっても好きです。 でも、なにもかも…変わらずにはいられないです。 楽しいこととか、うれしいこととか、ぜんぶ。 …ぜんぶ、変わらずにはいられないです」 たどたどしく、ひとり言を続ける。 「それでも、この車が好きでいられますか」 |
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「俺は…」 「見つければいいだけだろ」 |
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「えっ…?」 驚いて、俺の顔を見る。 |
「次の楽しいこととか、 うれしいことを見つければいいだけだろ。
あんたの楽しいことや、うれしいことはひとつだけなのか? 違うだろ」
そう。
何も知らなかった無垢な頃。
誰にでもある。 「ほら、やろうぜ」
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俺たちはコインを投入する。 ロータリーとNAのエンジン音を響かせながら。 |