スターウォーズ 帝国の逆襲編
act1
辺境の雪と氷の惑星。ここに秘密基地を移してからも反乱軍にはわずかの油断も
許されなかった。毎日のように戦士たちは星を探り、万が一の際黒い月の追撃を
かわすための情報収集に努めている。
速水に付き合っての偵察から帰還した瀬戸口は報告を済ませると司令室へ向かっ
た。
はいってきた彼の姿をいち早く認めたのは未央だった。オペレーターの傍らに立
ち指示を出しながらも鋭く男をみやる。しかしすぐにそんな自分に気がつき、あ
わてて視線を戻した。
(まるで、あの人が気になって仕方ないみたい・・・)
自分は壬生屋未央、壬生の血を引く娘。王女として反乱軍全体のことを考えなけ
ればならない立場の人間なのだ。この戦いの意義を知ろうともせず正式に軍に所
属することさえしない、あんな男にかまけてはいられない。そう言い聞かせてみ
るが、オペレーターからの報告をききながらも意識はそちらに向いてしまう自分
に気づき、当惑した。
「やあ、瀬戸口君。速水百翼長を見ませんでしたか?」
図面に向かっていた副指令の善行は司令室に入ってきた瀬戸口に気づくと声をか
けた。
軽く手をあげて応えた瀬戸口は、すばやく未央を探した。一段高いところでオペ
レータと言葉を交わしている彼女は自分に気づいていないのかこちらを見ようと
もしない。その横顔に見入りそうになりながらも、なんとか善行に視線を移し
た。未央に存在を知らしめるため、幾分大きな声で答える。
「さっきまで一緒に偵察に出てた。隕石を見てくるというんで先に戻ったんだ」
「・・・・これほど隕石が多いと敵の先兵との区別できないので、危険なんですが
ね」
ひとつため息をつくと、ふと思い出したように顔を上げた。
「そういえば、ここを離れると聞きましたが・・・」
「ああ、芝村の一人に借金を返しに行かないと俺が殺されちまうんでね」
芝村は裏の世界では名が知られている、裏切り者には容赦のないことで有名な暗
黒街の黒幕の一族だ。一軍の副指令とはいえその経歴の大半が謎に包まれている
この眼鏡の男は、その名を知っていたようだった。
「芝村ですか・・・。それならば仕方ありませんね。しかし、貴方のような戦闘の
プロを失うことは大幅な戦力ダウンですよ」
「すまないな」
「気をつけて」
そういうとふたりは握手を交わした。
「お聞きのとおりだ」
未央を仰ぎ見ながら声をかける。
「そうですか」
ようやくこちらを向いた未央のそっけない言葉に苦虫を噛み潰したように顔をし
かめると足を踏み鳴らしながら立ち去った。
未央は黙ってその後ろ姿を見つめていたが瞬時ためらった後、唇を引き結ぶと後
を追った。
「瀬戸口くん、待ってください」
「なんだい、お姫様」
呼び止められたことを嬉しく思いながらも、幾分そっけなく答える。さっきの意
趣返しのつもりだった。
「・・・貴方はともに戦ってくださるものとばかり思っておりました」
「俺にだって事情があるんだ」
「どうか残ってください。皆が貴方の力を必要としているのです」
「皆だって?」
「ええ、そうです」
瀬戸口はむっとして踵を返すと、未央に背を向け足早に通路を進んだ。
「どうなさったというのです!?」
未央はあわてて追いかける。
「ほかのやつなんかどうでもいい―――お前さんはどうなんだ?」
瀬戸口は急に立ち止まり振り返ると、乱暴に彼女の腕をつかんで問いただした。
「わたくし?・・・いったいなんのことです」
あくまで、代表としての立場でしか引きとめようとしない未央のものいいに瀬戸
口は痺れを切らした。
「とぼけるなよ、俺と離れるのが嫌で追いかけてきたくせに。お別れのキスがほ
しいんだろ?」
「なっ――不潔です!貴方なんかより、ブータと離れるほうがずっと名残惜しい
くらいだわ!」
「! じゃあブータにキスしてもらえばいいだろ、お似合いだ!」
売り言葉に買い言葉であることはお互いわかっていたが、それでも意地っ張り同
士、引くに引けないふたりが心を通わせるのはまだまだ先のことになりそうだっ
た。
「瀬戸口くん、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ?忙しいんだがね」
ここを発つにもまず飛行艇を修理しなければならない。瀬戸口は手を休めずに岩
田に返事した。だいたい、こいつの用事はどうでもいいことが多すぎる。
「フフッ、姫がお呼びなのですがねぇ?」
「・・・・手が離せないんだ。用があるなら、自分からこいと伝えてくれ」
「その提案は却下しますよ」
いつにない真剣な声にようやく瀬戸口は岩田を見た。
「いったいどうしたってんだ?」
「・・・速水くんが戻らないのですよ。ちなみにアナタが最後の目撃者です。フフ
フ、電波が危険だと告げています」
「―――なんだって?もう日がくれるぞ!」
「この星は野宿するには幾分、寒すぎますねえ」
氷点下50度にもなるこの星の夜を他人事のようにいう岩田は確かに、この星で
野宿ができそうだった。しかし速水は普通の人間だ、偵察用の軽装で乗り切れる
わけがない。
瀬戸口は低く舌打ちすると、ゲートへ向かった―――。
「あいつは俺の親友なんでね」
そう軽くいい残して瀬戸口が制止を振りきり吹雪の中に騎獣を駆って飛び出して
から、5時間が経過した。
昼よりも夜が長いこの氷の惑星では基地であっても完全に締め切らなければ暖気
を保つことができない。外が吹雪ならなおさら、ゲートを開け放し待ち続けるこ
とも限界だった。速水を家族と慕い類まれな同調能力を持つののみは、岩田に掴
まりながらぎりぎりまで外にでて必死になって瀬戸口と速水を探していた。しか
しレーダーでも見つからぬ彼らの存在は幼い少女をもってしても感じとることが
できず、彼女を気遣うまわりの大人の手によって、ほどなく寝室に連れて行かれ
た。
「姫、そろそろ限界です。ゲートを閉めなければ・・・」
じっと外を見つめながら、微動だにしない未央に遠坂がためらいがちに声をかけ
た。
その言葉に未央は瞑目する。その決断を下すのは自分の役目だと知っていた。こ
こに集まった仲間は皆ふたりを直に知り心から心配する者ばかりだから、彼らが
限界というからにはこれ以上引き延ばすことはできない。本当にぎりぎりなの
だ。
未央は深呼吸をひとつすると、小さく頷き許可を与えた。
ゆっくりと閉まるゲートを見つめて、ブータが哀しみに鳴いた。
「大丈夫ですよ、きっと彼らは帰ってきます。私の勘は当たるんです・・・」
そう慰める遠坂に小さく微笑みを返すと未央は自室に戻った。
今はただ、一人になりたかった。
―――できることなら自分が探しに行きたかった。どんなに危険でもじっと待つ
苦しさに比べればどれほど気が楽だろう。そういう意味では未央は瀬戸口が羨ま
しかった。どこにも属さずただ自分が大切に思うもののために命を賭けることが
できる瀬戸口の生き方は、自分には絶対に選ぶことができないものであるだけに
妬ましく、眩しい。だからこそ、こんなにも彼が気になるのだろうか。
速水と瀬戸口のふたりはともに命をかけたかけがえのない仲間。
失いたくないという想いは確かだが、王女としての、指導者としての自分はゲー
トを閉める決断をした。その決断が彼らを殺すことになるかもしれない。そう
知ってはいても、上に立つものとしてそれ以外の選択はありえない。
目を瞑ったとき脳裏に浮かぶのは、ただ自分の故郷だというだけの理由で滅ぼさ
れた惑星、オルデラーン。
こんなときにも泣くことさえできない。
―――そう、自分を哀れんで泣くことははるか昔に捨てたのだから。
ひとつため息をつくと未央は平静さを装える自分を嘲笑った。
指揮官にとっては休むことも務めのうちであることは了解している。しかし無理
やりベッドに体を横たえはしたが、まんじりともできないまま、夜明けを迎え
た。
これまでは黒い月からの発見を恐れ偵察にも飛行部隊の派遣は控えていたが、未
央は司令官とともにすべての機体を派遣することを決めた。
ふたりは無事だった。
行き倒れていた速水を見つけた瀬戸口だが、頼みの騎獣はすでに寒さで倒れ帰る
術が失われた。しかしそこで諦めることはせず騎獣の腹を裂き内臓を取り出すと
体温が失われることがないよう、速水を中にいれた。そして簡易シェルターをつ
くると夜明けとともに繰り出される救助隊を待ったのだった。
夜明けから1時間半の後、飛行部隊の一機からふたりの無事が報告されると未央
はひとり、歓声に沸く司令室から抜けだした。足早に自室へ向かい扉を閉めると
ベッドに身を投げ出し、声を押し殺して、泣いた。
吹雪の中瀬戸口に助けられた速水は、翌朝救助隊の手で基地に運び込まれると救
護用タンクに半日いれられた。ようやく普通の病室に移されて、目が覚めるとす
ぐに瀬戸口がブータとともに見舞いにやってきた。
「元気になったようだな」
「ああ、助かったよ。ありがとう」
「これで貸しがふたつだ」
にやりと笑ってみせる瀬戸口に速水も笑みをかえした。
「ああ、速水くん、目が覚めたのですね。よかった・・・」
連絡を受け駆けつけた未央は安堵の表情を浮かべる。そんな彼女に瀬戸口は意地
悪く笑いながら声をかけた。
「―――お姫様が出された離陸禁止令は解除されたのかい?」
「わたくしではありません!誤解なさらないでくださいな。司令が、今動くのは
危険だと判断されたのです」
「とぼけるなって。俺と離れるのがいやだったんだろう?素直になれよ」
「貴方って方は、ほんとうにおめでたい方ですね!」
「ふん、図星を指されたからって照れるな、照れるな。おい速水、彼女は俺に行
かないでくれって泣いて縋ったんだぜ?」
得意げに話す瀬戸口だったが、速水とブータの視線は冷たいものだった。あまり
の内容に一瞬言葉を失った未央は真っ赤になって叫んだ。
「なっ・・・!よくもそんな嘘を・・・この、嘘つき!恥知らず!」
「恥知らず?恥知らずはないだろう!?」
情けない瀬戸口の声は失笑を誘った。お調子ものの瀬戸口と清廉にして高潔な未
央のどちらを信じるかといわれれば、結果は明らかである。
「ナァ――」
「おっさんまで、笑ったな?」
速水とブータに誤解されずにすんだことにほっとしながらも、怒りが収まらない
未央は
「女心というものを少しは学ぶとよろしいのです」
キッと瀬戸口をにらみつけると当てつけるようにベッドの速水に近寄った。
「速水くん、いえ、厚志・・・はやく元気になってくださいね?」
いたわりの言葉とともに速水の頭をそっと抱きしめる。花のような香りとともに
自分を包みこんだ優しい腕はまるで母親のようであったが、しかし思慕の対象で
ある女性からの抱擁に、速水は顔を埋める形になった胸の柔らかさを意識せずに
入られなかった。伝わる温もりに高鳴る心臓。目の遣りどころにさえ困ってしま
う。
そんな未央の大胆な行動に瀬戸口も目を見張った。
しかし周囲の動揺にまったく気がついていない未央は次に熱を計るようにコツン
と額を合わせると優しく髪を梳きながら
「無理をしてはいけませんよ?」
と弟を窘めるように囁きかけ、とびきりの笑顔をみせた。そして踵を返し瀬戸口
をじろりと見やると、司令室へと戻っていった。
後に残されたのは、棚ぼたでおいしい思いをし頬の緩みきった速水と、対照的に
ひどく――ひどく情けない顔をした瀬戸口の姿だった・・・・。
act2
未央という女性はおよそお飾りであり続けるような人物ではなかった。
姫と呼ばれ、王女という称号を持ちながらも自身を危険に晒すことをまるでため
らわない。工具を持たせればある程度の整備は自分でこなし、剣の腕前も優秀な
戦士に遜色ない。戦略にも精通し機知に富む彼女は容貌や生まれの尊さはもとよ
り内側から輝くその生命力で周囲の者を魅了する。
常に先陣に立ちどんなに絶望的な状況でも決して諦めず周囲を思いやる心の強さ
と優しさでもって戦意を高揚させる。それはまるで、勝利の女神そのものだっ
た。
実際、反乱軍の中にはそんな彼女に心をよせるものは多い。高嶺の花と知りつつ
も焦がれてしまう、そんな存在であった。
いまや秘密基地は崩壊寸前だった。いや、暴かれ、もうその機能を果たしていな
いという意味ではすでに崩壊していたといってもいいだろう。黒い月からの攻撃
は熾烈を極め、反乱軍はようやく築き上げた基地を撤退しなければならなかっ
た。そんななか、司令官を先に輸送艇に乗船させると、万全の布陣を敷いた敵の
包囲網を掻い潜りより多くの味方を宇宙へ逃がすため、未央は自らがしんがりと
なりオペレーターへ指示を出しつづけていた。
本来ならば反乱軍の一員であることを拒んだ瀬戸口はとっくに宇宙へと飛び立っ
ていたはずだが、最速をほこるファルコン号の整備が進まずやむなく出発できず
にいた。
しかし未だ未央が残っていることに気がつくと、基地の最奥である司令室へ戻り
彼女の手を引いて強く退去を促した。それでもなかなか動こうとしない彼女にい
らだちながらも、その心に魅せられる。司令室が再び砲撃に揺れるとさすがに未
央も瀬戸口の言葉に従った。
「皆に撤退を伝えてください!貴方たちも、早く逃げて」
最後までつき合わせてしまったオペレーターにそういい残し、引きづられるよう
に司令室を後にした。
瀬戸口は最後の輸送艇に未央を送り届けるべく基地内を移動していたが、絶え間
ない攻撃により崩壊が進んだ通路に立ち往生した。既に敵の侵入が始まってお
り、一刻を争う事態に瀬戸口は急いで輸送艇に連絡をとる。
「こちら瀬戸口。そちらへの通路は阻まれた。姫はファルコン号に乗せる。先に
飛び立ってくれ」
用件だけ伝えると来た道を戻り、未央とそのお付きの岩田を連れてブータの待つ
愛機へと急いだ。
修理途中だった機関部をだましだましなんとか飛び立ったファルコン号だった
が、その整備はやはり不完全だったため途中小惑星に不時着し修理しなければな
らなかった。もちろん黒い月から身を潜めてのことだったから、材料はすべて艦
内でまかなわなければならない。
瀬戸口は機関室の修理について岩田に一通り指示をだすと、ひとりで奮闘してい
る未央の様子を見に行った。
未央はパルプを閉めようと悪戦苦闘していたところだった。力を貸そうと後ろか
ら包み込むように手を伸ばす。突然のことに驚きあわててその手を振り払った未
央に、瀬戸口はおどけたように声をかけた。
「お手伝いしたいのですが?お姫様」
「その呼び方、やめてください!」
日頃地位や階級に無関心のこの男にそんなふうに呼ばれると、馬鹿にされたよう
で不愉快だった。
「わかったよ、未央」
間髪いれずに名を呼ばれ、未央は彼の手に乗ってしまったことに気づいた。
「・・・ほんとうに、いじわるな方ですね。嫌なひと!」
「お前さんが冷たくするからさ。俺はこんなに優しくしているのに。―――俺の
ことが嫌いなわけじゃないだろう?」
「・・・ときどき頼りになることは認めます。でも、遊び人だわ」
悔しげに俯いた彼女に瀬戸口はすっと顔を近づける。
「・・・遊び人?遊び人、ね。いい響きだな」
瀬戸口は両手で慈しむように優しく、未央の右手を握り締めた。本来なら高貴な
その身は一介の運び屋ごときが触れられるものではなかった。けれども花を手折
り、果実を口に運ぶためだけに使われるべき手が、今はスパナを握り油にまみれ
ている。銃を持ち学兵とともに訓練することをためらわない彼女にふさわしく幾
分荒れたその手は、彼女の飾らぬ心をあらわしているようで、白く滑らかな貴婦
人の手よりも数段美しいと瀬戸口には思えた。
「や、やめてください!」
「なぜだい?」
「わたくしの手は、汚れています・・・」
「かまわないさ、俺の手も汚れてる」
それ以上強くいうこともできず、未央は居心地の悪いまま手を握られていた。感
触を楽しむように触れられ、恥ずかしさのあまり目をそらす。
「俺が、怖いのか?」
「な、にを!」
「震えてるぜ」
「そんなこと・・・!」
壁を背に手を握られ、逃げ場のない未央に瀬戸口は息がかかる距離で囁きかけ
た。
「俺が遊び人だから、惹かれたんだろう?」
「・・・わたくしが好きなのは誠実な方です!」
未央はほとんど泣きそうな声で反論した。
「誠実さ。お前さんにだけは――」
「嘘!あっ・・・ん」
瀬戸口の両手が未央の体を包み込んだ。そして施された優しい、深い口付けを未
央はなぜか拒絶できなかった。いや、本当は彼女にもわかっている。気づいてい
るのだ、自分の心がどうしようもなくこの男に向いていることに・・・。自分の立
場―反乱軍の象徴としての血統や皆を導かなければならない責任―を思えば、軽
はずみな行動はできないはずだった。けれども求められる喜びに思考がかすみ、
未央の手もいつしか瀬戸口の背に廻された・・・。
いったいどれだけの時が流れただろう。決して長い時間ではなかったが、その刹
那はふたりにとって永遠にも等しく感じられた。
とそこに、突然扉が開き機関室を修理していた岩田が現れた。
「フフフフフフ、完璧ィ、完璧ィ――――!!!!これでエレガントに動き出す
こと請け合いです!!スバラシイイイィィィィ―――――――――!!!!天才
イワタマンと呼んでくださぁい!!!!!」
抱き合ったままその声に慌てて振り向いたふたりは、状況がまったくみえていな
い男の様子に絶句した。
羞恥のあまり未央は身をよじり急ぎ瀬戸口の腕から逃れる。
「―――ああ、助かったよ。ありがとう。今見に行く」
怒りを覚えながらもなんとか礼をいって岩田を追い出すと瀬戸口は未央を振り
返った。
しかしそこにはすでに愛しい女性の姿はなく、ただむなしく遠ざかる足音が響い
ていた―――。
こうして、ふたりの心が触れ合った時間は突然の闖入者によって終わったのだっ
た・・・。
act 3
炭素冷凍・・・?
何をいっているの、この男は?
ブータが暴れている。怒りに満ちた猫妖精の力を知る者は少ないが決して侮れる
ものではない。もし秘められた力が放出された場合、惑星全体が危険に曝される
恐れさえある。そのことをよくわかっているあの人は、両手を縛られて尚、これ
から自分を襲う運命よりもただそのことを気にかけ、ブータを必死に説得してい
た。おとなしくしていたため、監視の目が緩んでいたわたくしはそっとブータに
―――あの人に近づいた。
彼はわたくしを守れと、ただひとり残されるこの身を守れと忠実な友に語りかけ
ていた。
・・・・なぜ、そんなことをいうの?
わたくしは、貴方に、傍にいて欲しいのに。
ただ、貴方にだけ、傍にいて欲しい。守って欲しいわけではないのです。わたく
しは・・・・。
ようやくブータを落ち着かせると、岩田はブータを抱き上げ、あの人は傍らにい
たわたくしを見つめた。
言葉は、いらなかった。互いが求めているものがなんなのか、瞬時に理解できた
から。
あなたが、ほしい。
―――ただ心を重ねるように、キスを交わした。
でもそれはすぐに打ち切られる・・・。乱暴に手をひかれ彼が冷凍装置へと連れて
行かれた。けれどもその間もわたくしたちは決して視線を外すことがなかった。
できなかった。
ああ、わたくしたちははじめて見つめ合ったような気がする。
あの人の瞳がこれほど静かな色をたたえていたなんて。
今、ここに至って想いを告げる、わたくしの弱さを許してください・・・。
「愛しています・・・!」
彼は、静かなまなざしのまま
「・・・知ってたよ」
ただひとこと、それは許しの言葉だったのかもしれない。
けれども。その言葉がどんなに嬉しくとも、この瞬間がどんなにつらくても、わ
たくしは泣くことはできなかった。敵の前だからではない。王女としての誇りす
ら、いまのわたくしにはどうでもよかった。ただ、あの方を見つめていたかっ
た。涙で曇らせたくはない、ただそれだけ。
その想いだけで食い入るように見つめ続けた。
ゆっくりと沈みゆくあの人は最後に、わたくしをいたわるように、小さく笑っ
た。
直後噴出し彼を包んだ白い冷気に耐え切れず目を逸らす。
煙が消えたとき、そこから現われたのはまるでブロンズ像のような―――――変
り果てた、あの人の姿。
そのあまりの酷さに息がつまる。
ただ、立ち尽くすことしかできないこの身が、口惜しい・・・!
……けれど、もう二度と目をそらしはしない。
わたくしは誓いましょう。
いつか、いつかかならず、あなたをこの手に取り戻します――――。
to be continue ・・・・
のわ〜!!なぎさんから頂いてしまったスターウォーズ瀬戸壬生!
ソロとレイア姫は、変換しなくても大好きだったのですが、これほど瀬戸壬生チックとは!
生真面目な壬生屋と遊び人な瀬戸口の描写がさすがですね!
反発しあってても結局心の底に愛が〜!
なぎさん、ありがとうございました!