探し物は何ですか?
北川 潤は気が付くと、闇の中を独り歩いていた。
辺りを埋め尽くす闇は何処までも広がるようにも、また逆に、限りなく窮屈なようにも思えた。
思えば、どうしてオレはこんなところを歩いているのだろう。立ち止まりながら、おぼろげになっている記憶を探ろうと、北川は手で顔を覆うような仕草をした。
そういえば、何かを探していたような気がする。
もやのように浮かんできた思いは道しるべのように、北川はそれに導かれるように再び歩き出した。
何時の間にか、辺りの闇は晴れて明るいところに出ていた。
周囲には多くの人たちが歩き、立ち止まり、存在している。
ここはどこだったか……知っているはずだ。
そうだ、ここは商店街じゃないか。
北川は心の中でそう呟きながら、辺りを再び見回した。
そこは、自分の住んでいる街の商店街。
だが、何故そんなことを忘れていたのか、それすらも疑問をもたずに北川はひたすら歩いていた。
と、その人ごみの中から、1人の少女が北川の向かって歩いてきた。
頭に軽い頭痛のようなものを覚えながら、その人物が誰であるかすぐに頭には出てこなかった。
「北川君」
そう呼ばれて、初めて気が付いたように北川はその名前を思い出した。
「美坂……」
「こんなところで、何をしてるの?」
その少女は、美坂 香里という名前だったはずだ。
北川は、何かを考えるような仕草をとりながら、熱に浮かされたような感覚を覚えていた。
北川は、それでも何か答えようとしたが、何故か言葉が出てこなかった。いや、出てこないのではない。
まるで夢の中のように、何故か口を動かしても言葉が声として出なかった。
彼女の方もそのまま口を閉じている。その沈黙が、北川に辺りの情報が否応にも流れ込まさせた。
辺りの人間は、まるでここに北川たちがいることを忘れているかのように、変わらず流動を続けている。
一定の間隔を保ちながら揺れ動く人の波。
あまりにそれが規則正しく動くので、北川の目にははそれが機械仕掛けの人形達のように映っていた。
「何か、探し物でもしてるのかしら?」
その言葉がきっかけだったように北川も口を動かす。
今度は、ちゃんと声になる。何故か、そう確信めいたことを感じながら。
「ああ、そう。探しているんだ」
何を? と思ったが、それはさして気にならなかった。
ともかく、オレは探し物をしているのだと、まるで、神の訓示のようにリフレインするその言葉に北川は何の疑問を持っていなかった。
「そう。じゃあ、一緒に探す?」
「ああ」
北川は自然にそう答えると、頷いて再び歩き出した。
どれくらい歩いただろうか。
さっきから、商店街の同じ景色を何度も繰り返しているような気がする。
そも、自分の探し物はここにあるのか?
僅かにそんな疑問を感じたことがあるが、その都度意識に何かが働きかけられるような感覚に襲われ、まるで霧のように、その考えは霧散してしまうのであった。
だが、どこかおぼろげな北川の意識は、それを素直に受け入れ、抵抗することもなかった。
「そう言えば、北川君。何を探しているのかしら?」
唐突に、隣を歩く香里がそう言って来た。
不意に北川は勝手に口が動いたかのように、こう答えていた。
「あれ? 確か、話さなかったっけ?」
「話してないわよ。だいたい、北川君は自分のこと、話してくれないし」
その言葉にちくりとした痛みを感じながら、北川は訝しがった。
話していない? そうだっただろうか。
思い返してみる。
いや、そもそも、この少女は一体誰だ? 美坂 香里とは誰だ?
間違いのない違和感が、北川の体を包もうとしていたその時だった。
「母さん、アレ買ってよ!」
そんな声が聞こえてくる。
思わず、その声がする方を見てしまう。
そこには、7、8歳くらいの少年とその母親らしき人がいた。
その顔を見ようと思ったが、霧が掛かっているように何故か見えない。
少年は近くの小物やを指差しながら、熱心に欲しい、欲しいと言っている。
あんな小さいのに、アクセサリに興味があるのだろうかと、北川は思ったがきっと幼少の頃によくありがちな、何故か分からないが欲しいという衝動に駆られているのだろうなと結論付けた。
確か、自分にもそんな記憶があるような気もする。北川は何とはなしにそう思いながら、しばらくはその様子に見入っていた。
母親は困ったような表情をしているが、座って少年の背の高さまで顔をもっていくと、何かボソッと告げたようだった。口が動いているのが見える。
少年はちょっと難しい表情をしていたが、やがて「約束だからな!」とそう言って、母親とともに雑踏の中に消えていった。
「なあ、美坂。あれなんだったんだろうな?」
と、さっきまで彼女がいた場所を振り返る。
「あれ?」
何時の間にか、そこから香里は消えていた。
何処に行ったんだろうかと北川は訝しがったが、やがて意識が溶け去るような感覚を覚え、視界が白くなっていくことに気が付いた。
何時の間にか、辺りは夕暮れに染まっていた。
周りには丈の長い草が一面に生え渡っている。
北川は、気づいたように辺りを見回しながら、何か忘れているようなそんな気を感じていた。
「そうだ、探さなくちゃ」
誰ともなく、いや、自分に聞かせるように勝手に口から飛び出したその言葉は、北川に安心感と不安感のどちらをももたらした。
ふと、誰かの視線を感じた。
振り向いてみる。
「よお」
その男は、草と草の間からやけに軽そうに手を挙げるとそう言って来た。
だが、北川の方もさしたる疑問を持たずに、ああ、と返すだけだった。
「それじゃあ、行くか」
その男は、いきなりそう言うと北川の下に近寄ってきた。
「そうだな」
北川も当然と言うように、そう答える。
ふと、風が吹いた。
その風は辺りの草を凪いでいたが、どうしてかその風に涼しさは感じなかった。
ふと、疑問が押し寄せる。
風を全く感じないと言うのはどういうことだろうか?
いや、それ以前に何かがおかしいような気がする。だが何がおかしいのか、もやが掛かった意識では判別できない。
隣の男――名前は、何だったか……確か、相沢 祐一だった気がする――に聞いてみる。
「なあ、何か変じゃないか?」
それに対して、その男――祐一は、おどけたような仕草を見せた。
「そりゃあ、変さ」
「何で?」
北川の疑問に対して、祐一はそれ以上答えようとはしなかった。もうすでに、北川の方は見ていなかった。
視線を遠くに泳がせながら、何かを探しているように見える。
唐突に、祐一が口を開いた。
「そうだ、アレ見てみろよ。お前の探し物が見つかるかもしれないぜ?」
「あれ? お前、オレの探し物知っていたのか?」
「いや、知らない。少なくとも、”相沢 祐一”は知らないだろうさ」
何をいっているのだろうかと、そう疑問に北川は思ったが、それを聞く前に祐一の指し示す方向から声が聞こえてきた。
その瞬間、まるで映画の映像切替のようにその光景が映る。
現れたのはまたあの少年であった。やはり、顔にはもやが掛かっててよく見えないが、前よりははっきりしているような感じを受けた。
そう言えば、あの顔はどこかで見た事があるような気がする。
北川が呆けたようにそう考えていると、少年の傍に1人の女性が何時の間にか立っていた。
確か、彼女は少年の母親だった気がする。その顔も霞んでいてよくは分からないのだが。
「探したわよ。もう、こんな時間まで遊んでて……」
声が聞こえる。母親の声だろう。何故か、酷く懐かしい気がした。
少年は、そんな様子の母親に不服そうな表情を見せると、拗ねたように立ち上がる。
「別にいいだろ? ほんとは、まだ遊び足りないんだ」
小憎らしげな台詞をはきながら、少年は再び座りだして辺りの草で何やら遊び始めた。
「お友達ももう帰っちゃったでしょ?」
「あいつらがガキなんだ。オレは、あいつ等みたいに暗くなったら家に帰るなんていやだ」
その台詞こそが子供である証拠に少年が気づくはずもなく、そう偉そうに語って見せる少年。
「久しぶりに、姫里たちが遊びに来ているのに……」
「冗談じゃない。何で、妹と遊ばなくちゃならないんだよ」
むくれたように、口を膨らませる少年。それが、明らかに強がっているような印象を受けたのは否めなかったが。
やれやれとばかりに母親は明らかに嘆息して見せた。
「まったく、そんなこと言ってると、あなたが欲しがってたものが買えなくなっちゃうかもしれないわよ?」
ふふん、とばかりに母親がそう言ってみせる。
途端、少年は驚いたような表情を見せると母親にしがみついた。
「ええっそんなあ! ずるい、一ヶ月こずかい我慢したら買ってくれるっていったのに!?」
「あら、そうだったかしら?」
頬に手を当てたままにっこりと微笑む母親。
少年は、降参したかのようにがっくりとうな垂れると、「分かったよ、帰るから」とそう言った。
「そう偉い子ね。じゃあ、来週、楽しみにしててね」
来週楽しみにしててね、か。
北川は、その台詞を聞きながら、懐かしい気分を感じていた。
そう言えば、あの時はその来週が来るのをずっと心待ちにしていたっけか。
北川がそう考えるのと、意識が混濁していくのは、ほぼ同時だった。
どこか懐かしい雰囲気の感じる場所ではあった。またか、そう言う心持ちになりながら北川は辺りを見回した。
今度は何処かの家の一室のようであった。
見た目から判断するに、恐らくはリビングルームだろう。
「やっと来たね。北川君」
いつの間にいたのだろうか、目の前には1人の少女が立っていた。
また、記憶におぼろげな雲がかかったようになかなかその名前を思い出せない。
「そうだ、水瀬さんだ」
確認するように、相手に向かってそんなことを言う北川。
「こんにちは、北川君」
だが、にっこりと微笑を浮かべながら、目の前の少女――水瀬 名雪は気にすることもなくそう言ってきた。
「ああ……」
ふと、違和感を覚えた。
いや、今までも何度も違和感は覚えていた。
ただ、違ったのは今までは違和感を覚えても、夢の中のようにその思考は霧のように霧散してしまうのだが、今回はそれがなかった。
相変わらず、記憶が混濁しているのではあるが、違和感をはっきりとした違和感として感じられる。
だがそもそも、前までは記憶が混濁していることすら認識できなかったのだ。
目の前のこの少女なら、何か知っているのだろうか。
「あの、水瀬さん……ここは、何なんだ?」
名雪は答えない。黙ったまま、こちらを見ている。柔らかい視線を向けて、彼女は一歩進み出る。
その表情は、優しいような暖かいような、まるで北川の想像する名雪像そのままのようで、むしろ北川には変に感じた。
「ここには、北川君の探し物があるの」
「そうなのか? いや、そもそもオレは何を探しているんだ?」
間抜けな質問だとは思わなかった。
きっと、この質問こそが北川にとっての一番の違和感なのだから。
「それは、分からないよ。北川君、わたしたちに大切なこと話してくれないから」
たしか、前にであった二人にも似たようなことをいわれたような気がする。
一体どういうことなのだろうか、分からない。
大切なことを彼女達に話していない。恐らく、彼女らは北川の身近な人間なのだろうが、混濁する意識と記憶がそれすらも思い出させてくれないのだから、彼はどう答えていいものか迷った。
「どういうことだか分からない、でも、水瀬さん、君は知っているんだろう?」
たっぷり、時間をかけて紡ぎだした答えは質問を質問で返すようなものだった。
名雪は苦笑いのようなものを浮かべながら、それを聞いている。
まるで小ばかにするようにその手を正面で遊ばせながら、名雪は口を動かした。
「わたしは、知っているよ。でも、きっと”水瀬 名雪”は知らない。同じく、”祐一”も”香里”もね」
ますます分からない。
一体、何をいっているのだ。名雪といい、前の二人といい。
「北川君は、何も話さないよね。他の人が辛い時には相談には乗ってくれるけど、自分が辛くても誰にも何も話そうとしない」
「何を……」
”言っているんだ”
という部分までは、言葉にならなかった。
彼女の言っていることが、北川に突き刺さるような痛みを感じさせていた。
「でも、それは悲しいことだよ? もっと、誰かを頼ってみてもいいと思うな」
そう……なのだろうか? 考えたこともなかった。そんなことは。
と、部屋の外から、足音が聞こえてくる。
「あ、来たみたい。北川君の探し物」
思わず扉の方を振り返る。
そこにいたのはやはりあの少年だった。
まずいと北川は思ったが、少年は北川の存在に気づいていないようだった。
少年のすぐ目の前に北川がいるのにも拘らず、少年はただ普通に佇んでいる。
ただ、どうしてだろうか。少年は、どうも落ち着きがないように部屋の中を右往左往している。
「ただいま」どこからかそんな声が聞こえてくる。
その声には聞き覚えがあった。少年の母親の声だ。
「おかえり!」
少年が、大きな声でそれに反応する。
ゆっくりと部屋に現れた母親に、飛びつくような勢いで少年は向かうと
「買ってきた!?」
興奮したようにそう言った。
前に見たときの小生意気さは微塵も感じさせず、少年は興奮したような真っ直ぐな感情を見せている。
母親は膝を下ろすながらにっこりと微笑むと、鞄の中から”それ”を取り出して少年に渡す。
銀色のネックレス――北川は愕然とした。
「うわあ!」
少年は心から感謝するように、ネックレスを掲げたり顔に近づけたりしながら、まじまじと眺めている。
母親の方も、愛しげにそんな息子の様子を眺めていた。
北川の中で、その光景が何度もフラッシュバックする。いや、実際に目の前の光景が何度も繰り返されていたのかもしれない。
母親が少年に銀色のネックレスを渡す、その光景が。
「よかったわね」
よかったわね、その言葉が脳内に何度も響き渡った。その瞬間、戦慄にも似た何かが北川の全身を駆け巡る。
「駄目だ!」
思わず叫んだ。
だが、二人は気づかない。少年の母親は気づかない。
それ以上、話してはいけない。その先を、言っては駄目だ!
――それじゃあ、母さんはちょっと用事があるからまた出かけるから
その台詞を言っては駄目だ!
「それじゃあ、母さんはちょっと用事があるからまた出かけるから」
「うん」
「ちゃんと留守番してるのよ?」
今度は、それこそ懇願するように叫ぶ。
「行っては駄目だ!」
叫ぶ。母親に。
「彼女を引きとめろ!」
叫ぶ。少年に向かって。
だが、北川の叫びも空しく、その叫びはまさに空に溶け消えるかのように二人には届かなかった。
やがて、ゆっくりと立ち上がる母親。その口元には笑み、その目は包み込むような温かさがあった。
「最近は、素直になったように見えるけど、やっぱりあなたは今でもどこか頑なな所があるみたいね」
北川は、固まったように体が動かなくなる。
「そんな性格だから難しいかもしれないけど、それでも、人に頼るのも一つの強さなのよ?」
それは、少年に向けていったのものではなかった。
「辛いことがあったとき、人は1人ではいられなくなる。あなたの大切な人の1人はもういなくなってしまったけれど……」
その時、その母親の視線は間違いなく少年の方ではなく、北川の方を向いていた。
その瞳は、北川のよく知るものだった。忘れはしない、決して忘れたことないあの瞳。
「あなたにはまだ、大切な人が、支えてくれる人が残っているでしょう? それを忘れないで」
叫びたい。でも、口が動かない。
引き止めたい。でも、体が動かない。
何時の間にか、視界は涙でにじんでいた。
「それじゃあ、母さん行ってくるから――潤」
「行かないで、母さん!」
がばっと跳ね起きるように、北川は飛び起きた。
「あ?」
気の抜けた声を出しながら、北川は訝しがった。
ここはどこだ?
とりあえず、周囲の状況を確認してみる。
北川がいるのはベッドの上だった。白いシーツの掛かった清潔なベッド。
そのベッドの周りは白いカーテンで覆われており、そのカーテンには『使ったシーツはちゃんとたたみましょう』と注意書きが張られている。
徐々に記憶が戻ってくる。
「ここは……保健室?」
そう。そこは、北川の通う学校の保健室であった。
まだ、ぼんやりとする頭で僅かに頭に残るもやは、今まで何かの夢を見ていたのだろうと思わせてくれたが、それが何の夢だったか思い出せない。
確か、何かを探していたと言う部分は、おぼろげに思い出せるのだが。
とは言え、どんな夢を見ていたのかは、想像できる。
今日は、母の命日だ。つまりは、そんな夢を見たのだ。懐かしい、母の、夢。
頬に僅かに残る湿っぽい何かを感じながら、北川は服の中に隠れる銀細工のネックレスを握っていた。
ふと、北川は今更気づいたように考える。
何故こんな所に自分がいるのだろうか。ここに来る羽目になった前後のことが思い出せない。
北川がそれを思い出そうと、頭を捻っているとガラガラと保健室の扉が開く音が聞こえてくる。
「北川君、大丈夫かなあ?」
「大丈夫だろ。アイツがこのくらいでどうにかなる訳ねえって」
「二人とも静かにしなさいよ。ここ保健室よ」
それと同時に、そう言った騒がしい声も。
何とはなしに、こちらから声をかけるのは気まずく感じた北川は、とりあえず、向こうがこちらを探し当ててくれるまで黙っていることにした。
「ここかな?」
「多分」
「北川君、カーテン開けるわよ?」
サアッと言う音ともに、カーテンが開かれる。
そこにいたのは、予想するまでもない、いつものメンバーだった。祐一、名雪、香里の3人。
「お? 起きてたか、北川」
気軽そうに手を上げながら、そう言ってくる祐一に北川は何か頭に閃くものを感じた。
デジャビュ……ではないが、はっきりと心に突っかかる何かに北川は思わず眉をひそめた。
と、祐一の動きが止まる。
「ん? どうしたよ」
「ちょっと、祐一。北川君、まだ本調子じゃないんだから」
隣では名雪が、祐一を戒めている。
「あ、ああ。いや、何でもない」
「見たところ、もう、何ともなさそうだけど……無理はしない方がいいわよ? 北川君」
そういえば、と北川は不意に思い出した。
「そういえば、何でオレはここにいるんだ?」
「覚えてないのかよ。お前、いきなり熱出して倒れたんだぜ?」
「倒れた……オレが?」
「そうだよ、北川君。いきなりだもん。びっくりしちゃったよ」
「そうか……迷惑かけちゃったな」
そんな様子の北川に、祐一と香里は嘆息しながらやれやれと首を振った。
「そんなに気にしなくてもいいわよ。北川君はいつもそうなんだから」
「北川。お前もうちっと、俺たちに頼ってもいいじゃねえか?」
祐一の方は、照れたようにそっぽを向いたままではあったが。
続けるように、名雪も言ってくる。
「そうだよ。辛い時は、もっとわたし達に頼ってもいいんだよ?」
その言葉は、どこかで聞いたような気がする。
それらの言葉に、言いようの無い気持ちがこみ上げてきて北川は戸惑った。
――あなたにはまだ、大切な人が、支えてくれる人が残っているでしょう? それを忘れないで
刹那、懐かしいような切ないような、そんな想いと供に頭にその台詞が浮かび上がってきた。
何処で聞いたのだろうか? だが、その言葉は酷く北川の心を揺るがした。
「なあ、みんな」
声をかける。
(そうだな。ちょっとは、頼ってもいいかもな)
振り返る3人。
「今日、みんなにはつまらないかもしれないけど、付き合ってもらいたい所があるんだ」
3人は、一瞬、互いに顔を見合わせていたが、やがて北川をしっかり見ながら頷いた。
やっと、見つけた。
北川の心の中で、そんな声が響く。
ネックレスを握りながら、北川は頷いた。
きっと、夢の中で自分はこれを探していた。夢の内容は覚えていないけれど、北川にはその確信があった。
昔から、そして、今もずっとずっと探していたのかもしれない。
けれど、それはすぐ傍にある。気がつかなかっただけだ。彼女は、きっとそれを教えてくれたに違いない。
感謝を。夢の中でそれを教えてくれた、あの人に。
FIN
あとがき:
おう。何だか、よく訳のわからんものを書いてしまいました(ぉ
最近、やっと自分の中でデフォルトの北川像が出来てきたのですが、早速これかよ(汗)
とりあえず、「不思議な感じがする、でも、ほんのりホットな物語」って言うものを書こうとしたのですが。
自分はともかく、他の人が見たらどう思うんだろうなあと考えると、ちと怖いです。
でも、これは楽に書けたので、自分的には結構好きだったりするのですが。
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